表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/54

25.最高の女、登場!

「おはよ、西京」


「よ、おはよ!」


 朝の登校時間。たくさんの生徒が学校へ向かう通学路で真央の友人が声を掛ける。同じ図書委員。真央の隣で歩きながら尋ねる。


「今日は『魔王様』やらないの?」


「馬鹿。ずっとやってる訳ないだろ。必要な時に必要なだけやる。さすがに俺も疲れるからな」


 あまりちゃんと考えたことはなかったが四六時中『魔王様』をやっている訳にはいかない。友人が苦笑しながら尋ねる。



「まあ、そうだよな。それでどうなった? 藤原さんの件?」


 つまり約束した結を図書委員に誘うと言う話。真央が鼻を高くして答える。


「まあ、大丈夫かな。今日の放課後に図書室にやって来るよ」


「へえー、マジかよ。すげえな、西京」


 これは本音。怪しい厨二病オタクだが実行力はある。友人が腕を組みながら言う。



「となるとあと一人。一年で募集かけているけど全然来ないしな……」


 地味な図書委員。自ら進んでやる生徒など毎年ほとんどいない。だが真央にしてみれば正直どうでもいい話。結さえ図書委員になってくれればいいだけのこと。だが友人のその一言が彼に火をつけた。



「やっぱ魔王様でも()()かなー、あと一人連れてくるのは」


(!!)


 真央の魔王魂が燃え上がる。両手を胸の前で交差させ、指をピンと立てた状態で答える。



「無理? 馬鹿を申すでない。この最強にて最高の唯一無二の存在である『西京真央』に不可能などない!!」


(お、来た来た!!)


 友人がにっこり笑いながら設定に乗って来た真央を見つめる。真央は両足をガッと開き、横を歩いていた長い赤髪の女生徒を()()()()指さして言う。



「汝っ!! 汝を光栄ある図書委員に命ずる!! 放課後に図書室へとやって来るが良い!!!」


 赤髪の女子生徒、そして一緒に居た友人は唖然としてその変態厨二病の男を見つめた。





 西園寺さいおんじ美香みかはいわゆる才色兼備の女子生徒であった。

 上品な振る舞いに美しき赤髪。何より入学早々に『学校一』と称された美貌の持ち主。お嬢様性格も相まって一年ながら別格の扱い、取り巻きも従えるようになっていた。



「美香様、今日もお美しいですね!!」


 朝の登校時、美香の取り巻きがその美しさにうっとりしながら言う。美香が答える。


「おーほほほほっ!! 当然でございますわ。この西園寺美香、美しくなくてどうしてその名を名乗ることができましょう」


 成績優秀で美貌の持ち主。非の打ち所がない彼女はもう学校の誰もが知る有名な存在であった。周りの生徒達が美香を見つめる。羨望、憧れ、ため息。様々な感情の込められた視線が美香に向けられる。


「あの西野君も美香様の魅力にメロメロですしね!!」


 サッカー部の一年エース西野ユーシア。ハーフの人気者。この学校でサッカー部のマネージャーは『上級職』。当然ながら美香もマネージャーを務めている。美香が言う。


「まあ、美しきこの私に相応しい男などこの世に数える程しかいませんけど、ユーシアさんはその候補ぐらいにはなるかしらね~」


 自信。すべての女を超越する美香の自信。取り巻き達もそれにうっとりしながら頷いて同意する。

 だがこの朝、美香は出会ってしまった。ある意味運命とも呼べる男に。




「汝っ!! 汝を光栄ある図書委員に命ずる!! 放課後に図書室へとやって来るが良い!!!」


「え?」


 突然少し離れた横を歩いていた男子生徒が自分を指差し叫ぶ。一瞬他の誰かのことかと思った美香だが、間違いなく男は自分をじっと見つめている。美香が尋ねる。


「わたくしのことを仰っているのでしょうか?」


 不信感。苛立ち。訳の分からぬ男に朝から絡まれた不快感。厨二病オタクの真央が答える。



「当然だ。お前以外に誰がおる? この最強最高の真央様に声を掛けられたのだ。光栄に思うが良い!!」


 一瞬で苛立ちが怒りに変わる美香。逆に真央を指さしながら言い返す。



「ふ、ふざけないで頂けますか!! わたくしを誰だと思って!?」


 女としての自信。すべての男を従えられると言う矜持。周りの生徒達が足を止めてふたりのバトルをじっと見つめる。真央が右手を天に掲げ上を向きながら答える。



()()()。我がいちいち下々の者共の名を覚えておるとでも申すのか?」



「なっ!?」


 音を立てて崩れ落ちて行く美香のプライド。顔面蒼白になる美香が真央に言う。


「わ、わたくしは西園寺美香と言いまして……」


 そんな声を無視するように真央が言う。



「もう一度だけ言う、女。放課後、図書室に来い。良いな?」


 そう言い残すと真央は青い顔をする友人と共に校舎へと向かっていく。




「み、美香様……」


 美香の取り巻きが初めて見る彼女の『敗北』に驚き狼狽える。あらゆる男を虜にしてきた美香。その彼女が公衆の面前で受けた初めての侮辱。美香が深く呼吸をしてから答える。


「……いいでしょう。この西園寺美香を知らぬ不埒者に、しっかりとわたくしを教えて差し上げましょう」


 最高の女を自負する西園寺美香。その矜持の炎が激しく燃え上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ