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脇役謳歌~できそこないヒーロー  作者: uda
2*鬼と祓い屋の物語*
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魔女の踊り場での語り合い

*鬼と祓い屋の物語 14*



*脇役・六原のおはなし*


 夕焼けが緑の生い茂る木々にオレンジ色の光を浴びせ、カラスの鳴き声がこだまのように反響する自然の中、人里離れた山々の少し上空を二つの影が飛び回っていた。


 鳥のような羽ばたきも滑空もなく、飛行機のように一直線上にも飛ばず、二つの影。魔法のほうきに乗った二人は複雑な軌道を描き、茜色の雲の下を飛行する。


 ほどなくして二人は広々とした草原にゆっくりと着地していく。


 上手くなったものだね。一緒に着陸した六原を見て、彼と同じように黒いマントと三角帽を身につけた月島はそんな感想を抱いた。

 ここ数日は梅雨やカグラの件があり、まともに六原が空を飛ぶことを見る事がなかったがこうして久しぶりに箒を乗りこなす六原の姿に、やはり彼の適応能力は高いなぁ。と思った。


 もっとも、動体視力等の反射神経は人並であるため全体的には六原の運転は中の上といったところである。


――それにしても、ワタシに箒をくれるとわね。


 地面に足を付けた月島は右手に持つ銀色の箒を見て昨晩のことを思い出した。


 昨夜二人で星を見ながら語り合い。

 クラスの話や、最近変わった出来事、星座の話など。どうでもいいような話題だが楽しくもあった語り合いの後、月島は六原に明日もここに来ないかと誘った。

 そして、二つ返事で承諾した六原は最近知り合いから魔法の箒を手に入れたから、いい機会だし一緒に飛ぼうと提案された。

 翌日、この広場についた二人はまずはこうして新しい箒の試運転も兼ねて軽く飛行をすることになったのだ。


 日が暮れていないため蒸し暑さで汗がにじみ出てくる。試運転も終わり、小屋についた月島はまとわりつくだけとなったマントと帽子を脱ぎキレイに畳むと持ってきたバッグの中にしまった。

 ふぅと一息履きながら、マントの下のTシャツにジーパンを言ったシンプルな格好になった月島は肩にかかる長い黒髪手で払う。

 これで少しでも涼しくなればいいのだが、分かりきった事に少し気が紛れるだけ。


「いやぁ、暑いですねぇ」

「嗚呼、まったくだよ。どうしてこの月になるとこうも蒸し暑くなるのだろうね」


 山小屋の中はサウナのように外以上に蒸し暑かったため、二人は山小屋の脇に設置されている手作りのマルタ椅子に座り一息をついた。


「まぁ、そのうちなれるよ。それにまだ夏は始まったばっかりなんだから。まぁ、これでも飲もう」


 あちらの世界では気候が違うという事について話した昨夜の会話を思い出したのだろう。マント等を脱ぎ月島と同じような格好となっている六原はヘラヘラと笑いながら持ってきていたバッグの中から、水筒と紙コップを出すと中身を注いだ紙コップを月島に渡した。


「ありがとう……うん、冷たくておいしい」


 口の中にひんやりとした麦茶が喉を潤す。


「そういえば、六原さん。ずいぶん箒の扱いが上手くなったようだけど練習でもしていたの」

「ん、まぁねぇ。ほら隠れて練習したらかっこいいからね」


 紙コップに口をつけながら六原は答える。

 一人で練習。どうやら、また、彼の悪い癖が出たようである。


「どうだ、上手くなっていて驚いただろ、結構練習したからねぇ」

「そうだね。けど、別に隠れる必要はないんじゃないかな。必要ならワタシが教えることも、この場所に案内することもできるんだよ。その方が一人で考えるより六原さんも時間をかけずに覚えることができるのではないの」


 ハハハ、何を言いのですか。だって、ヒーローというのは孤独に見えないところで努力するもんだぜぃ。などといういつもの反省もしない強がりな言動を六原は口にしなかった。


「じゃあ、そうするか」


 格好をつけることもなく、お茶をすすりながら六原は普段と変わらない口調で言った。いつもと違う反応に少しだけ、月島は内心驚く。しかし、何となくこのような言動の理由は分かっているので表情には出さなかった。


 勿論、六原の性格が突然変わったわけではない。


――頼ってもらえているの……かな。


 そのことに少し嬉しくなりながら、月島は昨夜の食卓での会話を思い出す。


――『じゃあお互いに信頼が足りなかったってことかぁ』『オレも努力するからさ』


 優しげに言った六原の言葉。その言葉通り、少しは月島のことを救うだけの対象ではなく、仲間としてみてくれるようにしているようである。

 ワタシも彼を信用し、理解したい。と月島は改めて思い直した。かと言って焦ってもどうしようもない。時間はあるのだ、ゆっくりとやっていこうじゃないか。


「んで、どうだった」


 思案している月島ではあるが表情に表れていない為か、彼女の内心に気にすることはなく六原は月島の脇に置かれた銀の箒を指さした。


「そうだね。これには使い魔が入っていないようだけど……後、燃費とコントロールはいいのだけど、スピードはあまり出ないみたいだね」


 渡された箒は、六原の持っている箒のように乗っている際に語りかけてくることもなかった。


「そうだね。一応、魔力効率を目指して作っている過程で使い魔と駆動部分を削減したって聞いたからなぁ」


「ふぅん、そうなのか。それにしても」


 こんな箒をどこで手に入れたのかい。と聞いたところで、いつもの様にはぐらかされるのかと少し思ったが、月島は少し思い切って訊ねる。


「こんな箒、六原さんはどうやって手に入れたのかな」

「嗚呼、えーとね」


 六原は頬をぽりぽりと掻きながら少し困ったような顔をしていた。


「すまんが、ちょっと秘密なんだよ。たぶん時期を見ていうから……」


 答えられないと六原は申し訳なさそうに言う。

 特に気にはしなかった、はぐらかさずに正直に答えただけで十分だ。


「……分かった。待っているよ」


 だからといって本当に待っているつもりはなく、六原が信頼してくれるようにしないといけないかなと抱きながら月島はポツリと言葉を返した。


 だからそれまで箒の柄の部分にカネジュウとカタカナで描かれた謎の箒の真相を知るのはまだ先の話なのである。


「それで、今日わざわざ呼び出して、どうしたん」

「嗚呼、それはね」


 それは今朝方に送られてきた高峰の連絡も含め、月島はここに連れてきて相談しようとした内容。


 別に昨夜会ったときにでも六原に相談しても良かったのだが何となく、理由は自身もよく分かっていないが何故か昨夜の仲直りしたあとでは言い出すことが月島はできなかった。


 かといって時間もあまりないのでこうして翌日の学園が終わった後に会う約束をして、一度空気がリセットされた状態で話をしようと考え、昨夜、六原を誘ったのであった。。



「今日から二日後、遅くなったようだけどカグラを救う作戦が行われることは知っているよね」

「嗚呼、高峰さんからそんな連絡が来たねぇ。一応、不破の都合も大丈夫。というよりこのままだと目覚めが悪いということで来てくれるそうだ」

「うん、そうか。それは良かった」


 なので、今度は最初から暴れてくれるという事で、基本的には不破のおかげで作戦に必要な人数は余る程増えた。そのため、敵の本陣に向かっての電撃作戦となる今回の作戦には六原や天野たちという武内家の者たち意外が行く事になっている。


「正直、武内家のモノたちが来ても今回は厳しいからね。天野達の方が段違いで強いから……」


 相性的にいえば不破、月島、天野、三人娘、最後に六原という強さの順番であるらしい。

 不破さん、どれだけ強いんですかね。


「六原さん」

「はい、何ですか」

「以前、カグラについてどうしたいのか。って聞いてきたよね」


 数日前に六原が月島に「どうしたいのか」という問いの答えをようやくは口にした。


「ワタシは彼女を救いたいんだ。どう思う」

「別にいんじゃないか」

「……やけにあっさりというね」

「月島は友達を救いたいって思っているんだろう。なら、それは当たり前で、普通な事じゃないか」

「……じゃあ」

「任せてくれ。協力しよう、俺たちアルバトリオンヒーローがね」


 月島を安心させるように笑みを浮かべウィンクをしながら六原は快く了承してくれることに感謝しつつ、アルバなんちゃらって何なの。という小さな疑問を月島は持つのであった。






*囚われた巫女・カグラのおはなし*


 暗い、暗い闇の底。少女は誰かと遊んでいる。

 目の前の誰かは見た頃でないような人。

 少女は語る。次は何をして遊びましょうか。

 誰かは答える。では、わたしとあなたが入れ替わるのはどうですか。


「いいですね。わたし」


「それほどでもないですよ。わたし。」


 そして少女の肌に何者かが先触れる感触がした。嫌な気配は何もない。ただ、母に包まれ、温もりに沈んでいく……

 不意に頭の片隅で少年の顔が浮かんだ。絶対に連れ出してやるよ。そう言って笑を羽化がべ少年が今はそこか懐かしい。


 彼は私を迎えに来てくれるのだろうか。


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