53 ナイトメア *良平*
またあの夢だ。夢の中の俺もぐずぐずと悩んでいる。
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皇太子として執務を行い、国を治める心構えを整えていく。直轄地も順調に発展しているし、皇帝になる準備も進んでいて諸国からの賓客も到着している。
数ある儀式の中で、もっとも大切な儀式として婚礼式がある。聖女が選ばれた時、あえてその絵姿を見ることはしなかった。しかし次期皇帝にとって、世界にとって聖女はどういう存在かを教えられる。
曰く、神に愛されるほどの清廉さと美しさと賢さを兼ね備えているのだと。儀式の後、聖女は神の国へ昇華する栄誉を持つ、と。
そのように素晴らしい女性を贄にするのか。
熱心に伝える講師に対して、私は皇太子にあるまじき嘲にも似た笑いを噛み殺し、表情を取り繕って講義を受けた。
けれど、私の中で『彼女』が形作られていく。
私は『彼女』が死んだ後の未来のこの国を守っていかなければならない。『彼女』が世界のために生贄となった一年後、『彼女』ではない伴侶を得て子を成し次代へと繋げていくのだろう。そしてまた、その子に代替わりをする時、新たな聖女が選ばれる。
聖女を犠牲とした上で私は幸せを感じることができるのだろうか。この世界を守っていくことができるのだろうか。
聖女の犠牲を忘れることができるのだろうか。
……これは正しいことなのだろうか。
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目が覚めた時、頭を抱えたくなるほどの感情が押し寄せてきた。夢の中の俺の苦悩が頭の中にこびりつく。
ただ平穏が欲しいと苦しんでいる。




