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実験ログ争奪戦2

 茜はまだ考えてた、なぜ朔望団はこの旅団本部を狙っていたのか、装甲車が正門を突き破り突っ込んで来た時には戒厳司令部に「旅団本部、朔望団強襲、至急応援求む」とは打電しているが、今のところ応答はない。

 大きな爆発と共にこちらの戦線は膠着状態に入った、銃声の量が減った、散発的なものになっている。

 それとは別に官公庁襲撃は立てこもり事件に発展し、首相官邸も激しい銃撃戦になっているようだった。そう言う観点で言えば、こちらは数十人対10名程度は小競り合いでしかないように思える。

 しかし、ここに何を求めて彼ら朔望団が来ているのか、それ次第では、盤面が変わってしまうんじゃないか?なぜいま、ここを襲うのか。我々を倒す?そんなわけない、でもじゃあ目的は何?茜の中では全くわからない問いだった。


 「茜ちゃん、堪忍な、ちょっとええかな」

 片膝をつき、右手でマナを送りつ続けているミカが言う、話しかけるということは、班長は、マナとの接続を切っているという事だ。戦闘が小康状態になったと言えど、どう考えても再接続のロスはこれ以上は避けた方がいい。これ以上手間を取らせるわけにはいかない。

 ここは意を決して班長と繋がるしかない。

ただなぁ、繋がると、全て見られるような気がするので気が引けるですよねぇ。

 内心から漏れる本音。そうも言ってられない。でもそうは言っても、できるか限りマナを、自分の心に留めて、あまり見られないようにしてから繋がるようにする。


 茜ちゃん、ちゃんとしてるやん。

  相変わらず軽口を仰る。

 隠し金庫っていうか保管庫なんだけど、なんか知らんもん入ってるねん、見てもらって良いかな。

 さっき班長什器寄せてたじゃないですか、何やってんですかもう。

  咀嚼して言い換える前の感情が漏れる、だから嫌なんだ。

 いや、堪忍な、万が一考えたら、ちょっとでも時間稼げる方が良いやんって

 はいはいわかりましたよ。もう。

  この人は変わらない、羨ましいな、裏表ないっていうのは。

 

 これ重たいんですよほんとにもう!

 ずいぶん荒っぽく机を寄せ、保管庫の入り口を開拓する。

 最近開けました?

 いや、開けてないよぉ

 伊織は?

 私が開けると思います!?もう!!

 

 いまの伊織に聞いたのは間違いだった、ミカも堪忍なぁとフォローする。


 じゃあ誰が?何を?小隊長クラスであればここの扉は開けることができる。入り口は巨大な金庫だが中は書棚と中型の金庫がある保管しているだけの部屋。要はここが保管で、真に厳重に保管すべきものはここの中の金庫に保管される。対人戦闘をしない我々に情報漏洩等のリスクも少なく、半ば雑多な荷物と個人情報置き場と化しているはずだった。

 奥の方になんかあるやろ、気配が違うやつ。ミカに促されて、マナによりフラグ立てさせられている書庫の奥に向かいたいが、先ほどの爆発で、膨大な書類が散乱し、なかなか辿り着くには時間がかかりそうだ。


 その時だった、茜の体が硬直する、手には握ったブレードの感覚、そしてその手応えは、硬い肉を切る感覚だった。

 伊織の感覚が飛んで来ている、そう理解する。どうやら両刀で敵を屠ったようだ、ついにそこまで来たか、はじめて人を手にかける感覚を疑似的に味わってしまった。

 伊織からの感覚の共有は無自覚に行われていると解釈する。彼女はわざとこんなことをする子じゃない。

 

 ミカの探知で大きな欠点があるとすれば、マナ無しの人間とは感覚が共有できないことにあるが、それには例外がある。

 何かしらの方法で、マナがその人に注がれた時だ。要は媒介となるマナが介入できたら感覚が共有できる。

 伊織はこの戦闘で、この部隊を指揮していた五十嵐と戦闘になったようで、彼を射るのではなく、伊織のブレードは彼の体を貫いたようだった。

 そして、マナを媒介として彼を知る、彼の本気とここに来た目的を。


 朔望団の五十嵐を討伐!実験ログだ!

 伊織が叫ぶ。

 奴ら、ここに実験ログがあるって思ってる!だからここに来た!

 

 おそらくあれが実験ログ。茜は崩れたファイルを押し除け倒れた書棚をくぐり、マナに導かれるようにその地点を目指す。


 しかし、ミカの声に止められる。


 アカン!行ったらアカン!茜ちゃん戻って来て!

 伊織ちゃんもはよ逃げて!


 爆発、保管庫の壁が吹き飛んだ。1階エントランスも同様だ。

 ミカの注意が逸れた瞬間だった。何者かが旅団本部に対して砲撃を行ったのだ。


 03、、、小隊、、、?

 ミカは愕然とする。首相官邸行った部隊の半分が戻って来ていた。

 正門付近の装甲車から放たれた榴弾は、保管庫外壁と、1階エントランスを捉えていた。

 救援のはず、だがしかし、この乱暴な砲撃はなんだ?


 二人とも大丈夫!?

 はい!

 えぇ、なんとか。


 相変わらずの霧雨の中、03小隊の部隊員達が整然と駆けてくる、そして情け容赦無く朔望団員を雨に濡れた小銃で撃っていく。

 乾いた銃声だけが響く、榴弾がバリケードを破壊し、朔望団員を炙り出す。旅団の歩哨たちには目もくれず、淡々と処理していく。転がる死体にも目もくれず、淡々と黙々と朔望団員を屠っていく。


 何よ、同士討ちとか言う話じゃない、なによこれ。

 最早、処分ですね、、、

 

 ミカは言葉を失っている。やはり、03小隊は別次元の行動原理で動いている、誰も面談ではそんな素振りすらなかった。

 

 難しいなぁ、人って難しいなぁ。

 

 マナの展開を止める、疲労感が押し寄せる。

 「班長!こちらにおられたのですね!03小隊!救援に参りました!」

 数時間前に顔を見た、03小隊副隊長が悪びれもせずに入ってきた。

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