第34話 昼一の授業はまさかの持〇〇!?とある数字42.195ってわかる?
「では、昼一の授業は持久走をやるぞ。」
「えー。」
小鳥遊先生が授業開始とともにそういった。昼ご飯後すぐに持久走とか鬼かよ。
「これは教育機関の方針でだな、授業の一環の中に入ってるので避けようがない。ということで体育館に移動だ。」
「はーい。」
みんながぞろぞろと移動し始めた。みんなやる気なさそうな顔してるなー。
「私、どういう対応なんだろうね。」
早絵が僕に喋りかけてきた。っていうかこっちに来るの速くないですかね?
「そういえば早絵は車いすに乗ってない状態だったら進まないんだったな。車いすで持久走なんかしても意味なさそうだしな。」
「もしかして、免除かな。」
「免除って。まぁありえそうだけどな。」
走れない人間を走らせる鬼はいないと信じたい。でも、昼一に持久走をする鬼だからな。
「さあ、希心。体育館に行くよ。」
「なんでそんなにテンション高いんだよ……。」
「走るにしろ走らないにしろ、どっちも疲れないから。あと、みんなの走る姿も見たいし。」
そういえば早絵って前の世界では走ることが好きだったんだっけ? 確かそんなこと言ってた気がするな。
唯一、割とテンションが高い早絵の車いすを押しながら体育館に向かった。僕のテンションですか? 最悪だよ。
「全員集まったな。今回走ってもらう距離は42.195kmだ。」
長! って普通のマラソンじゃん。そんなの前の世界の僕では無理ですけど!
「なぜ体育館に集まってもらったかというと。」
小鳥遊先生が何やらスイッチを押した。すると真っ白な光が目の前を覆った。
「なんか嫌な予感しかしないんだけど!」
僕はそう言って特に何も起こってないことを願った。絶対何か起こってるんだろうけどな。
「なんじゃこりゃ。」
目の前に移ったのは外である。それもビル群である。なんか雰囲気が東京に似てる気がする。東京マラソンってか?
「みんなにはこの雰囲気の中で走ってもらう。ちなみに今までの最高記録は10分だ。2時間以内ゴールできなかったらどこまで進んだかの距離で評価を付ける。しっかり走ること。」
「はーい。」
みんなやる気がないけど評価するって言われてるから、やるっきゃないって感じだな。まぁ僕もその一人なんですけど。
「軽く準備運動でもするか。」
「橘さん、ちょっと。」
小鳥遊先生が早絵をよんだ。きっと走るか走らないかを聞くためだな。絶対走らないって答えそうだな。あ、走れないか。
数分後に早絵は戻ってきた。
「私は見学だって。希心の走りでも見ておくね。」
「僕の見るより御剣の走り見てた方が参考になるんじゃないか?」
「そうかもだけどバラエティー的にね。」
「僕はお笑い芸人じゃないから。」
「え?ってきり一発屋かと。」
「お笑い芸人じゃないし、さらに一発屋ってひどくないですか?」
「一発屋の人のほうが多いから仕方ないね。」
「確かにそうだけどさ。」
僕は準備時間を完全に早絵とのおしゃべりでつぶしてしまった。
「じゃあ、そこにある線より後ろにならんで。」
小鳥遊先生が合図を出すとともに早絵以外のみんなが線の後ろ側に立つ。
「それでは行くぞ。」
小鳥遊先生が手で鉄砲のような形にして上に上げた。まさか銃の発射音を出す魔法があるのか? そんな細かい魔法なんてないだろ。
バァン!
「まさかのあるのかよ……でも確かに魔物を追い払うときには使えそうだけどな。」
僕はそうつぶやいて走り出した。最初は飛ばしすぎないように注意しながらだな。
「って早!」
先頭集団はとっくにはるか遠く前方にいた。さすがにあれは早すぎませんかね? と言ってる間にもう500m進んでいた。
「あれ、もしかして前の世界とこっちの世界では距離の長さが違うのか?」
僕は一瞬そう考えた。でも違った。周りの景色がすぐに変わっている。そう、速いのだ。僕たちが速いのだ。前の世界で真面目に走った時よりも3倍は速い気がする。
「あれ、もしかして42.195kmって案外クリアできるかもな。」
そう思いながら僕は走った。
約1時間が経過した。僕はというと40kmを通過していた。あと2kmである。
「……さすがに、1時間も走ってると体力が持たんな。」
僕はもうバテバテであった。でもスピードは2倍ぐらいは保ってる気がする。
「……ラスト、スピード上げますか!」
僕は最後の力を振り絞った。途中で何人か抜いた気がするけど気にしない。
「お、もしかしてあれがゴールか?」
目の前にはテレビでよく見た箱根駅伝のゴールみたいな感じのがあった。多分あれがゴールで間違いないだろう。
「一気にブースト!」
42.195kmを僕は1時間10分でゴールした。
「はー疲れた。確か2時間までは待つって言ってたし、少し寝……。」
僕は意識が飛んだ。何かされた気がするけど気にしない。というかそれどころじゃない。




