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 つつがなく時間も過ぎてお開きになり店を出た時、「二次会どうするの?」と鈴野くんが聞いてきた。

 うーん、最近夢見が悪くて睡眠不足だから帰りたいなぁ。

 

「残念だけど明日予定があって今日は遠慮しておく。」

 と小さく嘘をつく。

「やっぱり体調が?」

「えーと、あの……。」

「ええっ、蓮花帰るの?」

 横から入ってきたのは音葉だ。小さく「鈴野くんといい感じなのにいいのぉ?」と囁いてきた。

「音葉こそカレシいいの?」

「数合わせだって言ってるし、迎えにきてくれるから大丈夫。」

 なんだ、公認なのね。隠し事しなくていいっていうのは素敵。信頼し合っている証拠なのね。

「うーん、でもやっぱり今日は……。」

「じゃあ送って行こう……。」

 

「結城さんは二次会どうするんですか?」

 ひえっ、樫井さん!


 びっくりした。いつの間に近くにいたのか、全然気付かなかった。


 あの夢で見た黒い影のような人と同じ鳶色の瞳。……そして、声も似ているような気がする。

 

 近くに来ると、ほんとに背が高い。そして細いと思っていたけどスーツが似合う、均整のとれたスタイルをしている。

 

「席が離れていて話ができなかったから二次会行くなら……。」

「いっ、いえっ、明日予定があるので帰りますっ。ではまた!」

 

 ばっと身を翻し、駅の方に走る。後ろから音葉や鈴野くんの呼ぶ声が聞こえるけど、それよりも恐怖が勝った。

 あの夢のように追いかけてくるのではと、人混みの中に紛れるように店から離れた。だんだんと歩みを緩め駅の方へとぼとぼと歩いていく。

 

 あの夢の中の暗い森とは違い、歩道沿いに並ぶ店からの明かりと看板の照明と街灯で昼のように明るく人通りも途絶えない。


 電車に揺られ、流れていく街の光を見ながら小さくため息をついた。


 なにしてるんだろ私。あれは夢なのに。……感じ悪いよね。嫌な気持ちになるよね。殺されるまではいかないだろうけど。

 あー、自己嫌悪。今度会ったら謝ろう。いやでもなんて? なんて言って謝るの?

 ……このまま忘れてくれないかなあ。

 はっ、鈴野くんにはちゃんと謝らないと。


 それよりも明日は土曜日。寝よう。惰眠を貪ろう。私は気分を入れ替えるようにふるふると小さく首を振った。


 ***


 いつもの時間、いつもの悪夢。

 ただ、私の首に手をかけるその人の目は少し哀しそうだった。


 ***

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