第90話 これが、私の究極魔法……。この魔法で、決着をつけてやるんだ!
「あぁーー!」
私は魔法を解き放った。これはブラフでも何でもない……。これが私の本気であり、みんなの恨みの結晶だ!
「な……!」
あの人が驚いている。それもそのはず。さっきまで魔法をためている素振りをしているときに、見せていたものとは違う魔法を出したのだ。実は、前に出していた魔法は、私の一人分の力で溜めていた拡散の魔法。逃げるための煙を出す魔法だった。でも、そのほか20人の力は、違う魔法に使わせていた。煙の魔法に紛れるようにね。
「この魔法は……なんですかネ!?」
あの人も知らない魔法。魔法名は、絶対領域。相手は私を触れることが出来なくて、私は相手に触れることが出来る魔法だ。この魔法、強そうに見えて弱点がある。それは、魔法の範囲であった。本来は一回の呪文で一つの物しか範囲がなく、使い方のわからない魔法だった。つまり、人間一人の場合は、それだけの威力だったっていうこと。でも、今の私は違う。20人分の力を身にまとったバケモノだ。だから、この技が広範囲で使える。そして、この魔法で、あの人とのバトルに蹴りを付ける!
「一体何をしたんですかネ!? こんなもの、見たことがないですネ!」
あの人は完全に動揺している。初見で見るものは、すべて怖く見える。それはどうしようもないことだ。この絶対領域の範囲がこの食堂全体に行ったところで、
「あぁーー!」
私の反撃を開始した。さっきまで使っていた突進攻撃をした。
「そうはさせませんですネ。」
あの人は、上に待機させていた弓矢の塊を私にぶつけようとした……がいうことを聞かなかった。
「どうして、あの弓矢が動かないんですかネ!?」
この食堂は、今私の絶対領域となっている。その状況で、食堂内に準備していたものを動かせるようにしておくと思った? するわけがないよね。
私は、そのままあの人にタックルをお見舞いした。
「うぉ!」
あの人を壁まで吹き飛ばして見せた。でも、さっきと同じようにあの人は立ち上がって見せた。
「うぅ……。」
今度こそ決まったと思ったのにな。さらにこの絶対領域を使える制限時間が少なくなってきている。早く蹴りを付けなければ。
「ははは……。」
あの人が急に笑い始めた。
「なるほど、ようやくわかりました。この範囲内にいるものは、すべてあなたに干渉されないのですネ。とんだ厄介な魔法を知っているものです。ぜひとも教えてもらいたいものですが……無理でしょうネ。」
そしてあの人はとある扉の前に行った。
「ただ、どんな魔法にも弱点が存在するのはご存知でしょうかネ。どんな最強レベルの魔法でも、どこかに抜け道が存在するんですネ。」
この魔法に弱点が!? そんなものは存在しないはず。この中で作られたものは私が制御できるというのに、どこに弱点が……。
「気づいていないようですネ。では、答えをお見せいたしましょうか。」
彼はドアの前から少し右にずれた。そして、さっき立っていた扉からは、大量の弓矢が飛んできた!
「うぅ!」
咄嗟の判断でよけたが、またしても体が大きい分、弓矢が何発も当たってしまった。でも、一体どうやって弓矢を作成し、私のほうに飛ばしたんだ?
「なぜ、この魔法の中で弓矢を出せないのは謎でしたが、この魔法の範囲外では普通に出せましたからネ。ちょうどいいところに、厨房というものがありましてネ……。扉の後ろで、待機させておいたのですネ。そしてあとは、あなたを当たる範囲までおびき出し、移動速度を範囲外で指定するだけですからネ。ここの中で作っていない以上、あなたは手出しすることが出来なかったってことですネ。」
「うぅ……。」
この絶対領域が永遠に打てるものだったら、相当強かったかもしれない。でも、20人の私でも限界があった。その限界がこの食堂の部屋だった。だから厨房のほうには、一切魔法範囲が及んでいない。それをうまくついた、いい作戦だった。
「その仕組みがわかってしまえば、色々できますからネ。」
あの人の弓矢の動きが変化し始めた。直線ではなく曲線に移動してきた。曲がりながら弓矢が移動している。
「さぁ、あなたはどう私に立ち向かうんですかネ!?」
このままだと、弓矢に押し切られる。さらに、この絶対領域を出せる時間ももう限られてきた。ここはどうするべきなのか……。この絶対領域の魔法が撃てる時間だけで、あの人を始末する方法を……。
「(一瞬焦りましたネ。)」
突進攻撃を食らった後、彼はそう思った。自分が用意していた弓矢の塊が動かなくなっていたことに。
「(完全に予定外でしたネ。このままでは弓矢が撃てない。さて、どうしたものか……。)」
彼は、周りを見渡した。すると、この魔法には範囲が存在することが分かった。
「(範囲設定系の魔法ですネ……。となると、この食堂全体にかけていますネ。だとすれば……。)」
彼は、厨房に弓矢を生成した。すると、さっきまで弓矢作成できなかった感覚から、できた感覚が生まれた。
「(できたみたいですネ。完全に積んだかと思いましたが、これで何とかなりそうですネ。)」
こういった魔法には、必ずとも制限時間が存在する。それさえしのぎ切れば、勝ったも同然である。
「(これ以上持久戦には持ち込みたくありませんが、仕方ないですネ。やるしかないですネ。)」
彼は、扉の近くでこもる作戦を決行するのであった。
「隊長、あのバケモノが魔法を出しました!」
「煙系の魔法だと思ていたが……。」
俺はあの魔法を見て、煙系の魔法だと思った。その魔法に酷似していたためである。でも、実際に出てきたのは……。
「あれは……、なんだ?」
「なんなんでしょうか。新しい魔法ですかね?」
「そんなバカな……。」
新しい魔法を作り出すには、凄い手間暇がかかるといわれているのに、あの少女が簡単に見いだせるわけがない。……が。
「そうだったな。あのバケモノは、20人分の命を持っているんだったな。人間視点で考えてしまった。」
そう、彼女はバケモノ。にんげんじゃあない。だから人間目線で考えてはいけないのだ。
「じゃあ新種の魔法ですかね?」
「まぁ、そうなるかもだが、何かの魔法を強化した感じだと思う。」
この魔法、どっかで見たことがあるような気がするのだが……。
「隊長、バケモノがあの人に向かって突進しました。クリーンヒットです。」
「なんだと! 上に用意していた、あの弓矢は!?」
「一切起動していないみたいです。」
となると、事前に用意していた弓矢は、一切使えないという魔法か……。となると……。
「わかったぞ、この魔法が。」
「流石、先輩ですね。」
「隊長、この魔法は?」
二人がそう言ってきたから、俺は同道度答えた。
「この魔法は、絶対領域だ。」
「「絶対領域?」」
二人の頭にはてなマークが浮かんだ。
「お前らはあんまり聞いたことのない魔法だろうが、この魔法の中にいる間は、発動者に技が当たらなくなる。そして、その中に生成されていたものは、すべて使えなくなる魔法だ。」
「なにそれ! すごく強そうじゃないですか!」
「そんなに強そうな魔法でしたら、みんな使っていそうなんですけど、全然聞きませんよね?」
「そうだ、実際のところ、この魔法の範囲はとても少なかった。でも、あのバケモノは20人分持っている。小さな魔法でも、みんなで撃てば強くなるのと同じ原理で、少ない範囲なら、みんなで作れば大きくなる、ということだろう。」
「あのバケモノ、凄いですね。」
「あれは、ほんとに元少女だったのでしょうか?」
「わからんが、これで、戦況が戻ったな。」
これで、戦況が半々か。次の行動で戦況が変わるな。
「さぁ、あのバケモノ。次は何をするかな。」
三人とも、この試合を楽しんでみていた。実際、危険な場面なのに……。




