57.さわやか! 寝起きの料理人
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ちちち……。ちち、ちちち……。
薄い水色の明るい空に差し込む、ばら色の曙光。そこにするりと走る、数々の白い雲。
ふっ……。
さわやかな夏の早朝、生をよろこび歌うことり達のさえずりで、料理人アンリは目覚めた。
「おっしゃあーッッッ」
くわッとまなこを全開にする、起き抜けの気合!! ああ、すでに輪郭が毛筆描きの濃ゆい線になっている……。何と熱苦しい寝起きであろうか!
“金色のひまわり亭”厨房の脇。アリエ邸にかつて使用人がいた頃、その住み込み居室として使われていた小さな部屋にて、アンリはとび起きる。
覚醒のその瞬間から、今日と言う日を張り切って生きる男。それがアンリだ。
ど・こんッッ!
下ばき一丁、ゆたかな胸毛をのびのび外気にさらして、元気に鎧戸を開けかけた料理人は、天井から響いてきた不機嫌感満載の打撃音に、ぴくりと体をこわばらせる。
「はッッ!? しまったぁぁ、そうだ今日はだいぶ早起きしたのだったーッ!! 申し訳ありません、店長ぉぉぉッッ」
どこッ、どこどこッッ!!
顔を上に向けて叫ぶも、再び打撃音が天井から降ってきた。ついでにほこりも少々降る。
何せついさっき……夜明けに寝入ったばかりだった死神店長が、ぶっちぎりのごきげん悪さで床に踵落としを入れてるのだ。このまま続ければ突き抜ける可能性が大いにある、非常に危険である。
「え~と、トニカク・ダマレ……次ガナッタラ=ブッコロース、という意味ですね。はい、ごめんなさーい」
そこでアンリは鎧戸を中途半端に開けたまま、流しの桶にかめの水をためて、ばしゃぶしゃ顔を洗い始める。手巾がわりのうに柄ふきんでふいた顔が、窓からの朝日をうつし、ぺかっとばら色にてかる!
本日も絶好調、アンリは焼きたてだ。
――何と言っても、東門で夏の定期市が立つ日! 今朝はおさかなを仕入れに行くのだからー!!
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料理人「あー、ナイアルさーん。同時連載中の『僕を忘れて、還り来た君へ』が、明日感動の完結なんですよ~。俺ちょっと行って、モモイスラ君に祝福鍋こしらえてくるんでー、ここよろしくお願いしまーす」
副店長「どこまでも領域を超えるやつだな、お前は」
料理人「じゃあ行ってきまーす。それ、リーンク☆彡」
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