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幕間

彼は少女を救っていないと言った。

そんなことはない。

彼の言葉がなければ、彼女はきっとダメになった筈であった…

だが、彼は納得ができなかった。そして、あきらめていなかった。

 裏話

*脇役と罪人の物語*


 その日はいつも通りの朝であった。

 

 布団の上で目を覚まし、着替えを済ませ食卓に行く。

 既にテーブルの上には朝食の用意がされたおり、キッチンで見慣れた薄手の着物を着た妻が「おはようございます」とあいさつを交わす。

 

 そして、二人で朝食を食べながら取り留めもない会話をする。

 食べ終わり、下げた食器を洗っている妻に声を掛けた。


「少し出かけてくる」


「どちらに?」


「……お前の友人が私に用があるそうだ」


 振り向く妻になるべく要件が悟られないように私は重要な事を省いて答えた。私の事を信頼している妻は深く追求しなかった。


「そうですか。お昼はどうなさいますか」


「大丈夫だよ。すぐに戻るから」


 恐らく、ただの話だけなら、少なくともこの時間なら昼食までには戻る事が出来る。


「じゃあ、行って来るよ」


「はい、いってらっしゃい」


 私は妻に背を玄関に向かった。

 靴を履き、玄関の扉をガラガラと開けると背後から小走りにこちらに駆けてくる妻の足音が聞こえた。

 思わず振り向くと急いでエプロンを外し、浴衣の様な着物姿の妻は玄関口に立っていた



「帰ってきてくださいね」



「ああ」


 恐らく昼までには帰ってきて欲しいとのことだろうな、私は頭の中で深く考えないようにして家を出て行った。


「うぃーす」


 目的の人物はスグに見つかった。玄関を出ると待ち構えていたように少年は立っていた。驚く事はなかった、それ以上の事で以前驚かされた身であるので、別に彼が家の前にいてもおかしくないと納得できた。

 冷静かもしれないが、これでも少し驚いているのだ。少年の姿に私はすこし目を細める。


「その怪我、大丈夫ですか」


「嗚呼、大丈夫、大丈夫」


 言葉とは裏腹に少年の姿はあまりにも痛々しく感じさせられていた。

服の隙間からは包帯が至る所巻きつけられ、頬に張られたシップからは青く晴れたあざがはみ出て見える。にも関わらず何でもない事のように少年はへらへらと笑いながら私に語りかけてくる。


「ここじゃあ、人目につくから……」


「ええ、近くに公園があります。この時間なら人目はないでしょう」


 彼を通り過ぎ、案内する為に先を歩き始めた私に彼は質問を投げる。


「ところでさ。えーと、何て呼べばいいのかな」


 どうやら向こうは私の名前をどちらの世界の名前で呼んでいいか困っているみたいであった。


 一応一度は自己紹介しているが私は改めて眼鏡の縁を抑えると淡々と答えた。


「針沼で良いですよ。六原君」





――はい。みんな大好きネタばらしの時間ですよぉ。


「いやぁ、まさか、針沼さんも姉側に通じていたなんてねぇ」


 案内された公園は針沼の言うとおり周囲には誰もいなかった。ベンチに座る六原は正面に立っている針沼に話し始めた。

 話しながらも六原は針沼を眺め、疑問を浮かべる。


――今日は仕事が休みって聞いていたけどねぇ…


 目の前にいる針沼は休日にもかかわらず何故かスーツ姿であった。


――何、そういうキャラ付けなのかなぁ


「で、本当のところはどうなんですか」


 黙り込んでいる針沼に六原は煽りを入れる。

 意外と粘るのかと思っていたがあっさりと針沼は観念したようにゆっくりと息を吐き出した。


「いつから私が本気で姫を連れて行かないと気付いていたのですかね」


「えっと、いつっていうのがぁ」


 病院での姉との会話を思い出す。おそらくあれが決め手になった。

 答えにくそうに頬を掻くと六原は苦笑いを浮かべた。


「正直言いますと今回の件が終わって病院で入院している時かな」


 時間もあり、やる事も特に見つからない六原はベッドの上で姉との会話と今回の騒動をぼんやりと振り返りながら、言葉をつなげた。


「何て言うか、出来すぎじゃないか。と思ったのですよ。だってさ、現状をこれからどうしようかなんて悩んでいる所に、都合良く敵が現れ現状を破壊して、後は敵を倒せば万事解決なんていう如何にも何処か小説じみた話、都合良すぎるでしょう」


――姉じゃないんだから。脇役みたいな人生をさんざん送っているオレだから、あり得ないって疑うじゃないかよ。


「だからさ。ワ―さんの件も考えてみるとこれは一部じゃなくて、全部姉が作り出した舞台じゃないのかと思ったんだよ。ゲーム。そう最近のRPGみたいにクリア出来る前提で作られたゲームみたいなものだ」


――だから、ワ―さんだけではなく針沼もと思った。


 相手を知っているから、姉は彼らを倒せる武器を用意し、素晴らしいタイミングで拘束されていた六原を助けに来られたのであった。


――つーか、落ち着いて考えるととても大がかりなオレと月島へのドッキリ大作戦じゃないか。


 月島の顔が思い浮かぶ。彼女にはこの事は秘密にしておかなければいけないと改めて六原は決意しながら、針沼に語り続ける。


「まぁ、手加減してくれたお陰で無事に一件落着したけどね」


「……やれやれ、ばれてましたか」


 口端を吊り上げニヤリと笑みを針沼は浮かべる。


――とても先ほど自分の妻に対して優しい頬笑みを浮かべていた人物とは思えませんよねぇ。


「しかし、手は抜いていましたが、キミの力は予想外でしたよ。何ですかあの理不尽な力は……」


 六原は少し目を泳ぎながらあいまいに答える。


「嗚呼。それは企業秘密なんで、教えられないかなぁ」


 実際、世界観が全く違う物であるので安易に教える訳にもいかず六原は言葉を濁すしかなかった。

 その様子を針沼は観察すると、諦めたように小さく息を吐いた。


「いいですけどね。本気でしたらこちらが勝っていましたから」


――ホントに手加減していたんですかね。


 ふと疑問を感じたが、恐らくもう二度と戦う相手ではないので気にしなくてもいいだろう。オレが勝った事には違いないとポジティブに六原は思っておく事にしておいた。

 そして、六原の予想では恐らくであるが針沼として月島を捕まえたまま逃げる事も、あえて手加減したようにみせて後で六原達に協力していた様に見せる事もどちらでも出来るように達振舞っていたのだろうと思っていた。しかし、聞いたところで本当の事は聞けないのだろうと思ったのでやめておくことにした。


「しかし、予想外といえば最初に放った氷の槍をまさか避けずにもろに刺さるなんて驚きましたよ」


「ははは、まぁ、少し油断させてやろうかな。なんて思っていたんですよ」


 笑いながら六原はやり過ごした。唯の慢心なんて言える訳がなかった。


「まぁ、いいですけどね」


 何か、言いたい事があるのだろうが針沼はあえて詳しく聞くのが面倒だと思ったのだろうか会話を一方的に切り捨てた。

 しばらく、朝の雀の鳴き声だけが周囲になり響く中で、六原は気合を入れた。


――さて、じゃあやろうか。


「そうですか。それで……」


 ベンチから六原は立ち上がる。

 突然の行動に少し驚く針沼の顔を見つめた後、六原は黙って頭を下げた。


「今回は殴ってすいませでした」


「……え?」


 突然の謝罪。

 しばらくポカンと口を開けて針沼は驚き、開いた糸目をさらに細める。


「何故、謝るのですか。元々、私達が仕掛けてきたのですよ」


「それでも、手加減した相手でも理不尽に、一方的にボコボコにした事は悪い事だと思っているので」


 言いながら六原は頭を上げる事はしなかった。


――正直、殴るのは痛いし、罪悪感でいがキリキリするんですよ。


 針沼は気まずそうに顔を伏せ、眼鏡の淵を指で押さえる。


「別に気にしていませんから、それを言えば散々魔法で攻撃した私たちにも非があります。ですので、頭を上げてください」


 そう言った所でようやくゆっくりと六原は顔を上げた。謝罪を許してもらったからなのか少し心の重たさが軽くなった気がする。

広がった視界の目の前でじっと針沼は六原の体を見ながらポツリと呟いた。


「……もしかして、その怪我は先ほどのように謝った際につけられたものなのか」


「これですか」


 言いながら、六原は頬に張ったシップを指さす。


――まいったな。ヤッパリ見た目通り鋭い人ですね。


「まぁ、そうですね」


 どうにかして偽りたいと思ったが、彼の前では無駄だろうという結論が早くも出たので正直に話す事にした。


――しかし、これは信じてもらえるのかなぁ。


 無理かなぁと思いながら怪我をした経緯を語る。


「殴った人の中に女性がいまして、謝りに行ったらちょうど彼氏と喧嘩していたらしく、仲直りさせた後に、彼女を殴った事で彼氏に殴られ、結果彼女をこの世界に引き留めたことでお礼を言われたんですよ」


「は?」



「後、謝る前にトドメをさしにきたと勘違いしたらしく何回か問答無用で襲われまして」


 怪我の理由を言い終えると、公園に静寂が包んだ。

 針沼はこめかみを指で押さえた。


「その、なんです。私の方からキミが襲われないように言っておきますよ。」


――おお、つっこまなかったかぁ。意外といい人なのかなぁ。


 ありがとうございますと礼を言う。ひとまずこれで生傷が増える事がなくなったと少し安心した。


「それにしても、驚きましたよ」


「嗚呼、襲われた理由ですかね」


「いえ、そちらもですが、そうではなくて」


 正面を六原の顔をしっかりと見ながら針沼は言う。


「貴方が妻の友人だとは知りませんでしたよ」


――嗚呼、そのことか。


「別に深く考えないでくださいよ。貴方の奥さんは何にも巻き込んでも巻きこまれてもいませんから……」


 しかし、今回月島達の世界に関する情報源となっている人物のひとりであった事は黙っておいた。


――向こうは気付いているかもしれないけどねぇ。


 針沼の妻、百代とは六原は以前から知り合いであり、友人でもあった。


 だが、計画的に彼女と知り合ったわけではなった偶然である、約一年前、入学して間もない六原の頃、近くの公園でボーとベンチに座る和服の女性がいた。

 美女だ~。とテンションを上げながら話しかけてみると、女性は考え事をしていたら道に迷ってしまった、そして、この街に来たのは最近の出来事であると聞いた。


 これは親近感が持てて、危うく惚れそうになるよね。と六原は思いながら目的の場所まで携帯電話などもろくに使えない女性の代わりにケータイを使い道案内をして上げる事にした。そして、残念なことに彼女には素敵な彼氏がいるとのことであった。


 畜生。と嘆きそうになるが彼女に罪はないので素直に諦める事にした。それから、話していく内にどうやら彼女は悩み事をしていて道に迷ったらしい。その内容というのが彼氏の事であったのだ。

 彼は遠い世界から来た人でいずれ帰るかもしれない。そんな彼と一緒にいるのがいけない事なのでしょうか。彼女は尋ねた。


 普通なら外国の方なのかなと思うかもしれないが、六原はなるほど異世界の人ですかぁ。とあっさり、彼女の彼氏の存在を言い当てることができた。そこから、もしかすれば彼氏を助けてヒーローになれるかもしれないと思った六原は彼女に「もし理不尽に別れそうになったら多少ですが力になりましょうか」と提案した後、彼女に色々と前向きに考えるような助言をすることにした。


 そして、時折会って話をしていく内にいつしか彼女の茶飲み友達のような間柄となり先月結婚した旨を素直に祝福する仲となっていた。


「しかし、めちゃくちゃ良い奥さんですよねぇ。おまけに針沼さんの事好きすぎでしょう」


「そうですかな」


「そりゃ、奥さんの誕生日に針沼さんが贈ったペアルックのセーターを着てくれるぐらいですからねぇ」


「う、うるさい」


 アイツは何を話しているんだ…とぶつぶつ言いながら顔を顔を真っ赤にしていた。なんとなくだが「あの人、照れ屋で可愛いんです」と言っていた百代さんの意味が少し理解できた気がした。 


「ま、まぁ、私も妻からキミの事は色々と聞いていますよ」


「ほぉ」


「もっとも、キミの名前と正体を知ったのは先ほどですがね」


 わざとらしく針沼は咳払いをする。



「キミ、月島さんにデートの誘いを振られたそうだね」



「……ちょっと待て!!」


――オレの話なんて事は百代さんに言ってないぞ!!


「いくらキミが友達の話なんだけどとごまかしながらアレに相談したところで、アレはキミの事だと看破していたよ」


「バレていた、だと」


――おかしいなぁ。完璧なポーカーフェイスと思ったけど。


「……一応気になったのですが、まだ諦めずに誘っているのですか」


「……ええ、はい」


 目をそむけ、六原は苦々しく言う。


「次で五回目のチャレンジですよ」


 何故か重々しい空気が周囲に漂った気がした。


「……その、何でしょうかね」


「いや、違うんです。オレが毎回タイミングが悪いだけなんですよ。後、ちょっと向こうもあって間もない異性と遊ぶのを少し戸惑っているだけですから」


 捲し立てる六原に針沼は頬を引き攣らせて応援するしかなかった。


「そう、ですか。頑張ってください」


「……ありがとよ」


 やけくそのように言った六原に針沼は小さく言った。


「まぁ、姫が、いえ、黒羽が元気そうで良かったですがね」


「……」


――まぁ、そうだねぇ。


 何故、捕らえようとしていた対象の身を案じられるのか六原は何となく経験上予想はついていたが、あえて何も聞こえていないふりをした。


――何と声を掛けようが彼らが月島達をさらった事実に変わりはないのだ。


 つい言葉を漏らしてしまったのか、六原は自分が何を言ったのか気付き、目を伏せて小さく頭を下げた。


「すまない。先ほどの言葉は聞かなかった事にして下さい」


「嗚呼、そうですねぇ」


 閑話休題する為に、六原は話題を変える。


「そういえば、会社はどうなったのですかね?潰れたのかな」


「まぁ、そうなりますね。しかし……」


 そう言いながら、針沼はいつも持ち歩いているのか、自然な動作でスーツの胸ポケットから名刺を取り出し六原に渡した。

 手渡された名刺をベンチに座りながら六原は声を出して読む。


「キッズマジカル 代表取締役社長 針沼 麗二かぁ。新しく会社つくっているじゃないですか」


――そんなにホイホイ簡単に会社ってできるものじゃないと思うけどね。


 たぶん、今まで集めていた資金を使ったのだと予想した。


「一体どんな会社で?」


「子供たちに夢と希望の詰まった宝物を与える仕事ですね」


「なるほど、おもちゃ屋ですか」


――針沼さんがおもちゃ屋かぁ、似合わないねぇ。


「まぁ、元々、レギオンの上層部から目をつけられていたので畳むつもりであったのですけどね、だから、すんなりと立ちあがりましたよ」


 仕事内容は子供用おもちゃの開発する会社ということらしい。いかにも自信げに針沼は自慢するように語る。


「それで、これからどうする気ですかね」


「これからは残った仲間達とこちらの世界で生きていくつもりですよ」


 すんなりと針沼はレギオンから縁を切る事を断言した。


「あれ、もっと、未練があるのかと思いましたけど…」


「それはキミのお姉さんが私の姉を救いだして、治療をしてくれたのでもう無くなりましたよ」


「嗚呼、ソレは良かった」


 針沼の姉。たった一人の肉親。

 向こうの世界では治療の見込みがなく植物状態であった女性である。その女性の介護と治療の場所を提供してくれたのがレギオンであり、それが針沼がレギオンに従っていた理由であった。

 だから、六原の姉は針沼に彼女を治療する事を条件にレギオンを離反してくれるように提案してきたのであった。

 

 しかし、姉が辰野達の手伝いもあった為、しばらく暇がなく。結果として、六原が月島を助け出しに行った後に救いだしに行ったとのことであった。


――先に救いだしてくれれば針沼さんがこんな敵であり味方でもあるみたいな面倒な立ち位置にならなかったんですけどねぇ。


「それで、これからはどうする気です」


「残ってくれた仲間達と主にこちらで生きていくつもりですよ。レギオンは追っ手も出す余裕もないようですからね。一体あなたの姉は何なのですかね」


 それはたった一人でレギオンを壊滅に追いやった事を差していた。


「まぁ、職業がヒーローって言っていますからねぇ」


 苦笑いしながら六原は答える。針沼も小さく鼻で笑った。

 そして、眼鏡の淵を指で支え治すと針沼は鋭い目つきで六原に顔を向ける。


「それでキミは、本当は何をしに来たのですか」


「…えーと」


――やっぱり、ばれていますよねぇ。


 頭を掻きながら六原は今回針沼の会いに来た本当の理由を口にする。


「一応、聞きたいけどさ。もう、レギオンには興味がないの、かなぁ」


 緊張しているのか目も合わせずにしどろもどろで六原は話し始める。


「何を緊張しているのですかね。気持ち悪いですよ」


「キモッ!!いや、そう言うのは結構傷つくからやめてくださいよ」


「それは失礼」


――全然、反省してないみたいですけどねぇ。まぁ、いいけどさぁ。


「そうですね」


「じゃあ、協力してくれ…」


 言いながら座る六原は立っている針沼を見上げ、彼に手を差し伸べた。

 針沼の反応は小さく片眉を吊り上げただけであった。


「色々聞きたい事がありますが。まず、何故、私に……」


「戦力がいるからね」


 受け取ってもらえなかった手を残念そうに下ろし、六原は語りだす。


「今回の茶番で改めて知ったね。オレが基本的に無力で誰かの力がないと救う事ができないって。まぁ、まとめるなら…」


 悔しそうに口端を歪める。


「どうやら、オレは孤独のヒーローって奴にはなれないらしい」


「それが普通なのですよ」


「けど、普通ならヒーローにはなれないのですよねぇ」


 六原は救えなかった人を思い出した。その中に月島の姿が思い浮かんだ。結果として彼女を無効に行かせなかったが、自身の犯した罪はしっかりと彼女は背負っているままであるからだ。

 

 実際には彼女を救った事にはならなかったと六原思っている。

 だが、彼女を繋ぎ止めたのは事実である。チャンスはあるのだ。


――もう、失う気はない…


「じゃあ、どうするか。仲間が、戦力がいる。って事だろう」


「極論ですよ」


「けど、事実だ。だから、仲間を探しているんだ。前から、協力的なヤツは何人かいたが、今回からはキチンとした仲間として、集団として活動していこうと思うからねぇ。それなりに強く、どの組織や、違うファンジ―の物語に深く関わっていないようなやつらが欲しいのですよ」


「つまり、私達の元部隊を仲間にしたいと……」


「話が早くて助かりますよ」


「キミは話が長いですがね」


 針沼は小さく溜息をついた。


「前は敵でしたよ」


「別に気にしませんよ」


 六原はヘラヘラと笑う。


「悪役が倒された後に仲間になるのは好きな展開ですからねぇ」


「酷い理由ですね」


 人通りの少ない公園に二人の乾いた笑い声が響く。

 そして、頼もしそうだが、中身は実力もないただの少年は顔を上げる。


「だから、仲間になってくれないか」


 もう一度正面の相手に手を伸ばす。

 針沼は少しだけ考えるしぐさをした後、


「本当にヒーローのできそこないみたいな人ですね」


 言いながら、のばされた手をしっかりと握り返したのであった。









「ちなみに、組織の名前は何ですか」


「最近作ったのですが、まだ決めてないんだよねぇ。六原団とか、ヒーロークラブとかがいいかなぁ」


「却下です」


「何で!!」


「まぁ、いずれきちんと決めた方がいいですよ」


「そうだよねぇ。だって、オレ達の戦いはこれからなんだ!!」


「……そのセリフで台無しです」

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