威厳がある様なふざけた男の武器達
*鬼と祓い屋の物語09*
*脇役・六原のおはなし*
「ふむ、貴君が言った事は誠であったな。なるほど、これぞまさに脱兎であるな」
正面には大きな門と塀、背後には屋敷に続く扉のちょうど中間に位置する場所で殿のような古びた言葉遣いをした作務衣服の少年は六原に呟いた。
「だろ。だからといって手を抜いたり、外にいる全員で屋敷内に入ったりした時には鬼達に囲まれてハイ、オシマイっていう風になるんだよな」
「故に我が呼ばれたのだろう」
振り返り大柄の青年は鋭い眼光を六原に向ける。
「いやぁ、カッコいいですねぇ。様になっていますよ」
つい先ほど六原の持っていた魔法陣に呼ばれて出てきた少年、不破 慎太郎は照れる事無く武骨に返答を返すだけであった。
「世辞はいらぬよ」
不破はさきほど抜いた日本刀を再び腰に差した鞘に収めた。
たった一本の日本刀。
変わっている事を上げるとするならばその刃につい今しがた斬り捨てた鬼の血が吸い込まれていったように六原には見えたことぐらいであった。
六原は自分の左手側を見ると先ほど倒された鬼が灰の様になり崩れ始めていた。
「グルゥゥゥゥゥ」
低いうなり声する、視線を変えれば隣にいた化け猫、アザミが不破を睨みつけていた。
「そりゃ、いきなりハンカチの上から人が現れたからビビるよなぁ」
不破と言えばアザミの方を見向きもせずに正面の開いている門をじっと見つめていた。
――まるで化け猫ごとき相手にしていないように見るかもしれないけど、アレ完全にビビっているだけなんだよなぁ。
よしよし、さっきはありがとなぁと頭を撫でながら、六原は不破を落ち着かせる。
「大丈夫。大丈夫。アイツ、味方だよ」
――祓い屋とかとは違う世界のジャンルだけど。言わない方がいいだろう。
気持ちよさそうにしているのでついでに喉もゴロゴロしてみる。
「ああいう風に達観しているように見えるけど基本お調子者でビビりだから仲良くしてやってねぇ」
「ニャー」
「ちょ、秘密暴露とか。ねぇーわー」
背後を向いたまま、不破は呟いた。
「不破さん。キャラがぶれていますよ」
いかんと言いながら、不破はごまかすように咳払いをする。
「……貴君ら、何かぶっちゃけたか」
「落ち着け」
「にゃー」
この人、いろいろと大変そうですね。と言いたい様な憐みの視線を化け猫は不破にぶつけていたが背を向けている不破は気がつくことなく、小声でセーフと呟いていた。
――不破さん、アウトだよ。まぁ、打ち解けたようでなによりです。これから、もう一戦あるから、仲良くしといて損はないしねぇ。
不破の視線の先、開いた正面門の先の光景に六原は視線を向けた。
紅い眼だけ島見えなかった鬼の群れは暗闇の中からでもすぐこちらまで迫ってきている。
――うわぁ、こわいじゃないですか。
口に出しかけたが六原は直前で言うのをやめる。ヒーローというものはこのような時、余裕の笑みを浮かべているのだそうだ。
だから、六原はいつも通り虚勢を張った様な笑みを浮かべた。
「貴君よ」
不破は自分が召喚した際に持ってきた黒い大きなはこの前まで歩き出しながら尋ねる。
「今宵、この場にて『霊武』の全使用を誠に臨むか」
――おいおい、今更聞くのか。
「大丈夫、大丈夫」
「……真面目な答えには聞こえぬが、その言葉に虚偽はあらぬか」
「当たり前だ。それにもし、誰かにお前の力が見つかったら、『式神』ということにしておけば問題はないよ」
「良かったわー。六原さん、マジぱねぇ―」
――お前の方がふざけているよなぁ。けど、実際ああいう話し方の方が『霊武』を従えやすいって言っていたから、深くは言えないんだよね。
では、と言うと作務衣服の帯に差し込んだ日本刀を鞘ごと取り出す。六原はおそらくまた警戒するであろうアザミを落ち着かせる為、頭を撫でちょっと驚くかもしれないけど我慢してねぇ。と言っておく。
刀を鞘ごと右手に持った不破は何を思ったのかおもむろにその刀を空に投げた。
「――顕現しろ『恋桜』」
日本刀からぽんと可愛らしい音がすると同時に煙が現れ日本刀を覆いつくす。
空中に浮かぶ日本刀はそのまま地面に落ちる筈であったのだが、一向に地面に落ちたような物音も立てずにいた。
落ちてくる様子もなく煙はスグに晴れる。すると中からは日本刀を携えた一人の少女が地面に着地した。
「おっまたせー」
投げキッスと共に現れたのはピンクのリボンを両側に結んだ小柄な少女。巫女服のような服装だが袴の裾が短くスカート状になっている為、清楚というような印象には見えなかった。
――おお、ミニスカ巫女かぁ。いいセクシーポーズだ。しかし、健全な男子には刺激が強いっすわぁ。
スカートが短めの為、現われた少女の生足に自然と目がいく六原はゲスイ感想を抱いた。
「『恋桜』よ。その屋敷内の防衛、及び人命の救助にあたるのだ」
「はーい。恋桜、主の為に頑張っちゃうんだから」
語尾にハートマークをつけるように色っぽく言うと恋桜と言われた少女は先ほど、高峰が屋敷内に進入したように屋根まで跳び上がる。
「帰ったら撫で撫でしてよね」
「期待しているぞ」
「あっ、後。一応君の存在を聞かれたら、式神と言っておいてください」
「おっけー。じゃあ、いってきまーす」
そして、手に持つ日本刀を鞘から抜くと高峰達が侵入した際に蹴り破られた大穴へと飛び込んで行った。
あまりの突拍子もない出来事にアザミはポカンと口を開けていた。
――相変わらず、うらやましい。いや、便利な能力だよなぁ。
人の意思の様に意思を、感情を持つ武器。契約により力を発揮する武器。神や、精霊、悪魔などから加護を得た武器。呪いや、聖なる力を兼ね備えた武器。
これらを不破家の人達はまとめて『霊武』と呼んでいた。
そして、それらを収集し売買や、密かに研究する一族の一つでもあった。
目の前の作務衣服の男、不破 慎太郎は不破家の分家にして『問題児』として危険視されている天才の一人でいる。
――まぁ、『問題児』って理由が、自分で捕まえた霊武を『契約』か『屈服』させた後に、霊武自身の意思を人の形、それも不破さんの趣味に合わせた性格と格好にさせイチャつこうとているってのが、問題何だよねぇ。
様は特定の条件を満たせば武器を人の形にさせ武器自身が戦えるようになっている一族であった。
――神聖な武具を可愛い女の子にしたいといった変態的所業をするのは不破さんとその祖父だけらしいけどねぇ。
出来る事なら不破の様な秘術を習いたかったが、見込み無しと言われ、以前面接で落とされたなと六原は懐かしむように思い出した。
「じゃあ、不破さん。アレも頼むよ」
「おっけー」
軽口で答えた不破は側に置いていた、黒い箱に歩み寄った。
箱は不破を召喚した際に、彼が持ってきていた物であった。四十センチほどの黒い立方体の形をしており模様やつなぎ目などが一切ない黒い不気味な箱。
夜の中に紛れ込んでしまいそうな箱の前で不破は身を屈めると不破はサイコロの上の部分に手を当てゆっくりと引き上げると、サイコロにつなぎ目が見え、箱のふたが開く。
「貴君、しばらく危険であるが故、下がっておれ」
手で離れるように促す不破の言葉に従ってアザミをひきつれ離れると不破は右手をはこの中に勢いよく突き入れた。
肩肘まで箱の中に入り、明らかに箱の大きさから考えれば、肩まで中に入れているにはおかしな奇妙光景。
だが、本当に摩訶不思議で奇妙な光景はここから始まった。
――さぁ、マジックショーの始まりだ。
「顕現せよ『クラリス』」
日本刀を少女に変えた時と同じような呪文を言いつつ、不破は腕を箱から引き抜いた。
箱から現れるは1メートルはある両刃の西洋風の剣。明らかにあの箱の大きさに入れれるものではないのにもかかわらず、長剣は箱からと現れる。
「『タイメクト』、『月詠』、『星詠』、『フォンテーヌ』、『雪月花』、『カズチ』、『ウル子』……」
次々と名前を言いながら箱の中から武器を出して、宙に投げる。
小剣、兄弟剣、槍、脇差、レイピア、弓……斧やらハンマーといった武器が次々と箱から取り出され、宙に舞い、それらはいずれも地に落ちる前に人の姿を作り出す。
西洋風の甲冑を着こむものもいれば、チャイナ服姿や東洋風の甲冑、山賊の様な毛皮を着こんだそれぞれ異なった服装ではあったがいずれもそれは美しい少女の姿をかたどっていた。
――服装のセンスとか。ぜってえ、こいつの趣味だよなぁ。
「皆。揃ったようだな」
「「「はい、主様」」」
武器を出し終わったのか箱の蓋を閉じて、少女達に向き直った不破に皆が声をそろえて返事をした。
数は二十近くもあり、門の前に開いていた空間を少女達で埋めていた。
「敵のモノノケはすぐそばまで迫っている。作戦通り、各自、散会し彼奴等を討て」
「「「はい、主様」」」
――まるで演説だな。
声高らかに言う不破。隣にいるアザミは口をポカンと開けていた。
ふむ、と言いながら不破は満足そうに笑みを浮かべさらに少女達に問いかけた。
「後、皆、我の事好きか―」
「「「いい加減、武器じゃなくて人を愛せるようになってください」」」
「……結構」
「最後はねぇなぁ」
――何でさらりとふざけた事を言うのかね。
「貴君は何か言う事はあらぬか」
いきなり、話を振られた六原だったが、こういう事は慣れっこなのでいつもの調子で答える。
「霊武の存在がバレたらまずいんでぇ。一応他の人や鬼たちに何者かと問われたら『新手な式神』と答えてくださいねぇばれたら、色々と世界が壊れたりしますので」
六原の言葉に皆がそれぞれ口をそろえて、同じ了承の答えを返す。
女子高生っぽい若さの余る元気さを感じられ、こうして、間近で見ると生きている少女にしか六原は思えない。
「後、一応鬼はなるべく殺さないようにお願いします。殺し過ぎて恨まれでもしたらいずれ貴方達の存在を鬼に知られちゃいますからね」
「「「はーい」」」
――あら、あいつとは違って可愛い返事。
「以上だ。ソレでは各自行くが良い」
「「「「はい、主様」」」」
答えると同時に彼女らは散り、各々の場所へと駆け出す。
すると、少女達の動きを眺めていた六原の横に、スッと近づいた不破が耳元で小さく呟いた。
「ちょっと、可愛い返事をされたからって勘違いをすんなよ」
「分かったから、落ちつけ! それぐらいで動揺するなよ」
*霊武・不破の武器のおはなし*
走り込んでくる音が聞こえる。見れば鬼の群の先頭が門の前まで迫ってきていた。
だが、鬼達は門をくぐる事は出来ない。
「アハ、一番槍・大・成・功」
門をくぐろうとした先頭の鬼が吹き飛ばされる。
「ここから先は一歩も通さないからね」
魚の鱗の様な西洋風の軽装を着こみ、三又の槍を携えた霊武の少女は槍を振り回し先頭の鬼を次々と吹き飛ばした。
不破からは『フォンテーヌ』と呼ばれた少女は続いて地面に向かい槍を貫く。
ごぽり、何かが吹き出る音が聞こえる。
すると、刺された場所の地面が溶けだし、フォンテーヌの周囲を中心に半径十メートルほどの湖が出来あがった。
「止まらないとドボーンよ」
愉快そうに何故か湖の上に平然と立っている霊武のフォンテーヌ、だが、駆け出していた鬼の群れは突如現れた泉の前に、そう簡単に止まる事もできずに、先頭の何体かは湖に落ちていく。
湖は底が深いのか落ちた鬼達はおぼれるように手足をもがくが一向に這いあがる気配をみせない。
驚いた様子を見せながらも仲間に落ちた鬼達の救助をさせ、何とか止まる事ができた鬼達は低く唸り湖の上に立つフォンテーヌを睨みつける。
フォンテーヌは愉快そうに笑っていた。
「アハハ、だけど止まっても危ないですよ」
三又の槍を持つ少女は言いながら槍と天に向ける。鬼達の頭上その先を追うように視線を空に向かる。
瞬間、二つの影が空より落ちてきた。
群の中心辺りに着地した影が、何か確認するよりも速く、周囲の鬼は弾け飛ぶ。
現れたのは二人の少女の姿をした霊武。
さらりとした銀髪に黒いマントですっぽりと身を覆う軽装の霊武『タイメクト』と白いドレスの様な煌びやかな甲冑を纏う姫騎士の様な金髪の少女の『クラリス』であった。
それぞれの手には刃渡り三十センチほどの黒い片刃の剣、クラリスには黄金の柄を携えた長剣を構えている。
「タイメクト、わかっているわね。今回はなるべく殺してはダメよ」
お互いに背を預けるように鬼の中心で二人の少女は剣を構えなおす。
クラリスと呼ばれた霊武は背中を預けるタイメクトに言うが、タイメクトは剣を肩に掛け口端を釣り上げる。
「さぁ、殺し合いの時間デス」
「貴方、私の話聞いていましたか」
「いいえ、まったく、聞いていないデース」
これで話は終わりと言うようにタイメクトは鬼の軍勢に突っ込んでいった。
「あのデスデス馬鹿女」
追いかけようと思ったが正面から鬼が襲いかかり、クラリスに向け金棒を振り回す。
「ああ、もう!」
叫びながら、剣で金棒を斬り払い、返す力を利用して剣の平面の部分で対峙する鬼の頭をフルスイングする。
鈍い音が鳴り、思わず仰け反る鬼に目もくれずクラリスはタイメクトを追いかける。
その背を、クラリスの攻撃で頭に衝撃を受けた鬼はすぐさま起き上がり、追おうとしたが鬼は何故か力が抜け、その場に倒れた。
「まったく、私の力の方がこういう魔物には効果的ですからっていったのに」
追いかけるとクラリスの予想通り、タイメクトが鬼を斬り捨てていた。
明らかに彼女の持っている小剣のリーチではなかったのも関わらず、鬼は彼女の間合いに近づくことなく斬りつけられていた。
タイメクトは再び小剣を振う。瞬間。彼女の黒い刀が一瞬だけ黒い靄を纏う、靄は刀の様な形になると刃渡り一メートルほどの長さとなり、その闇に触れた鬼は刀に斬られた様な傷をつけられる。
「あれぇー、こんなもんデスか。もっと、もっと、抗ってくださいよ。はぁはぁはぁはぁ……」
「おやめなさい」
クラリスはタイメクトの頭手で叩いた。
「もっと、落ち着いてエレガントに戦いないよ」
「ちぇ、分かったデスよ」
二人で言い合いをしながら戦う所に大きな影が落とす。
「貴様ら」
反射的に二人はそれぞれ左右に飛ぶと先ほどまでいた場所に大きな二本の大剣が落とされた。
紅い肌を日本甲冑で包み、今まで現れた鬼達より一回り大きな鬼であった。
鬼は地面に振り下ろした二本の身の丈ほどもある巨大な刀を持ち上げると、二人を睨みつける。
「この我が来たからには、貴様らのような化け物もここまで」
そして、刀を構えようとしたが、巨大な鬼はがくりと膝を落とした。
次に膝に痛みが走る。
「何!」
膝には光る矢が突き刺さっていた。鬼はすぐさま引き抜こうとした伸ばした腕の手のひらを再び矢が放たれ手の甲を穿つ。
「どこから…」
刺された矢の方向から放たれた場所を確認ようと鬼は首を動かすが、門の上に人影がいた事が確認できた時にはその鬼は四肢を矢に全て穿たれていた。
「弓兵が、門の上におるぞ!」
叫ぶ巨大な鬼。そして、弓兵に注意しながらも、駆け寄り、助け起こす為に鬼達に巨大な鬼は命令する。
「おい、退くぞ」
とてもじゃないが、突如現れたこの少女達に戦って勝てる気がしないと判断し、兵を退くように促した。
*脇役・六原のおはなし*
――すげぇ一方的過ぎる戦いって、何か申し訳なくなってくるね。
「嗚呼、最早蹂躙じゃないか」
不破の力によって現れた少女達が先ほどの倍の数で現れた鬼をより一方的に倒していく光景に最早やる事がなくなった六原は玄関の前に腰かけていた。先ほどまで六原の側にいたアザミは今は少女達と一緒に戦いにいっている。
「貴君は屋敷の中に入らぬのか」
側に同じように腰かけている不破は六原に尋ねた。
「嗚呼、そうしたいけどねぇ」
ケータイを取り出し、時刻を確認する。
「たぶん、いつも通り間に合わないよ」
何となくだが、いつもの自分の脇役の様な運なら大体たどり着く前に、事の自体が片付いているので、月島を追いかける事を普通に諦めていた。
「なんつーか、今回はマジでやる気ないよね」
「お前もキャラ保つのやる気ないよなぁ」
空を見上げると、六原の頭上に黒い羽が舞い落ちる。
それだけで、六原は事態を呑みこみため息交じりに呟いた。
「……嗚呼。終わったなぁ」
落ちてきたカラスの様な羽を摘む。見れば門の前にいた鬼の軍勢も退いていく様子であるようだ。
巨大な羽をはばたかせる音が空から聞こえる。再び空を見上げれば巨大なカラスが羽を羽ばたかせ、夜空に舞いあがっていく。
そのくちばしの部分には着物を着た少女が咥えられているのが見えた。
「やっぱり、捕まったか」
「助けぬのか」
少女が連れ去られると言うのに動く気配も心配する様子もない六原に不破は問う。
「いや、あちらさんの人質の様なものだから、下手に刺激したら駄目だろうよ。それに連れ去られたとしても、まだ手遅れにはならない筈だ」
「……そうか」
巨大な三本足のカラスは空から屋敷を越えていき飛び去っていく。
――針沼さん達を先に帰しておいて本当に良かったなぁ。
もし箒で空等を飛び、未だ偵察をしていたならば今頃カラスたちと鉢合わせになって面倒な事態になっていただろうなぁと六原は思った。
周囲が落ち着いた事を確認すると、六原はポケットからケータイを取り出し、針沼からの連絡を確認する。どうやら、無事撤退しているとのことであった。
「ふむ、我らの仕事は失敗か」
「いや、当主から言われた通り門から押し寄せている敵の護衛は果たしていたし、屋敷内から現れた鬼の件は多分オレ達のせいじゃないだろうねぇ」
――たぶん、そのカグラちゃんのせいだろうなぁ
月島から聞いたカグラと言う少女の悩みと鬼が人の闇に付け込み現れる習性があるという情報から、ある程度何が起きたかは想像ができていた。
「不破、それで被害はどんな按配かな」
「……水月はおるか」
短い声で不破は呟く。同時に二階の屋根伝いから一人の少女が飛び降りてくる。
「おまたせ。水月、只今参上」
着地と同時にポーズでもとりそうな元気な声。黒装束に身を包み口元をマフラーで覆っているが目元の表情は生き生きとしており生き生きとした少女と印象付けられる。
「六原の元での偵察大義であった。して、被害は」
不破の目の前で少女は元気に敬礼のようなポーズをとる。
「はーい。今のところですがカグラ殿が連れ去られた以外、死者はおりません。まぁ、重傷者はいますが」
最後の辺りは小さな声で水月は語った。
そうかと短く呟いた後、不破は水月に言う。
「後で御褒美にキスしてあげよう」
「いえいえ、結構です。マジで勘弁して下さい」
「……帰ってからふざけてくれよねぇ」
言いながら水月の報告に六原は心の中でほっと安心した。
――そうか。なら、良かったなぁ。正直、鬼が屋敷内から現れた時は焦ったが犠牲者いないようなら一安心だ。
しかし、現状はターゲットを連れ去られている為、素直に喜べないよなぁと六原は思いなおした。
――さて、これから反省会ってところかなぁ。
六原的には現状満足の結果だが、ターゲットは連れ去られた事には違いなく、どうせこれから奪還作戦を立てたりするのだけではなく責任の押し付け合いなどがあるのだろうな。とこれからの事を考えながら六原はシリアスにならないといいけどねぇと願うのであった。




