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9・新造計画

 金剛型の老朽化に伴い後継の検討が行われたが、海軍の現有戦艦を転用できないという事で、扶桑型、伊勢型から取り外され保管されている36センチ砲を使用して新造するという決定は早い段階から決定されていた。


 しかし、問題はどのような船にするのかという問題だった。


 新たに建造するのは巡視船であり、海戦に参加することは稀という存在になるであろうと考えられていた。

 しかし、ソ連との対立が戦争へと発展すれば、真っ先にスターリングラード級と砲火を交えることも懸念されていた。


 また、いずれにしても大型となることは確実なため、普及が始まったヘリコプターの搭載も同時に検討されることとなった。

 コリアスタン情勢が沈静化して以降、常時戦艦クラスの大型艦船が日本海を哨戒する必要性は急速に失われ、非武装地域でプレゼンスを維持できるという意思表示としての存在となっていたので、そのうちの1隻が日本海を離れても問題となる訳ではなかった。そうなれば、ヘリを積んで救難や哨戒のために太平洋で行動することも可能になる。

 ヘリ搭載巡視船という費用の掛かる船を戦艦と抱き合わせで建造することで経費削減を狙う。海軍から分離し予算の制約が厳しくなった現実の前ではそれはまさに夢のような考え方でもあった。


 そうして計画されたのが、現役時代の扶桑型で計画された航空戦艦という改装案だった。

 扶桑型と違い、搭載するのが固定翼機ではなくヘリコプターという事でカタパルトを省く事が出来るのでより容易に建造可能と思われた。

 しかし、戦艦としての防御力が本当に必要なのかが問題視されることとなった。更に、速力をどうするかも大きな問題だった。


 金剛型は水雷戦隊と行動することを前提としていたので30ノットを必要とした。しかし、今次建造するのは艦隊の先鋒を務めるような任務を負っている訳ではない。確かに相対するスターリングラード級は33ノットを誇る高速艦だ。

 しかし、こちらも同じ速度を必要とするかというと、その限りではない。警備艦として就役している以上、その武装は最低限にまで削られており、仮に日本の領域に入り込んだとしても軍艦のようにミサイルや多層にわたる対空火器を備えておらず、装備しようにも定期と抜き打ちの相互査察が認められており、改造も容易ではないため、戦闘に至る事態となれば、航空攻撃によって撃沈することは容易という結論に至っていた。

 そのため、高速化は必要ないと結論付けられ、予算の制約もあって、主機はディーゼルとされ、速力も巡視船に見合ったものとされた。

 

 速力の見通しがつくと問題は装甲をどうするかという事になった。戦艦としての能力を維持するには相応の装甲を必要としたが、巡視船としての任務上は弾薬庫や砲塔周りの防御力さえあれば良いとされていた。予算の都合もあって、戦艦のように装甲を張り巡らすなどそもそも望めるものではなく、まずはヘリコプターを載せることを必須として話が進み、飛行甲板と格納庫の配置が重点的に検討され、36センチ砲を積む以上、爆風に配慮する必要もあった。

 

 そのため飛行甲板には三案が提示された。


 一つ目はディーゼル化で煙突が小型化し、排煙路の自由度が高い事から船体中央を飛行甲板としてブリッジ下部にエレベーターを設け、飛行甲板下を格納庫とする案。


 二つ目は扶桑型で計画されたのと同じように、艦後部を飛行甲板として3番砲塔より高い位置までかさ上げし、上部に飛行甲板、その下に格納庫とするもの。


 三つ目は最後尾を飛行甲板に、3,4番砲塔をかさ上げして4番砲塔下に格納庫を設ける案。


 まず、三つめは後方射界こそあるものの、飛行甲板が直接爆風にさらされ、重心位置も大幅に上昇してしまう事から落選していった。


 一と二は甲乙つけがたかった。一はブリッジを圧迫するが艦隊旗艦機能を持つ必要が無いため十分可能と見られ、二は後方射界が無いことが問題とされたが、搭載可能な機数に余裕があり、柔軟性が高いと評価された。


 この二案は模型による検討まで行われ、最終的に第二案が採用される運びとなった。やはり第一案は米国のアラスカ級の失敗が懸念されていたようだった。

 こうして新たな大型警備巡視船みずほ型が1972年から就役をはじめることとなった。

みずほ型は排水量3万t、全長252m、うち飛行甲板は43mに達し、その下には大型ヘリコプターが4機、中型ならば7機収容可能な格納庫が設けられていた。


 金剛型はこれでようやく解役となるが、解体されることなく海軍時代の容姿に復元され、各地で保存されることとなった。唯一、榛名だけは戦艦としての保存話が無く、警備艦の白い姿の状態で舞鶴において博物館として公開されている。日本において記念艦として保存されているのは日本海海戦の旗艦であった三笠以外では金剛型のみである。


  

 


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