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パーフェクト・デイ  作者: ミソラ


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69/73

69 挿話 ナイトメア *音葉*

「聖女の護衛?」


 二十五年ぶりに行われる新皇帝の即位式で街中お祭り騒ぎだ。それとはまた違った騒々しさの下町の食堂。私の目の前には幼馴染のエリクがにこにこしながらエールを飲んでいる。

「うん、聖女が神殿から皇宮へ移動する時と儀式が行われる時の警備。」

「だってエリクは第三門の騎士で近衛でも皇宮騎士でもないのに?」

「やっぱり顔じゃない? ほら近衛って見た目も大切って言うじゃん。」

 

 エリクがへらへらと笑いながら言うと、横からもう一人の幼馴染のケインが冷静に訂正する。

「二十五年ぶりの即位式だから派手にするんだろ。聖女のパレードもえらく力を入れるらしいぞ。」

「ふうん、なるほどねぇ。」

 

 揚げたじゃがいもをかじる。しょっぱさにいろんな思いが込み上げてきてもやもやする。

 

「そういや、サラも聖女候補だったんだっけ?」

 ケインは嫌なことを思い出させてくれる。

「そうよ、最終の十人にも残らなかったけどね。」

 あんた、小さい時にそれで私を散々からかってきたのを忘れたのかしら?


 私は五歳の時、聖女候補として集められた一人だった。いろんな試験を経たのち最後の十人の中には残れず、十才で家に戻された。

 久しぶりに会った両親は落胆していた。それはそうだろう。せめて十人の中に残って、聖女にはなれなくても聖女付きの侍女になれれば一生生活に困らない年金が手に入ったのだから。

 

 おまけに五年も神殿にいた浮世離れした子供など庶民の両親の手に余り、私はすぐに貴族の小間使いとして奉公に出された。

 もっとも、神殿でみっちりと叩き込まれた教養とマナーと聖女候補だったという信用で小間使いとしては優遇されて今では侍女になり、それなりに地位を確立している。


「エリクは聖女さまを見たのか?」

「ああ、神殿から皇宮に移る時にちらっと。ベールをかぶっていたけど、黒い髪の毛ですごく綺麗な人だった。」

 黒い髪の毛……。たしかルイードといったか。あの子が聖女に選ばれたのね。

 話をしたことはないけど、いつも静かに勉強をしていた。


「どんなに綺麗でもあと三日の命か。」

「でも世界を救うんだぜ。」

「誕生日と命日が一緒ってどうなんかね。」

「次の即位式までは祭日になるんだよな。」


 聖女の名前と顔は公表されない。なぜならばその人となりを知れば憐れみを覚えるから。

 今はお祭り騒ぎでも、儀式を終えて普通の生活に戻れば、聖女は忘れ去られる存在なのだ。

 祭日になったとしても、それは『新皇帝即位記念日』であり『世界が救われた日』であって、誰も聖女のことに思いを寄せることはない。

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