7・日本海海戦
1953年7月20日、この日、金剛型戦艦4隻を警備隊へ移管し、正式に警備艦としいて編成が行われた。のちにこの日を記念して海の日が制定されるのだが、それははるか50年後の話である。
日本で金剛型の錬成が行われているころ、この種の組織では先輩にあたる米国沿岸警備隊との訓練を行うために、ガングート級3隻は米国へ渡っていた。
バルト海を抜けドーバー海峡を通る。往年のバルチック艦隊の航路だったが、船体を白く塗り、すでに戦時に転用されていた副砲類は再装備されることなく、いくつかの機銃や機関砲が並ぶだけの姿となっている事を英仏によって捉えられていた。日本側はその姿に初めて安堵した。この時金剛型も同様の改修が行われており、戦艦が完全装備で現れては分が悪かったのである。
ガングート級は半年にわたり米国での訓練を行い、ハワイ経由で日本へとやってきた。時に1954年5月27日の事であった。あれから49年目、艦隊は津軽海峡へと現れ、事前に陸奥湾への停泊、並びに日本側との交流を求めてきた。地元青森は難色を示したものの、政治的に受け入れ拒否も出来ず、しぶしぶ了承している。
陸奥湾に入った一行は地元青森県や海軍、海上警備隊、そしてマスコミを招待して歓迎会を開いたり記者会見を行ったりしている。その態度は「ソ連らしくない」と多くの人々が思ったのも無理からぬものだった。
二日に及んだ一連の行事が終わると30日には日本海へと向けて船出していったのだが、新聞やラジオが連日艦隊の動向を流していたおかげか未だ陸地から艦隊が見えるようなところで朝鮮海軍が待ち伏せし、襲撃してきたのであった。
最近公開された資料によると、当時、ソ連はこうなることを予測というよりこのような演出のためにわざわざ陸奥湾での行事を計画していたことが記されている。そうして、その思惑通りに現れた朝鮮海軍を粉砕し、日本を沸かせたのだった。すべてはマスコミを使った宣伝工作であった。
この時、急ごしらえの編成こそ終えていた金剛型だが、実際には解体待ちで運用には再整備を必要とする状態で、まず、整備に半年、4月にようやく錬成に入ったという段階だったので、ソ連艦隊による朝鮮海軍撃破は日本でも歓迎されるものだった。もちろん、ソ連はそこまで考えて演出と宣伝を行っていた訳だが・・・・
こうして6月にはグリッペンベルクへ向かう輸送船団の護衛が開始され、次第にコリアスタン全域へと治安部隊が鎮圧に乗り出すようになっていっていた。
10月にはステッセリンブルグまで進み、南部の大半が平定されている。
しかし、安堵するにはまだ早かった。朝鮮海軍を圧倒できるのはガングート級3隻と金剛型4隻の計7隻でしかない。仮装巡洋艦のような朝鮮海軍を捕捉するのは非常に厄介でなかなか実効性が上がるものではなかった。
特に、ソ連は輸送ルートの護衛が最優先であり、朝鮮海軍の撃滅までは手が回らず、日本は国内の親朝鮮勢力の摘発に追われ、効率的な摘発や撃沈が出来ていなかった。
結局、1954年も朝鮮海軍の跳梁は続いていた。
翌年、コリアスタンでは北部まで治安部隊が進み、中ソ国境に到達した。山間部や満州の朝鮮族居住地域は手つかずではあったが、ようやく一息つける状況が見えてきた8月、ソ連は本格的に朝鮮海軍の掃討に乗り出すこととなる。この頃日本でもようやく親朝鮮勢力の摘発が成果を見せたころであり、日ソは共同で掃討に乗り出すこととなる。
その手始めとして竹島奪還作戦が行われることとなった。この島は大韓帝国領であった時期に鬱陵島と称したが、日露戦争で日本が取得したのちに江戸時代の名称である竹島へと改名されている。ややこしい話だが、日韓の条約において竹島とされた島は今の松島の事である。
この島はちょうどソ連によるグリッペンベルクへの輸送路を襲撃するのに都合がよく、朝鮮海軍がよく利用していた。
そのため、日ソ共同での作戦が行われ、警備隊の上陸支援に比叡とヴォルコフが艦隊を組み、霧島とガングートが周辺警戒と船団の護衛に当たっていた。
作戦は三日で終了したもののザリーフ・ヴォストク(元山)を拠点としていた多くの朝鮮海軍が出撃してきて8月27日に大海戦が生起している。
この時、外周警戒を行っていた金剛、榛名、セヴァストーポリが船団を発見し迎撃を行い、一方的な勝利を収めたのが、俗に第二次日本海海戦と称されたりもする海戦である。
竹島奪還とザリーフ・ヴォストクからの船団壊滅で朝鮮海軍は組織的な行動能力の大半を失い、以後、日本海沿岸の解放や日ソ艦隊による掃討によって、12月にはほとんどの勢力を失い、翌年春にはソ連によってコリアスタン平定宣言が行われることとなった。
日ソがコリアスタンや日本海に集中している頃、満州でも動きがあった。遼東半島をめぐる争いは大朝鮮の敗北によってほぼ張一族の勢力圏となり、清朝再興を囁かれた米国の支援もあって満州国として1955年9月独立宣言を行っている。
よろしければブクマや評価、感想もお願いします。




