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冒険者


「とりあえず、これからどうするか決めねぇとな」


俺の言葉に、隼人が深くうなずいた。


「二人はあの日、あれからどうなったんだ?」


「……ああ、それが──」


──


「なるほどな。気づいたらここにいたのか。俺と同じだな。てか異世界転生なんて本当にあるんだな。漫画の世界だけかと思ってたぜ!」


少し興奮気味に、隼人が言った。


俺たちの目標は、あの二人を探し出すこと。そのためには、この世界のことをもっと知る必要がある。


「とりあえず手当たり次第探してみよう」


そうして、俺たちは村の人たちの手伝いをしながら、この世界の情報を集め始めた。種族の関係、魔法の仕組み──すべてが初めてづくしだった。


誰かが街に行く時は必ず同行させてもらい、町並みや人々の様子を観察したりした。けれど、どの街にもそれらしい人物の気配はなかった。


「なあ怜央、あれ……」


隼人が指さしたのは、冒険者ギルドだった。


「冒険者って、いろんな場所を旅するんだろ? もしかしたら何か知ってるかもしれねえぞ」


「たしかに……でも、俺たちみたいな子どもに情報をくれるとは思えないな。それに似たようなやつなんてそこらじゅうにいるだろうからな。」


「うっ……それもそうか。でもさ、だったら──俺たちも冒険者になればいいんじゃね?」


「……は?」


「鍛えて強くなれば、自分たちでどこへでも行けるだろ。好きなだけ探せる!」


「でも、お前、村長の息子だろ? 勝手にそんなことしていいのか?」


「んー……まあ、“修行の一環”ってことでなんとかなるだろ!気合いだ!気合い」


あきれながらも、俺はその勢いに乗ることにした。


こうして、俺たちは冒険者を目指すことを決めた。


冒険者になれるのは、7歳の魔力測定の儀式を終えてから。まだ6歳の俺たちは登録ができなかったが、その分、今のうちに力をつけておこうということになった。


父に冒険者になりたいと相談すると、驚くどころか喜んで稽古をつけてくれた。隼人も無事、説得に成功したようだ。


剣の扱いから始まり、弓や斧、槍など様々な武器を試しながら、自分に合うものを探す。


「ガルフは絶対、大剣だな。性格にもぴったりだ」


「ほんと!?やったー!かっけぇ!」


父の言葉に、隼人のしっぽがブンブン揺れた。


「ギルは……短剣だな。正面から殴り合うタイプじゃないし、暗殺系の方が合ってるかもな」


──確かに。父の目は確かだ。一番しっくりきたのが、短剣だった。


「さあ、二人ともかかってこい!手加減はしねぇぞ!」


相手は父一人、しかも素手。


圧倒的ハンデだが、今の俺たちが勝てる可能性は……ほぼゼロに近い。

試しに接近してみたがさらりとかわされてしまった。


「はやっ……ガルフ、まず動け。気を引いてくれ」


俺が小声で言うと、隼人は「任せろ!」と叫んで突っ込んでいった。


──速い。


まだ技は拙いが、身体能力の高さはさすがウルフ族。速さで剣の未熟さを補っていた。


「おおっ? やるじゃねえか、ガルフ!」


父が満足そうに笑う。


──よく見ろ。隙はどこだ?どんな戦い方をしている?


父は圧倒的なパワータイプ。だが、体の大きさゆえに死角もある。


「……試してみるか」


隼人が前に出て気を引いたその瞬間──俺は後ろへと忍び寄った。


スピードは劣るが、隙はあった。短剣をすかさず振り下ろす。


狙いは──すね。いわゆる“弁慶の泣き所”だ。


「いってぇっ!」


父が悶絶しながら後退した。


──どんな戦士でも、あそこは痛い。



「君の息子、やるじゃないか」


「まさかあんな所を狙うとは……恐ろしいぞ、さすが俺の息子だな」


「ガルフも驚きだよ。まさかあんなに足が速くなってるとは」


「ギルもな。隠れるのが昔から得意だったけど、あれはもう才能の域だ。気配を自然に消してる。完全に隠密向きだな」


「でもさ……どうやったら、君みたいな熱血親父から、あんな子が生まれるんだろうな。変に冷静というか……」


「うーん……ま、気にすんな! いいじゃねぇか、結果オーライだ!」


「だな!あははは!」


──その会話をこっそり聞いていた怜央はなにか感ずかれるのではないかと内心焦っていた。


(……危なかった。バレたら面倒なことになりそうだしな。)


冷や汗をかきながら、親父たちの雑な性格に助けられたことを、心から感謝した。



数年後



あれからずっと鍛え続け、ついに俺たちは“冒険者”として進み始めた。


初めて冒険者ギルドに行ったとき、子供だと門前払いされるかと思ったが、受付嬢はあっさり手続きを進めてくれた。


「こちらにご記入をお願いします」


差し出された紙に目を落としながら、俺たちは同時に息をついた。


「……文字、勉強しといてよかったな」


「……ああ、マジで」


──文字の勉強を提案してくれたのは、ギルバートだった。


「強くなるのもいいけど、読み書きができなきゃ情報収集もできないよ。僕が教えてあげる」


前世の記憶もあって、読みはすぐ覚えられたが、書くのには苦戦した。文字の形が複雑で、慣れるのに時間がかかった。


「名前、どうする?ギルとガルフ、そのままでいいか?」


「うーん……あの、偽名って使えますか?」


「もちろん、大丈夫ですよ。本名を伏せたい方はたくさんいますから」


受付嬢の答えに、俺はうなずいた。


「じゃあ、俺は“レオ”にする」


「え、ある意味それ本名じゃん……じゃあ俺は“ハヤト”で!」


──名前を聞いて、誰かが思い出してくれるかもしれない。


そう思って、わざと“残した”。


「では、魔力測定に移ります。こちらの水晶に手をかざしてください」


まずはハヤト。水晶がオレンジ色に光る。


「土属性、ランクは……C! すごいですね、この年齢でこのランクは」


しっぽがブンブン揺れていた。嬉しさが隠しきれていない。


「次は、レオさん」


俺が手をかざすと、水晶は淡い緑色に光った。


「風属性ですね。ランクは……D。でも安心してください。冒険者の多くはここから始まりますから」


……慰められてる?


少しだけ情けなさを感じたが、暗殺系の立場から見れば、魔力量が低いのは感知されにくいからむしろ利点になる…………そう自分に言い聞かせながら、残りの登録を終えた。


「では、登録完了です。最初はEランクからですが、実績を積めばどんどん上がります。頑張ってくださいね!」


──こうして、俺たちは“冒険者”として、この世界に足を踏み出した。


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