01
高2になった。未だぼくは、なに一つ才能と呼べるものがない。
父は平凡なサラリーマン。母は専業主婦になり切れないパートターイマー。
生まれ持った遺伝子が平凡なのだろう。いつまでたっても才能は開花しない。ぼくには花や実を宿す能力が欠落しているのかもしれない。
容姿も普通。勉強も普通。運動も普通。普通と言う言葉でぼくの体はできている。
でもぼくは正直あまり気にとめていない。高校のクラスメイトの大半がぼくと変わらないのだから。
ぼくには親友と呼べる者が未だかつて一人もいない。
学校では適当に挨拶をして、適当におしゃべりをして、いつの間にか「じぁ」で終わる。
「またね」とは一度も付け加えたことが無い。
ぼくは人間と言うものに興味がないのかもしれない。ふと、時々そう思う。
満開の桜並木の下で。
雲間から現れた太陽がまぶしかったとき。
日が落ちかけた、だれもいない公園のブランコの上で。
大粒の雨つぶが激しく窓をたたくとき。
ぼくは思い出したかのようにそう思う。
保育園。小学校。中学校。幼なじみやクラスメイトの顔が思い出せない。無理やり思い出そうとすると途中まで浮かんでくるが、ピントのボケた写真のように消え去っていく。
だけと、道でばったり会えば、名前くらいわかるし顔もわかる。偶然に出会ってしまったのだから無視はできない。昔のできごとを話して笑うこともできる。そして、適当に時間を費やしたら「じぁ」で別れる。
「またね」とは一度も付け加えたことが無い。
もう一度、会いたいと思ったことがないからだ。
そんなぼくは、家でも学校でもできるだけ目立たないように、ひっそりと暮らしている。色のない静かで透明な世界。それが、ぼくにとってここちいい居場所だった。