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脇役謳歌~できそこないヒーロー  作者: uda
2*鬼と祓い屋の物語*
28/47

二日目~折り紙の折り方

*鬼と祓い屋の物語05*


*脇役・六原のおはなし*


結局、何事もなく初めての護衛の仕事は初日を終え、二日目となる。


 二日目。授業も終わり、少し仮眠をとった六原は、月島と駅前で待ち合わせをした後、電車に揺られ武内家に来ていた。


 天野達については禁龍機関に報告をしに行かなければいけないらしく。少し遅れると連絡を受けている。


 正面の門番らしいごつい男性達に軽く挨拶をし、六原と月島は昨日あてがわれた離れ小屋に荷物を置きに行った。


「ふぁぁわぁぁあ」


 気の抜けた声が小屋に響く。六原は大きな口を開け、間抜けな顔であくびをした。


「眠そうだね」

「まぁねぇ」


 囲炉裏の間に荷物を置くなり座布団の上に六原は腰を落とす。

 人うが溜まっている様子に少し心配しながら制服姿の月島は六原の顔を覗き込んだ。


「やはり、昨夜の警備は堪えたのかな」

「いや、そうじゃなくてね」


 手を横に振りながら、六原は否定した。


「あの後、姉から連絡があって少し別件の手伝いをお願いされたんだよ」

「…別の件?」

「そうそう」


 言いながら六原は側に置いた鞄を開け、中から、水筒と紙コップをとりだす。


「少し冷たくないがアイスカフェオレだけど、呑むかい?」

「頂くよ」


 紙コップに穏やかな茶色の液が注がれ、体面に座った月島に手渡す。月島はお礼を言いながら受け取り、一口つけた。

 六原も自分の紙コップにカフェオレを注ぎ呑む。水筒のおかげで冷たさを残した苦味と旨みが喉を潤してくれる。


「それで、どんな事を手伝わされたのかい」


 えーと、と考えながら六原は言葉を紡ぐ。


「食材探し、かな……」

「へぇ~」

「伝説の怪鳥。ギャオーズの卵で目玉焼きを食べたい。という依頼を受けた食材ハンターの手伝いをオレと姉で華麗にやってのけたのよ」


――まぁ、まさか怪鳥を巣から遠ざける為のおとりにされるとは思わなかったけどねぇ


 けど、美味かったなぁ、目玉焼き。と思いながら、朝から怪鳥の餌にされかけた事に改めて胃が重くなるのを感じた。


――後、まだ調べ物が終わってないからなぁ。


「嗚呼、そうだ、これ」


 ぼんやりと回想しながら、六原は鞄の中再び漁ると中から小さな巾着袋を取り出す。


「何かな。これは?さっき言っていた怪鳥の卵?」


 手渡され不思議そうに眺める月島は巾着袋を開けてみた。なかには卵のようなものはなく、代わりに折り畳まれた小さな布が入っていた。


「ハンカチ?」

「そう、ハンカチだよ。その巾着は手首に巻けるように出来ているから、まぁ、お守りだと思って身に着けておいてください」

「そう、ありがとう」


 言われ早速手首に巻いた月島はお礼を言った。


「何かピンチになったらその布を広げてくれれば良いから」

「分かったよ」


 月島は短く答えた。カフェオレを飲み干すと立ち上がる。その空になった紙コップを六原は受け取った。


「今日もカグラちゃんのところに行くのかい」

「まぁね」


 淡々と答えているけど、多分うれしいのだろうなぁ。と六原は思ったが、こういう事は言わないのが常識だと分かっているので黙っておく。


「六原さんも来ないのかい」

「いや」


 時間を見れば天野達が来るまで時間はまだあった。


「もう少し寝ておくとするよ」

「そう。確かにクマがひどいからゆっくりして休んだ方がいいかもしれないね」

「そうしますわぁ」


 自分カフェオレを飲み干し、空になった紙コップを側に置いてあった屑かごに入れた。


「じゃあ、いってらっしゃい」


 月島を見送った後、六原はごろりと座布団の上で横になる。途端に眠気が押し寄せ、あらがう事もなく六原は身を任せる事にした。



*魔女・月島のおはなし*


――さて、よく考えれば待ち合わせなどもしていなかったね。


 六原に背を押され、離れ屋敷から出たはいい物の月島は少女が、武内カグラが何処にいるのか知らなかった。


――前の場所で良いのかな


 探そうにも候補が一つぐらいしかなかったので月島は前回カグラと会った庭に出る。 


 屋敷には入らず、正面の門を通り過ぎ角を曲がると視界には昨日と変わらず趣のある庭園と、縁側に少女が一人腰掛けていた。

 その両手には折りたたまれた正方形の紙があり、隻眼の少女は、カグラは真剣な表情で紙を折り畳んでいる。


 月島はカグラの元に近づいたが気付く様子もないので声を掛けた。


「やぁ、カグラ」

「ひゃぁぁぁあああ」


 いきなり声を掛けられ、途端に肩をビクリとさせてカグラは驚く。

 小動物を連想させる様子に、かわいいね。と思いながら月島は落ち着くようにカグラに言った。

 

 カグラは月島の姿を確認すると一度瞬きしながら不思議そうな声を上げた。


「え、え。あの、月島さん」


 オドオドしながら月島を見上げるカグラに月島は気軽に声を掛けた。


「遊びに来たよ」

「は、はい」


 笑顔で返事をカグラはする。そして、腰をどかし開いた縁側のスペース、カグラの隣に月島は腰かけた。


「ところで何をしているのだい」

「えっと、折り紙ですけど」


 そう言いながら、カグラは端に寄せていた紙でできた物を見せた。だが、月島の目にはそれは立体的な作り物以外良く分からなかった。


「これは何だい?」

「分からないですか」

「すまないけど、キコクシジョでね」


 何か分からない事があったら訪ねる時にこう答えておくように六原からアドバイスされていた事を思い出して、月島はとっさに言う。


――しかし、キコクシジョとは何て意味なのだろうね。


「へぇ、そうなのですか。すごいですね」


 六原から言われた言葉で納得してくれたようで何故か尊敬のまなざしを月島は浴びせられた。


「え~と、これはですね。鶴という鳥の形を作ったものなんですよ」

「キミがこれを?この一枚の紙で作ったのかい」

「は、はい。一応」

「ソレは凄い、どうやるのだい」

「えっと折りヅルの折り方で良かったでしょうか」

「嗚呼、頼むよ」


――さて、私にできるのかな。


 折り紙を一枚月島は受け取る。折り目のない綺麗な青色の紙であった。月島はなにか仕掛けがあるのかと思い裏返して見たりしたが特に何の変哲もない紙であった。


「じゃ、じゃあ、私と同じように折ってくださいね」

「まかせたまえ」


 注意点としてズレのないようにすることなどを聞きながら月島はカグラの説明の元折り紙を始めた。

 

 初めはこんな形で先ほどみたような形が出来るのかと思っていたが折っていくにつれて正方形であった紙は形を変えていく。

 

「後は膨らませて完成です」

「なるほどね」


 最後に息を吹き込み鶴の胴体部分を膨らませた時にはいつの間にか先ほど見た鶴と同じように月島の折り紙も出来あがっていた。


「月島さん。手先が器用ですね」

「そうかな」


 突然ほめられ、表情こそ変わらないものの照れ隠しに月島は頬を少し掻いた。

 後は仕上げに羽の部分を伸ばしていると背後の障子が開く音がし、二人は振り返る。


 開かれた扉からは着物を着た恰幅のいい中年の女性がおりその両手には丸いお盆、上には湯気を立つお茶と茶菓子の入った皿が置かれていた。


「お茶をお持ちいたしました」


 畏まったように頭を下げ、二人の間に正座すると持っていたお盆から湯呑と茶菓子の入った皿、そしてお絞りを置く。


「ありがとう」

「いえ、ごゆっくりしていってくださいね」


 親しみを持てるような笑みを浮かべた後、女性は立ち上がる。


「ありがとう、弥生さん」

「お嬢様も良かったですね。では、私はこれで……」


 もう一度頭を下げ、弥生と呼ばれた着物の女性は頭を下げ再び障子の中へ消えてい行った。


「せっかくお茶を淹れてくれたんだ。一息つこうか」

「そうですね」


 二人は折り紙を一度脇に外し、側に置かれた湯呑を両手で覆うように持った。


――あれ。


 ずずずとお茶をすする、口に読特に渋みを感じながらふと疑問が浮かぶ。


――どうして、私がここに来た事を知っているのかな。


 外から来た筈で、ここに来るまでの間誰とも会っていない筈であった。なのに、どうして月島がカグラと一緒にいる事を知って湯呑を持ってきたのか。


――ふむ、あまり深く考えない方がいいかな。


 元々家政婦の様な先ほどの女性の物であったか、折り紙を折っている間偶然先ほどの弥生と呼ばれていた女性が二人を見かけたのか。色々と答えが浮かぶが答えを見つけた所で別にどうでもいいかと思ったので月島は深く考えるのをやめておく事にした。


「ふぅ…」


 庭を見ながらお茶をすする。

 六原さんといい何だか貰ってばっかりだなと思いながらも、皿の上に置かれた小さな饅頭を食べながら月島はこの状況を楽しんでした。


「落ち着くねぇ」

「それは良かったです」


 カグラは嬉しそうに声を弾ませた。


――うん、悪くないよね。


 昔の事を思い出しかけたが、空気を読めと思いながら、深く思い出さないでおいた。


――けれど、こういうのは初めてなんだよね。


 今まで学園に入っていた間でも遊びの誘いなどは月島にもあったのだが、追われている身である為にこのように同年代の同性と遊ぶ機会など月島にとっては無いに等しかった。


「そういえば、月島さんは学生なのですよね」

「ああ、そうだよ」


 唐突に振られた話題に月島は答えた。


「あの、学園生活ってどんなものなのでしょうか?」

「う~ん、そうだね」


 覗き込むような視線に真面目に返さないと思い。改めて自分の学生生活を振り返る。


「おお、いたいた」


 思いを馳せていると唐突に横から声が聞こえる。二人して振り返ると庭の角から少年が、天野 正雄がこちらに歩いてきた。

 寝グセか分からないがいつもの髪がハリネズミのようにツンツンしている少年が軽く片手を上げる。


「よぅ」

「あ、お、おはようございます」


 そっけない挨拶に月島は片手を振るだけで返したが、カグラは勢いよく立ちあがり頭を下げた。


「カグラ。そこまで畏まらなくてもいいのだよ」

「そうだね。もっと気楽でいいよ」

「え、はい。頑張ります」


 両手を握りしめるとカグラは意気込んだ。


――和むわぁ。


 とりあえず何気なしにカグラの頭をポンポンと撫でておく事にしておいた。


「え、え、なんですか」

「……」


 いきなり頭をなでられ少し照れるカグラであったが、嫌がっている素振りは特にはなかったのでそのまま頭を撫でながら月島は天野の方に顔を向けた。


「そういえば、天野さんはどうしてここにいるのだい。六原さんからの話だともう少し遅れてくると聞いていたのだけれど」

「いや、俺だけ予定より早く終わってね」

「そう」


――六原さんはまだ寝ているのだろうか。


 月島は六原の様子が気になり、離れに立ち寄ったのか聞こうとしたが月島とカグラの周囲を見渡しながら先に天野が問いかけた。


「折り紙でもやっていたのか、なつかしいな」

「一緒にやりますか」

「あいにくワタシは鶴しかおれないぞ」

「よし、じゃあ千羽鶴でも作ろうか」

「さすがにそんなに折れないと思いますけれど……」


 結局、気ままにそれぞれ折る事になり、置かれていたお絞りで手を拭いた後もう一度折り紙に取り掛かった。





「そういえば、二人とも学園に通っていますよね」


 兜、やっこ、風船の作り方を教えてもらった辺りでカグラは不意に訪ねる。


「そうだけど」

「そうだね」

「一体どんな所なのでしょうか、私そう言う物に疎くて……」


 不思議そうな顔を天野はしたが、元々違う世界から来た月島には何となく彼女が言っている意味が理解できた。


「カグラは学校には行っていないのかい」

「はい。勉学は家庭教師がいますので……」

「そうだったか」


 何と反応していいのか分からずに天野は頭を掻いた。


「学園ね。俺として言えるのは皆で勉強や部活とかしながら、笑ったり楽しんだり

する所かな」

「そうなのですか。」

「まぁ、大体そんなところかな」


――まぁ、私も学校という所に通い始めてまだ一年なのは黙っておくことにしようかな。


 うれしそうな反応をするカグラの顔に水を差すわけにもいかなかった。

 カグラは二人向かって再度問いかける。


「じゃあ、告白スポットのような伝説の木とか、学校の怪談や暗躍する裏生徒会みたいなものもあるのですか」

「いや、それはさすがに……」


 苦笑いを浮かべ天野は否定しようとした。


「……」

「アレ…月島さん?」


 だが、何故か隣の月島は顔をあさっての方向を向いていた。


「……いや、ないに決まっているじゃないか」


――さすがに六原さんからその手の話を聞かされているなんて言えないよね。


 六原曰く実は全部あるらしいが生憎そんな非現実的な事に彼らを関わらせるのも気負いするので、月島は知らぬ存ぜぬを通した。


「そうですか。残念です」


 表情を上手く隠しカグラは騙されてくれたが、天野には怪しまれているようであった。


「いいけどね」


 だが、聞いても無駄だと思ったのかこれ以上深く聞いてこようとはしなかった。


――なんとかごまかせたかな。


 側にいるカグラを見ると何故か遠い眼をして空を見上げていた。


「……私も行ってみたいです」


 ポツリと口にした言葉であった。重みのあるような言葉に月島は何と声を掛けていいかためらってしまう。

 しかし、対照的に天野は笑みを浮かべ言葉を口にした。


「じゃあ、この件が終わったら一緒に行こうか」

「…え」

「といっても俺にできるってことは見学しに案内をしてあげることぐらいだけどさ」


 カグラは天野の方に振り返る。カグラは両手で口を覆い驚いたしぐさをした後、ゆっくりと嬉しそうに言った。


「じゃあ、約束ですよ。三人でいきましょう」

「ああ、約束だ」


――あれ、ワタシもかな?


 いつの間にか人数にはいっていた月島であったが文句もなく、むしろ自然と人数に入れられてうれしかった。


「嗚呼そうだね、いいじゃないか」


 言った瞬間、背後の障子が勢い良く開かれた。


「じゃあ、オレも行くぞ」


 その元気な声に今まであった穏やかな空気が壊れたような音がした気がした。


――このタイミングはないよね。


 月島は聞き覚えのある声に、振り返る事なくため息を吐いた。


「もう、起きたのかい」

「嗚呼、お陰さまでね」


 両脇の二人は困ったような、苦笑いを浮かべている表情が視界に映りながら、月島は背後を振り返る。

 予想していた通りの人物がそこにはいた。しかし、彼は予想外の状態で立っていた。


「どうして、そんなにボロボロなのかな」


 何故かほほが叩かれたのか手形の赤い腫れ後があり、髪もボサボサになっており、服にはしわが無数に残り、服装は乱れていた。


 しかし、表情だけは口端をつり上げ元気な笑みを浮かべていた。


「いやいや、皆さん聞いてくださいよ。疲れを取る為、屋敷の人たちに布団を借りて、離れの薄暗い隣部屋で布団の中に入って休んでいたら、何やら中からもぞもぞと動くものが出てきたじゃないですか。何だろうなと思って掴んでみれば暖かいのでとりあえず抱きしめて、薄目で確認してみたら高峰さんじゃないですか。寝ぼけていたのでこれは夢だなと思っていたら、どうやら高峰さんはオレを天野だと勘違いしていたのだが、臭いが違う事に気がついていきなり叫びあげちゃったのですよ。そこからは悲鳴を聞いて部屋に入って来た結城さんや夜ヶ月スイレンがオレを痴漢だと思って叩きのめそうとしたのでとりあえず逃げてきたというわけですよ」


「すまんが、ちょっと意味が分からないぞ」

「まぁ、要するに誤解などがあって高峰さん達から追われて、今、逃げていると言った所かな」

「さすが月島。理解が早くて助かるよぉ」


――まぁ、言っている事が全部本当かは分からないけどね。


「えーと」


 隣に座るカグラは何と言っていいのか分からず混乱しているようだったので、あまり深く考えてはダメだよと言っておいた。


「まぁ、オレも暇なんで良かったら話に混ぜてくださいよ」


 そう言いながら、相手の返事を待たず、六原は月島の前に胡坐を掻いて座った。


「ところでどうして高峰は俺と勘違いしたからといって布団に入ってきたんだよ」

「それについてはオレは答える気はないねぇ。後で本人に聞いてみれば」

「そうするか」


 あっさりと天野は返事をした。


「ごめんやっぱりやめて。色々と面倒な事になると思うから本人が言うまで待ってあげてよ」


「まぁ、いいけど」


――何を言っているのだろうね。六原さんは…


 まったくと思いながら月島は短いため息をはいた。





それから特に変わった事もなく、側近の様な男性達がカグラを迎えに来るまで月島達は楽しく団欒した。





 そして、夜も特に変わった事がなく。誤解の解けた高峰と結城が主に警護につき一日が終わったのであった。


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