成功の予感?
『おい、啓斗!!たくさん食べなきゃダメだろっ!!だからそんなに細いんだ!!』
『そうですよ、それに食べるときに本を読むのはいけませんよ。』
ムフフフフッ。ほんとムフフな状況なのです。あの図書館事件(後で啓斗に怒られたが、写真と動画を見せたところ興奮しながら許してくれた)から数日、啓斗は毎日あの重たそうな医学書を持ち歩き、愛読書にしている。本当に根は真面目だよね。その性格のおかげで副会長に気に入られたんだけど。だってあの副会長の目!!愛おしい者を見る目だよ!神楽君は啓斗の前に座っているのに啓斗を見てる!だいたい副会長が大人しく啓斗の隣に座っていること事態今までなかったことだしね。僕の作戦は見事成功したのである!!
「食事中に双眼鏡で人のテーブルをジロジロ見るな。」
「なぬっ!?この眼鏡風双眼鏡を見抜くだと…灰よ、腕を上げたな!!」
「バレバレだから。今時そんな牛乳瓶の底みたいな眼鏡かけてるヤツいない。」
「ハッハッハ、甘いな!神楽君がいるではないか!!」
「今時そんな笑い方するやつもなかなかいないとおもうぞ。」
ま、灰にバレたということは他の人にもバレる可能性があるということだから、この眼鏡は改良しないとだな。
よし、これで第一段階は突破したのだが次はどうしたものかな…。副会長は一人で放課後、家の病院を継ぐために勉強をしているという情報を知っていたからよかったものの、会長、会計はどうしたものかな。
え?書記?…もう手を打ってあるから!バッチリ、バッチリ〜。後は楽しく見学するだけ。それより問題なのは事あるごとに僕に声をかけてくる神楽君だ。ホントいい加減にしてほしいんだけど。今日だって僕の隣で独り言言ってんの。頭どうかしてるんじゃないかな?
昼休みも終わりに近づき、教室に戻ると体育祭が近くなったせいで周りがなんだか暑苦しくなったような気がする。僕らのクラスの色は赤。この色が更に暑苦しさを倍増させていると思う。ちなみにほまれのクラスは黄色ね。生徒会のクラスは赤。権力を使ったとしか思えない。でも、それでいいよ!グッジョブ!神楽君と同じ色が良かったんだろうね!しかも神楽君が新しい学食のメニューを増やして欲しいと言ったことから、優勝したところは新学食メニュー食べ放題特典がつくのだ!!これは萌える!違った、燃える!!いっつも使わないから変換ミスったよ。学食飽きてたから調度いい。
「雅!一緒に練習しようぜ!!」
「灰ー、売店行こう。」
雑音が聞こえたような気がしないでもないけど、雑音だからほっといてもいいでしょ。さっさと売店に行ってお菓子買いだめして、啓斗の様子を伺いに行かなくちゃ!!今頃ウフフな状況のはずなのだから!!勿論そう仕向けたのは僕だけど。
灰が席を立ったのを見て、僕も鞄を持ち教室を出ようとした。そう、出ようとしたんだけど邪魔されたの。もちろん神楽君に。呼び方宇宙人に戻すぞ!
「どこ行くんだよ!!」
「邪魔、どいて。」
美形ホイホイなのはいいけど、僕らを巻き込まないでほしい。
「何でそんなこと言うんだよ!!」
こっちから言わせると何で『!!』を一々付けないと喋れないわけ?うるさいんだけど。
「お前ら調子乗ってんじゃねーぞ。」
「そっ、そーだよ。返事くらいしてもいいだろ?」
生徒会がいないとクラスの中での信者である一匹狼と爽やか君も発言権があるらしい。そういうの見ると面白いなぁと思うけど、今は迷惑。僕は早く啓斗の状況を確認したいのー。
それに、借り物競争でいったい何を練習するわけ?やっぱり頭おかしいんじゃない?僕は足速いから走る練習もいらないの。じゃないと決定的な瞬間を見逃しちゃうかもしれないでしょ?
「早く行こうぜ!!」
人が行かないって雰囲気出してるの気づいてくれない?そういえば今さらだけど、君敬語キャラ目指してなかった?あ、断念したの。そうですか。別に全然いいけど、生徒会相手にタメ口とか萌えるし…って、腕をグイグイ引っ張んな!超痛いんですけど!啓斗、萌えは5分くらい置いといていいから帰ってこい!!
「雅に気安く触るな。」
腕の痛みがなくなったと思ったら目の前には見馴れた灰の背中。やばっ、今のは男前路線だよ!周りのかわいこちゃんたちもキュンキュンきてるよっ!…なんて本人に言ったらキレられそうだから言わないけど。
「何すんだよ!?あっ、わかった!!灰も一緒に行きたいんだろ!?しょうがないから一緒に行ってやるぞっ!!」
どこをどう間違ったらそうなるのか…。ホント周りで見てたらウハウハなんだけどなぁ。自分の位地が残念でたまらない。
「だって言ってることわからないし、伝わらないんだもん。」
上目遣いでうるうると爽やか君を見上げてみる。何故爽やか君かというと、単純に一番効果がありそうだから。
「絢の悪口言うなんてお前いい度胸じゃねーか!!」
ちょっと、狼君には話してないんだけど。でしゃばらないでよね。悪口ならこのクラスのほぼ全員が言ってるから。そっち相手しなよ。
「悪口じゃないよ。事実だよ。」
そう言って顔の前でピースサイン。……決まった、完璧!でも、狼君はお気に召さなかったみたい。隣で灰がため息をついたのがわかった。ため息ついたら幸せ減るって知らないのか!?
「お前っ、ふざけんな!!」
つかみ掛かってこようとした狼君をひょいと避ける。超意外そうに見られたけど、そんな驚くことじゃないよ?いっつも灰と生死をかけたコントをやってるからね!…勝ったことないけど。
そうか……僕勝ったことないじゃん。ということは灰が戦うべきじゃない?僕ってか弱いもんね。
「ハニー、後は任せた!君の魅力で彼らを魅了してくれたまえ!!」
さらばっ!と逃げ出そうとしたが、背後霊的なものに引き止められた。
「へー、ダーリンは浮気を率先してやらせるんだ?」
…狼君より危険な気がしてきた。どこで地雷を踏んだ?怖い怖い怖い!!僕がいったい何をした!?はっ!もしかして灰を置いて行こうとしてたのがばれたのか!?
「僕がそんなことするわけないじゃないか。…逃げろ!!」
それを合図に廊下にダッシュ!逃げるが勝ち!灰と追いかけっこなんて久しぶりだ。後ろを振り返ってみると、案外楽しそうについて来る灰の後ろに呆然としている三人が見えた。あーあ、今まで大人しい美少年を演じてたのに、これでクラスに本性がばれちゃったかもじゃん。別にいいけど。
よっしゃー、今からウォッチングタイムだ!!
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ほんとにほんとに遅れて
申し訳ないですm(_ _)m