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その8「赤いリンゴ半分にしたら、ぼくがもらうのは、いびつなほうでいいよ。それでいいだろう? あ、でも、もう半分もいびつなんじゃね?」 「それ、ス〇〇〇オさんの歌詞っぽいから、言うの止めぇッ!」

 いつからだろう、ずっとずっと、考えていたんだけどさ。

 この世界に悪が存在するなら、それを防ぐのが正義なのか。

 この世界に悪が存在しなくなれば、もう正義は必要ないのか。

 この世界に悪が存在するから、正義は正義でいられるのか……。



  *



 まおうは おもった!


 ……ああああッ、奴めぇ、あの赤鬼娘ぇ……ッ! なんっっって、最悪のタイミングなんだッ、なにもかも台無しじゃないか。……だが、そんなことよりも……ッ! ここでうろたえてはならん。この忌々しい勇者に、魔王である余が動揺しただなど、悟られないように振る舞わなければ……、なんとか誤魔化さねばッ!


「ふぅ……。余としたことが、少々悪ふざけが過ぎてしまったようだなぁ」

「……」

 ゆうしゃは ようすを みている!

「命拾いしたなぁ、勇者よ。貴様とて、まだ死にたくはあるまい?」

「…………」

 しかし!

 ゆうしゃは ようすを みている!

「くくくッ、安心せい。たかが脆弱な人間如きに、まさか本当に魔王様であるこの余が本気を見せるワケないだろう?」

「………………」

 やはり!

 ゆうしゃは ようすを みている!

「…………………………う……ッ」

 まおうは おもった!

 ……ああああッ! 見てるッ! 勇者がこっちを変な目で、ただただ、ジー……っと見つめてるぅ……ッ! こうなったのも全部、アイツのせいだ! あの赤鬼娘がいけないんだ! いっつもそうだよ、あの娘! ちょ~とばかり容姿が良いからって部下共にチヤホヤされて調子に乗るんだよ、アイツぁ! んで、大事な時にミスすんの! 自分の任務を忘れるんじゃないよ、まったく! 絶対、ずぇ~ったい! ただでは済まさんッ! もう減給だ! いや、格下げだ! 地方に、それも初期村とか過疎地に飛ばしてやるぅぅッ!

 ……ああ、勇者よッ! よせッ、やめろぉッ、そんな可哀想なものを見るような目で余を見るなぁッ、やめてくれぇ……ッ! 

 と、

「あのさぁ、魔王」

 音もなく嘆息したのち、勇者は口を開いた。

「な……、なんだ、なんなのだ! 勇者よッ?」

「お前、カッコ悪いよ?」

「ぐはッぁ!」

 まおうに せいしんてき だいダメージ!

 吐血したかと思うほど激しく叫んで魔王はその場に崩れ落ちた。いや、実際、血ぃちょっと出ていたけど。

 そして勇者は静かに語りかけた。

「魔王、もう、やめようよ」

「な……っ! ゆ、勇者よ、いまさら、何を言うか……」

「ん? まぁそりゃ言いたいことは、たーっくさん、あるけど……、たとえば、『もはや誰にも余を止められぬッ!』って言って始めたくせに、おいおい、あっさり止まっちゃったよ! って感じとか」

「うぐぅ……ッ!」

「あんだけ盛り上げて身体大きくなりかけたのに、へぇ~戻れるんですね~(笑)、とか」

「わああああん……ッ!」

 やった!

 まおうは まぢ泣きだ!

「まぁ、これ以上、お前の傷を抉っても仕方がないことだし」

「うぅぅッ……もう、十分、抉られておるよぉッ…………うぅぅッ」

「とにかくさぁ、魔王。これ以上、不毛な争いをして、なんの意味があるのさ?」

「だが……だが、しかし、余は……ッ!」

 まおうは おもった!

 ……意味、だとぅ……ッ? それは……そもそも……余がこんな気持ちになったのは……、

「姫が好きなら、そう言えばいい」

「――ッ!」

「本気の気持ちなら、本人にちゃんと伝えるんだ。このまま何も言わないで後悔してもいいのか? ひとりで会うのが恐いなら、ぼくも付いて行ってやる」

「ゆ、勇者よ、貴様、なんて良い奴…………、って、いやいやいやいやッ!」

「ほらほらさぁさぁ、告っちゃえコクっちゃえよ~、魔王! ほら、女子って案外、なんつーの、こう――、押しに弱いって言うじゃん?」

「中学生かってのッ!」

 たしかに、姫は14歳だ!


 つづく!

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