第五話 シヨンの龍
穂月視点です
俺たちが思ったよりもシヨンは荒れていた。
俺たちが移動したのはシヨン全体が見渡せる高台だった。
魔城のある場所よりは暖かい風が吹いている。
家々は炎によって壊され瓦礫の山になっていた。
人々の叫び声が響く。
災害は大型魔物が現れたことだったらしい。
魔物は魔族と違って理性が存在しない。
人や魔族を襲い喰らっていく。
「ひどいな……」
曇った空を覆うほど大きな龍が1匹、暴れている。
赤い龍で炎を口から吐いている。
「まず、モネードは人と魔族の治療を。ってか、皆得意技は?」
モネードは知ってるが、他はほとんど知らない事に気づいた。
「俺は氷魔術。相手を凍らせて動けなくする……といってもあの龍相手では手足と尾が限界だが」
ギスターはイメージ通り。
「私は炎ね。とは言ってもあの龍とは相性が悪すぎるわ」
レルハさんの炎は確かに対炎には向かない。
「オレは雷、数秒なら龍を麻痺させられるよっ」
それは使えそうな気がする。
「……俺は基本的には光魔法なんだけど……熾音は?」
「闇」
一言。そっか、魔王だしな。
闇って、確かマナを奪い取れるんだよな。
あと、精神干渉、幻術。
「熾音の頭ん中って、この世界の情報がたくさんのあるんだろ?どう戦うのが一番いい?」
勉強しなくても歴史が頭に詰まってるんだからな。
「モネードが人と魔族の治療をして。その間、レルハさんは避難させて。炎の結界編めば大抵の炎は入ってこないから。」
「ちょ、なんで俺だけ呼び捨て!?」
熾音が淡々というと、モネードが慌てたように言う。熾音は正しいと思うんだが。
「いいから、行けよ」
うわ、ギスターに睨まれてるし。
モネードとレルハさんは人と魔族の方へ向かった。
「レオが雷で龍を麻痺させたら、ギスターは氷で手足を拘束。その隙に私と穂月で止めを刺すの」
「了解、止めを刺すって、心臓を刺すか、首を切ればいいんだよな?」
聞くと熾音が振り向いた。
紫色のドレスと結われた黒髪が本当に綺麗で……出来れば戦わせたくないんだけどな。
「そう……レオ」
熾音が合図して、レオが雷を放った。
雷なのになぜかオレンジの光が龍へと向かう。
光が龍を包むと龍の動きが止まった。
龍の手足が凍る。
「熾音、龍に幻覚を。俺が見えないように」
「うん」
言って、宙に浮く。
まさか、空を飛べるようになるとは思わなかったなー、最初は。
こんなチートにはもう慣れたけど。
そのまま龍に近づくが、龍がこちらに気づく様子はない。
熾音の幻術が効いてるようだ。
「覚悟っ!」
なんか言いたくなったから言って、「聖なる光」とかいう術をぶつける。これ、結構すごくてさ……ほら、うん。龍が木っ端微塵。
パラパラって龍のなれ果てのキラキラ光る粉が降っている。
「聖なる光」って、範囲魔法だから、かなり対象に近づかないと周りに被害がっていう難点があるんだけど。
ってか、今回も使う予定じゃなかったんだ。うっかり熾音のドレスを見たせいだ。恰好つけたくなったっていうかなんていうか……。
着地すると、熾音の黒髪が龍の粉で輝いていた。
「すごいな……何やったんだ?」
ギスターが聞いてくる。「聖なる光」とか厨2病な術名答えたくないんだけど……。答えなくていっか。
「秘密だよ」
「はぁっ?すごい気になるんだけど!まぁ、穂月が強いのはよくわかったからいーけど」
とか、見上げていうのはレオだ。
「穂月、ありがとう。戦わせないでくれて」
頭イイコって……。若干不純な動機についてはばれてないからいいのか?
「……いや、ってかなんか人!」
人と魔族が大勢がこっちに向かって来ていた。
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