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ウルフ族


「ギル!今日も剣の稽古するぞ!」

「はーい」


俺は小さな村に人間として生まれた。

父、母、兄2人。

家族仲はよく、いつも支え合って生活していた。


──けど、昔から少しだけ違和感があった。


辺り一面に広がる緑。

様々な色の髪。

“魔法”というものの存在。


村のみんなからも「物覚えがいい」「大人びてる」とよく言われた。

まるで──俺が俺じゃないみたいに。


……でも、それは気のせいだと思っていた。

平和な日々。

幸せな家族。

不満なんて、何ひとつなかった。



 

「明日は何の日か覚えてるか?」

父がパンを頬張りながら言った。


「もちろん! 久しぶりだよな!」

「楽しみだな!」

兄たちが目を輝かせて言う。


「何があるの?」

俺の問いに、父が笑って答えた。


「ああ、ギルは知らないよな。明日は、近くの山に住んでるウルフ族が村に来る日だよ。来るのは本当に久しぶりなんだ。」


戦争が終わり、種族同士の争いはなくなった。

この村とウルフ族は、かつて戦った“戦友”として、今も交流を続けている。


「ギルバートに息子がいてな。ギルと同い年なんだ」

ギルバート──父の昔からの親友だ。


「ギルの名前は、あいつから取ったんだぞ」

そう言って笑う父。


「楽しみね。ご馳走たくさん作らなきゃ」

母も張り切っていた。


───


翌日


「おっーーー!ギルバート、久しぶりだな!」

「ガルグも元気そうじゃないか!」


ウルフ族の一行が村にやってきた。

毛並みの美しい彼らは、一見すると威圧的にも見えるが、表情は穏やかで優しい。


「おっ、この子がギルか。初めまして、俺はギルバート。よろしくな!」

がっしりした手で握手を求めてきたその人

──いや、ウルフは、父に似た温かさを持っていた。


「俺の息子を紹介しよう。おーい、ガルフ! こっち来い!」


──ガルフ。

父さんの“ガルグ”が由来らしい。

 

どんだけ仲がいいんだ。


「こいつがガルフ。仲良くしてやってくれよな」


そう言って前に出てきたウルフ族の少年。

年齢も、背丈も、俺と同じ。


──目が、合った。


その瞬間。


バチン、と空気が弾けた。

頭の奥、心の底に触れられたような、説明できない感覚。


(なんだ──これ……)


胸が痛い。

懐かしいような、切ないような、でも確かに“知っていた”何かが暴れ出す。


──鈴と出会ったあの日

 

──音楽を作ってたこと

 

──バンドを組んだときの喜び

 

──ステージの上、4人で響かせた“音”



 

あの音が──胸に戻ってくる。


遠くで、笑い声がした。

涙がこぼれたような気がした。

暖かい風が吹いた。

知らないはずの風景が、瞼の裏で光っていた。


思い出した─────

 

(──俺は……怜央だった)


「…………」

「…………」


沈黙の中、向こうが声を発した。


「な、なあ……怜央……だよな?」

 

「あ、ああ……お前は……隼人か……」


「久しぶりだな!!!」

「まさか、こんな形で再会するとはな」


次の瞬間、抱き合って笑った。

ぎこちないけど、心はもう昔に戻っていた。


「い、今頭がグワーッてなったんだけど!」

「ああ、お前もか!」


懐かしさと再会の喜びで、目頭が熱くなる。


そんな俺たちを見てあまり細かいことを気にしない父さん達は「知り合いだったのか?」と不思議そうに俺たちを眺めたあと自分たちの話に夢中になっていた。


「他の2人は? 鈴と明里は……」

「分からねえ。でも多分俺の村には居ねえと思う」


「…………じゃあどこにいるんだよーー!!!」

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