第27話 勇者の卵は絵もうまい!?これは熊のぬいぐるみですか?
「御剣……だよな?」
僕は御剣に声をかけた。服には血がびっしょりついていたがあのデブさとあの金髪は御剣しかいない。
「…………。」
御剣は返事をしない。なんでだろうか?
「返事がない、ただの屍のようだ。とでも言わせたいのかな?」
「そのネタ、この世界じゃ絶対通用しないわよ。」
「わかってるって。早絵の前以外では絶対使わないよ。」
「それはどうかねー。」
僕らがのんきに喋った。これで御剣が反応してくれないかな。汲み取ってくれよ、御剣!
「…………うっ。」
「え? ……御剣、泣いてるの?」
御剣は首を縦に振った。それは予想外の答えだな。
「希心くんと早絵さんが生きていたっていうのと……人を切ってしまったことの二つでね……。」
「でも、御剣のおかげで僕らは助かった。もし、御剣がきてくれなかったら僕らは死んでたよ。」
「ほんと、助かったわ。ありがとね。」
「これは僕のじいちゃんが逝ってたことなんだけどな、普段使ってるものより、仲間を見捨てずに守るために使った力のほうがどんな力よりもいいものだって。結果人を殺ってしまったかもしれないけど、それ以上に御剣の力はすごく輝いていたよ。」
「なんかいい事言おうとして失敗してる奴じゃん。」
「そこは突っ込まないでよな。」
「……ふふ。」
「お、笑いやがったなー。」
「笑われて当然じゃん。」
「やっぱ君たちは、君たちのまんまがいいよ。そしてよくここまで耐えきったね。」
「舐めないでよな。」
「ずっとチキンプレイしてたくせに。」
「早絵だって同じじゃん。」
「でも、君たちにこんな時でもあえてよかった。そして君たちを守るために力を使えた。」
「そうだよ、マジで助かった。」
「ほんとありがとね。」
やっと御剣の顔が笑顔になった。やっぱ笑顔がいいよな。
「そういえば、このPvPってあと何分なんだ?」
「僕、さっき倒したおかげでタイムが見えるようになってると思おうんだけど。」
「みせてー。」
御剣は生存表を出した。
「うわーみんな真っ赤だな。」
「逆に何色にも染まってないの私達だけじゃない?」
「ほんとですね!逆に凄いですね。」
「褒められてるんだが貶されてるのか……。」
「褒めてますよ?」
「ほんとか?」
「ほんとですよ。」
いいよねー強い人は。基本的に褒められるだけだし。弱い人はほんと苦労するんだよな。
「んで、大事なこと忘れてた……えっと、残り10分23秒だってさ。」
「あと10分ねー。何とか逃げ切れそうね。」
「そうですね。それだけあれば逃げてるだけで何とかなりそうですね。」
「そういえば一つ気になってたことがあったんだけど。」
僕はふと思い出したことを言った。
「なんであいつは御剣をやったって言ったんだ?」
「あぁ、それはですね。」
御剣が剣を出して地面に絵を描き始めた。
「これは……。」
「御剣くん、すっごく絵がうまいんだね。」
「そうでもないですよ。」
地面に描かれたのは御剣の自画像であった。それもかなり似ている。特徴もしっかりとらえてて完璧だった。
「これでいいかな。じゃあ……」
御剣は絵に集中して
「クリエイト!」
御剣がそう唱えると、目の前に御剣と瓜二つの土でできた御剣ができていた。
「すっご。なにこれ?」
「これは無属性の魔法でクリエイトという魔法です。この魔法の特徴は、自分が作ったものは何でも作れてしまうものです。ただし、条件として材料が必要です。今回は土だけで作ったので。」
そう言ってさっき出てきた御剣の腕を触った。するとボロボロっと崩れてしまった。
「このように、形を変えているだけなので、紙で作った剣なんかはただの紙切れなので切れませんし、鉄で作ったあんパンなどは固くて食べれません。」
「なるほどな。その魔法ってどうやって使うの?」
「うーんよくわからないですね。」
「なんでよ!」
「なんかふとした時に覚えてるって感じですかね。」
「なんじゃそりゃ。」
いったい魔法ってどうやって使うんだろうな。もしかして小鳥遊先生なら知ってるかもな。今度聞いてみようか。
「クリエイト!」
早絵がいきなり呪文を唱えた。すると目の前には丸いものができた。
「え。なんでできてるの?」
「いや、真似してみたらできちゃった。でもね。」
早絵はもう一度集中して
「クリエイト!」
呪文を唱えたが、何も起きなかった。
「少しでも形が難しいとできないの。」
「えーと、これは何?」
そこに描かれていたのは丸と四角と三角が入り混じったよくわからない絵だった。
「何って、熊のぬいぐるみよ。」
「え!」
これが熊のぬいぐるみだと!?どう見てもバケモノなんだけど。
「なんでできないんだろうね。」
「きっと絵の問題だと思うんだけどな……」
「そうですね……。」
男二人は小さくつぶやいた。




