第5話 帰る場所
何だろうか…息がし辛い…。口が塞がれている分けでは無い…だけど…こう…呼吸器官が塞がれているような……喉!そうだ!これは喉が苦しいんだ!少し考えれば解ることだろ!口が塞がれてないのに苦しいなら、空気の行き来する場所つったら他に有るだろ!
鼻だ。
違う!今は喉が押さえられているんだよ!
だけど…誰が?何のために?
俺を嫌う人間か?
俺を嫌う人間なんて居る筈がない!
じゃあ他に………。俺に恨みが有る人間か?
恨みを買うような事はしてないはずだ!多分!
思い当たる節は…。
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「ねぇねぇ大翔君!大翔君て…どんな娘が好み…なの?」
「君とは違うおっぱいが大きい娘かな」
「…」
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「大翔!昨日俺の妹が泣きながら帰ってきたんだ。お前…何かしたのか?」
「ん?妹?あのおっぱいの大きくない子の事か?」
「…」
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うむ、やはり思い付かん。
あ!てか見れば良いんじゃね?
俺ってば天才だってばよ!
良し開けるぞ!開けちゃうぞ!
見れば一目瞭然とは言ったものだな!
えい!
「しねぇ…よんのじがため~…」
白くスベスベな太股が俺の首を閉めていた。
これはこれで…。
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「寝ながら4の字固め何てしないでくださいよ…」
「いやぁ~ごめんごめん。夢の中でとてつもなく腹立つ奴が出てきてさ~余りにも頭にきたから、頭を4の字で固めてやったのよ。そしたらソイツさ私の名前じゃない女の名前呼んで喜んでのよ!キモチワルかった~」
「へ~。夢の中で何て名前で呼ばれてたんですか?」
「それがね~夢だから曖昧なんだよね~。リコール?アルコール?分かんないや」
まあ、夢だからしょうがないか…。
いやいや、それより重要な事があるだろ。
「そうですよ!貴女の名前!!名前は何て言うんですか!」
「あれ?名前言ってなかったっけ?私の名前は!…名前は………名前?」
「名前は?」
「……分かんないや!」
「は?」
ああ、そう言えば。
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『え?だって私…私…わたし?』
『どうしたんですか?』
『ごめん私って誰?』
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とかあったな。記憶喪失なのか?
「あの…もしかして記憶が無いんじゃ…」
「うん!記憶喪失っぽいね!」
「ぽいねって…」
はあ…。まあいいや…取り敢えず帰すか…。
「あの、帰る場所は有るんですか?」
「は?覚えて無いのよ?分かるわけ無いじゃない。バカじゃないの?」
何だ?この上から目線は…。何と腹立たしい事ですか!
腹立った。ちょっと意地悪言ってやろう。
「ああ!そう言えばそうでしたね!すっかり忘れてましたよ!じゃあ出てけ」
「え?」
「は?」
「今…何て?」
ここで、ある程度真顔でやれば…。
「あ?聞こえなかったのか?その頭の両端にある耳は飾りか?出てけって言ったんだぞ?もう一度は言わすなよ」
「ちょっ、え、え?」
戸惑ってる戸惑ってる。
何だよ、可愛いじゃんかよ。
「え、え、えぇぇ、うっ……うわあぁぁぁぁぁぁぁん!」
!?
「ちょっちょっと!」
「意地悪じないでぇぇぇぇ!」
とてつもなく予想外な反応でちょっと戸惑った。
泣くところを文章にするのは難しいぞえ。