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その9 「ねぇねぇ、お空って誰の物なの?」 「鳥さんのものだよ」 「じゃぁ、海は?」 「お魚さんのものだよ」 「ふぅん。じゃぁさ、この世界って、誰のものなの?」 「それはね……」

 まおうの さけびが こだまする!

「――中学生かってのッ!」

「……え、なに、魔王。ちょっと何言ってるか意味わかんないんだけど、怖ッ……」

「いや、すまん勇者よ。余にも、まったく、よくわからん」


「あ、そうだ、ちょっと、よく見せてみ?」

「は? え、近いッ、いやいや近いって、貴様なにをッ?」

 ゆうしゃは まおうを ガンみした!

 ……えっ、ちょ、ヤダ、なに、勇者のヤツ、なんで余の髪とか掻き上げてるのッ! だ、誰にも触られたこと無いのに……、ああ! そこ、やめッ! つ、角は敏感なのに……っ!

 ――ややあって。

「うん! イケる!」

「なにィッ?」

「まちがいない。魔王――、お前はイケメンだ!」

「はぁぁあッ?」

「あの姫さん、ぼくにまぢ惚れなんだけど、それはたぶん単に命の恩人としての延長だ。好きを勘違いしているのさ。あの年頃だからね。それに結構メンクイでさ」

「はぁ……」そうですか、としか言いようがない魔王だった。

「そこで魔王。お前をぼくの親友として紹介しようじゃないか」

「ええーッ!」

 まおうは ビックリだ!

「ちょ、まっ、待て、待つのだ勇者よ! だが、しかし、余は魔族だ。貴様らは人間だ。それは許されることではない」

「それがどうした?」 

「ええええーッ!」

 まおうは ふたたび ビックリだ!!

「さっき魔王が自分で言ってただろ、そんなことはどうでもいい、って」

「いや、あれは、その、なんというか、こう……、勢いで言ってしまっただけであって――」

「ばかッ!」

 ――ぱんッと、乾いた音が響いた!

「な……ッ」

 勇者の平手打ちが魔王の頬に放たれたのだった。

 まおうは おもった!

 ……え、え、なんで? なんで、余は今、殴られたッ? え、なに、なんなの、コレ……ッ?

「最初から失敗を恐れてどうする!」

「ええー……ッ」

「フラれるかもしれないってッ? ばかやろう! そんなの自分が傷つくのが恐いだけなんだろうッ?」

「あ、いや、あの、あのね、勇者よ、ちょっと落ち着かんか……?」

「いいか! 高鳴る胸の内が恐怖だったとしても、全身を奮い立たせるのは、いつだって勇気なんだ!」

「貴様、単にそれが言いたかっただけなんじゃ……?」しかも、ついさっき思いついたようなフレーズ使い回しているだけなのでは……?

「たとえ! もしもフラれたってなぁ、そこであきらめんなよ! そんときゃ自分を磨いて出直せばいい! それだけのことだろっ!」

「あのー……、ゆ、勇者よ……余の声、聞こえてる……?」

「もう、止めるんだ。こんな、こんな争い、悲しいだけだッ!」

 バンっと、床に拳を殴りつけた勇者。指に血が滲んでも固く握られたままのそれを見て、魔王は感じていた。

「あ、わかった。貴様、ひとりで勝手に熱くなって周りをドン引きさせるタイプだろ」

 ――だがしかし、魔王も同類だということに誰も気づいていない!

「ぼくらが争ったって、誰の何の得にもなりゃしない。人間だろうと魔族だろうと関係ないんだ。そんなことよりも、自分の気持ちにもっと素直になって――」

 ゆうしゃの こうげき!


「惚れたコの為に生きてみろよッ!」


 ゆうしゃの さけびが こだまするッ!

「ああああ……ッ!」

 まおうに せいしんてき

 そして ちめいてき 大大大ダメージ!

「ぐふ……ッ!」

 まおうは たおされた!



 ――そして、

 ゆうしゃは いった。

「だいじょうぶさ、魔王。ぼくらで証明してみせよう。ぼくと世界を、はんぶんこ、だ」 

「余が、貴様と、世界を、はんぶんこ、だと……?」

「ああ。そうだよ、魔王。先にお前が言ってくれたんじゃないか、ぼくらで世界をはんぶんこしようって」

 まおうは おもった!

 ……余と組めば世界の半分をやろう、余は、確かにそう言った。それは魔族の支配、余の片腕となる気はないか? と、そういう意味であったのだが……、

「うん。あのね、魔物さんが暴れなくても暮らせる為、ヒトと魔族が住める世界の為に、そうだな~ぁ、まずは一緒にお城へ行こっか」

 ……コイツは、この勇者は……、その先の未来を見ていたのか。魔族の王である余と、人類の勇者が、世界を半分ずつにするということは、文字通りでなく、人と魔族の共存だ。

 ああ!

 それは進化だ。

 共に新しい世界を築こうというのか!


「さぁ、行こう。……あ、もっかい迷宮を戻るのはもうイヤだよ? 松明も無いしMPもあまり無いからね、魔王の呪文で帰ろうよ」


 まおうは おもっていた。

 ……コイツは、まぎれもなく、勇者だ。

 ゆうきあるもの、なのだな……。


 差し出された手を、しっかりと握りしめ、立ち上がった……。



 第1章 完。

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