48 この気持ち
会社帰り、私たちがよく寄るカフェのボックス席。
「そろそろはっきりした方がいいんじゃない?」
「はっきり、ですか?」
「樫井さんと鈴野くんのことだよ。優しさって時には残酷なこともあるんだよ。」
畠中さんが私をじっと見る。その隣では音葉が困ったように微笑みながら頷いている。
私が戸惑いながら二人の顔を見ていると、音葉が苦笑しながら言った。
「どちらにも曖昧な態度でいるのはね。鈴野くんのことはどう思ってるの?」
「どうって?」
「蓮花は気づいてないの?」
私はアイスレモンティーの氷をストローでカラカラと回した。事なかれ主義が事をこじらせる前に絡まりそうな糸をほぐさなきゃ。
「……気づいてないってわけじゃないのよ。気づかないようにしてたっていうか……、誰とも付き合う気はなかったし、そのまま友達のままいられないかなあって。」
赤みがかった琥珀色のグラスを見つめる。
「ずるいよね私って。ほんとに……。」
「うーん、まあきちんと告白しないあの二人もだらしないんだけどさ。」
はっきりさせないと、今のままではいけないとわかっている。なにも始まっていないからと先延ばしにしているだけだ。
「樫井さんのことはどうなの? 好きなんでしょ?」
「は?」
しばらくしてじわじわと顔が熱くなる。目の前の二人はくすくす笑っている。
「あー、いい、いい。皆まで言うな。」
むむうと膨れているとからんと氷の涼しげな音がする。
「樫井さんの気持ちはわかってるんだからさ、はっきりさせてもいいと思うよ。卒業するところは卒業して。」
「そうよ、蓮花。柴崎さんのことは私に任せて。」
音葉が眩しい笑顔で囁く。翔のことはどうだっていいんだけど。
でも……そうだなあ。
私は樫井さんのことをどう思っているのか?
突然、胸の中にぼっと炎がともる。いやいや待って。もしかして好きなのかもって自覚した途端のこの気持ちはなに?
「急に赤くなってどうしたの。樫井さんのこと考えてる?」
「鈴野くんの名前が出た時と反応がまるっきり違うもんね。わかりやすぅ。」
「別に男から告白しなきゃならないってことはないし、蓮花の気持ちが決まったんなら応援するよ。」
音葉に言われ、はっとなる。
にこにこしている二人を見て、決心した。
「わかった、わかりました。鈴野くんと話をします!」
鈴野くんから告白されたわけじゃない。でも二人きりで食事に行くのは無理だって言おう。




