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あの子との出会い


私があの子と初めて会ったのは、中学一年のときだった。


あれは、吹奏楽部の体験に行った日のこと。

周りの子たちは友達同士で話しながら、「入ろうかな、どうしようかな」なんて相談していて──

でも私は、一人だった。


黙々と部活の様子を見ていたけど、正直、寂しかった。

先輩の話もうまく頭に入らず、ただただ自分の未熟さに打ちのめされていた。


ふと、隣を見ると──

私と同じように、一人で静かに部活を見ている子がいた。

誰とも話さず、でも真剣な眼差しで、部活……いや、今思えば、「楽器」を見ていたのかもしれない。


結局私は、習い事が忙しくなって部活には入れなかった。

でも後から聞いた噂では、「入部してからわずか半年で、すべての楽器をマスターして退部した人がいた」らしい。


特徴を聞いて、すぐに思った。──あの時、隣にいた子だ。

その話を聞いたとき、私は「話してみたい」と思った。


─────


私は小さい頃から、ピアノを習っていた。

母がプロのピアニストで、自然と音楽の道を目指すようになった。


物心がつく前から、練習は生活の一部だった。

母がつけたプログラム通りに毎日練習して、コンクールに出て、評価を得る──そんな日々をずっと過ごしていた。


母は常に私に期待していた。

「あなたは必ずプロになれる」

そう言って、まるでそれが当然かのように道を敷いてくれた。


でも、私は次第にその期待の重さに押しつぶされそうになっていった。

息をするようにピアノを弾いてきたのに、いつしかそれは義務になっていた。

楽しいという感情はいつの間にか消えていた。


 

中学三年のはじめ。

そんな日々に疲れた私は、ある日ぽつりと、言ってしまった。


「やめたい」


その瞬間、目の前の母の顔が真っ赤に染まった。

今まで見たこともないほど険しい表情で、私を睨みつけた。


すぐに、言ったことを後悔した。

すぐに「ごめんなさい」と謝ったけど、母は聞く耳を持ってくれなかった。

私は怖くなって、自分の部屋へ逃げ込んだ。


次の日も、母と顔を合わせたくなくて、いつもより早く家を出て学校に向かった。

でも、どこにも逃げ場なんてなかった。

家に帰りたくはない。でも、ピアノが嫌いになったわけじゃなかった。


家に帰りたくない。

だから私は、なんとなく誰にも使われていない第二音楽室に足を運んでみた。


第二音楽室は、本校舎から少し離れた場所にあって、誰でも自由に楽器を触っていいところだった。

だけどほとんど使われておらず、人も滅多に来ない、静かな場所だった。


その静けさの中で、ピアノに触れてみた。

すると──


今まで感じたことのない、開放感があった。

心が軽くなる。楽しいって思えた。


それ以来、放課後になると、私は毎日そこに通ってピアノを弾いた。

自分を取り戻せる、唯一の時間だった。


──そして、それから一週間ほど経った日のこと。

いつも通り、誰もいないはずの音楽室でピアノを弾いていたら。


不意に、背後から声がした。


「すごく上手!ピアノ、好き?」

 

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