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ゲッタウェイ

作者:
掲載日:2025/11/21

皆、街を離れようとする。街が憎いとか、恐いとか、或いは全然知らないとか、その時々で違う感想を言いながら。

街は、村だったりする。反対に世界だったりする。つまり平面だったり球面だったりする。でも人が集まって暮らしている点では変わらない。

皆、それから逃げようとして暮らしている。いつでも、隙を何処かに見付けようとする。

だから、ロケットを作ろうともした。それは、真しやかに嘯かれる様に、核物質を運ぶ為に創造されたんじゃないんだ。よしんば核を積んだとしても、自分を何処かに連れて行こうとしている点には変わりがない。

でも大抵の人は、ロケットが買えないから、ゲーム機を買うんだ。そこにはコントローラーの形状しか違いがないから、どっちでもいい。ソフトは『ゲッタウェイ』。どんなに違うパッケージに見えても、いずれ、これは車で街から逃げるだけのゲームなのだと、気付かざるを得ない。


とにもかくにも、皆、街から遠くへ逃げようと夢見てる。


それは何故かというと、彼らは街が正しいのを知っている。街が彼らに正しさを教えたからだ。彼らも街の正しさを作った一員だからだ。ひっくり返せない。そして、街の求める正しさに、いつしか応えられなくなった事に気付く。

だから皆、車で逃げたがる。大金を盗んで。山奥に。金なんか要らない所で、草っぱらに、愛する人と横になってうたた寝をする為に。或いは、車なんか要らない無人島に、自分と頭の中が同じ仲間だけで暮らす為に、車を盗む。海の上を車で走らなきゃ計画通りにいかない事は、決して話題にしないで。一生懸命にやれば報われる、あるいは誰かが喝采を送ってくれると思って。…でも、喝采は街だけが独占できる私有財なんだ。その事は、誰でも知ってるのに…皆、今日も車を盗む。正しく生きれない事を苦にして、正しくない方角に進路を取る。皆、今日も金を盗む。金が左右する世界に決別したくて、でも金が要る。いくら盗んでもまるで足りていなくて、また明日、続きをやろうと願って眠る。

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