第81話 見えている道がすべてとは限らない。生き抜くためには隠れることも重要だ。
「この分かれ道を、斜め右に行くと出口なんだけど……。」
「おかしいですね。3択しかないですね。」
確か、この通路は4択の分かれ道だったはずなのに、今見てると、3択であった。壁が壊された形跡もないし、足跡を見てみると3択でいう真ん中に行ってるため、多分だが、一回で正解ルートに行ったのだろう。
「たしか、この通路を4択の一番左の通路にいるんですよね?」
「そのはずだが……。」
もし、真ん中のルートが正解の斜め右であるならば、一番左というと、3択で言うと一番左の道になる。でも……。
「なんか引っかかるんだよな。」
「先輩、俺もそう思います。」
仲間と別れたとき、この通路に入って行った気がしない。もっと左に通路があった気がする。
「一応試してみるか。」
俺が壁をたたき始めた。
ゴンゴン!
「……ここはれっきとした壁だな。」
「その音は、完全に黒曜石ですね。」
俺は少しずらして、もう一回叩いてみる。
コンコン。
さっきとは違う音が出た。さっきより優しい音が。
「……この壁、怪しいな。」
「そうですね、その壁は黒曜石で、できてなさそうな音でしたね。」
俺は少し助走をつけるため、少し下がった。
「じゃあ行くぞ。」
「先輩、気を付けて。」
俺はさっき音が違った壁に向かって、タックルした。すると、壁が崩れ落ちていった。
「やっぱりビンゴだな。」
「そうですね。流石先輩ですね。」
仲間が待っているであろう道に二人は進んでいった。
「誰だ!?」
女性の声が聞こえてきた。
「俺だよ、俺。」
まるでオレオレ詐欺のセリフ……。を言った。
「この声は……隊長!?」
そう、目の前にいるポニテの女が、もうひとりのスパイ仲間であった。
「一体何が起こったのですか? さっきでっかい怪物みたいなのが通過していきましたが……。」
「……お前も見てしまったか。あのバケモノを。」
「もしかしてですけど……。」
「あぁ、そのもしかしてだ。あのバケモノこそが最後の犠牲者だ。」
「なんてことを……。」
ポニテの女は足を崩した。
「あの奴は何を企んでいるのでしょうか?」
彼女が聞いてきた。
「それは全くしもわからん。」
「全然わかんなかったですね。」
「隊長がわからないなら、きっと誰が見てもわからないと思います。」
彼女は立ち上がり、
「さて、ここからはどうしますか、隊長?」
そう切ってきた、……どうしようか?
「……とりあえず、ここからの脱出を第一優先で考えよう。任務のことについては一回忘れよう。」
「その方が安全ですからね。」
「そこまで、あの怪物は危険なのか?」
「あぁ、あの黒曜石の壁を瞬間にして破壊した奴だからな。さらに言うならばあのカプセルすらも破壊したからな。」
「なんですと!?」
彼女は動揺した。それはそうだろう。だって、あのカプセルが壊されるなんて、今までの歴史上、ありえなかったのだから。
「あのバケモノとの戦闘は何としてでも避けなければならない。もし戦闘にでもなればそれこそ人生の終わりだ。」
「「……そうですね。」」
二人とも真剣に聞いているようだった。
「そこで、今まで通りあのバケモノの足跡を追跡する。ある程度行って、わかる道まで戻ってこれたら、ここから脱出するという作戦……でどうだ?」
俺は二人に同意を求めた。
「特に問題はないです。」
「私も意義はないです。」
二人ともの承認は得た。
「じゃあ行こう……と言いたいところなんだけど、そういえば、人質はどうなったんだ?」
「あ、そのこと忘れていましたね。」
そう、僕ら二人が変装するために、こっちの研究員を2人ほど拉致させてもらった。もちろんながら、殺してなどいない。その世話係で彼女を置いて行ったのだが、その二人の姿が見つからないのだ。
「それがですね……。」
彼女がうつむいた。
「……そういうことか。」
「え、どういうことですか?」
「わからないやつだな。死んだんだろ?」
俺はそう答えた。きっと俺らの侵入がばれている時点で、そうなってる気はしたんだけどな。
「はい、その通りです。いきなりなんですけど、頭が爆発して、死んでいきました。見るも無様な姿でした。私は、このままではかわいそうだと思いまして、魔法によって土を生み出して、一応埋葬という形で、この通路の奥に埋めておきました。」
「……うん、いい判断だ。」
ちゃんと墓まで用意してるあたりがとてもいい。そうしてくれた方が死んだ人たちも嬉しいだろう。
「ありがとうございます、隊長。」
「あいつらは、俺らのせいでなくなってしまったんだ。その墓まで案内できるか? 一応謝っておきたいんだ。」
「わかりました、こっちです。」
3人は通路の奥に向かっていった。
「ここです。」
「……結構しっかりできているな。」
「私の得意魔法は土属性ですからね。」
「魔法の使い方によっては、ほんとに色々なものに行かせるんですね。」
「そうだ、お前もしっかり使い分けるんだぞ。」
「わかってますよ。」
後輩たちをほめたり注意したりした。こうして人間は育っていくものだからな。
「では……。」
3人は手を合わせた。
「この度は、俺らのスパイ活動のせいで犠牲になってしまったことを、とても申し訳なく思っている。もちろんながら、こんな言葉で許されることではないことはわかっている。だが、この実験の結末まで見届けたいと思う。それを本にまとめてここに置く。それで許してはくれないだろうか?」
俺はそう言った。すると、二人の研究員たちからの声が聞こえた気がした。
「奴を止めてくれ。奴を殺してくれ。」
そう聞こえた。
「俺たちで止めれる保証は、一切ない。だが、なるべくはそうしようと思う。」
「そうか、がんばってくれ。」
そう聞こえた気がした。
「先輩……。」
「隊長……。」
二人の後輩たちが俺を見つめてきた。
「とりあえず、作戦は変更だな。あのバケモノの後を完全に追うぞ。きっとだが、あのバケモノは奴を探している。奴と出会ったとき、どんな結末を描くのか……。陰ながら見たいと思う。お前たちは先に脱出しろ……。」
「先輩!」
「隊長!」
二人が俺につかまってきた。
「俺らも一緒に見ます。」
「最後の瞬間ぐらいみたいですから。」
「お前ら、……そうか。」
お前らも優秀になったんだな。俺はそう思った。
「よし、脱出より先にあのバケモノを追跡するぞ。」
「はい。」
「了解です。」
3人は再びバケモノの足跡を追っていくのであった。




