47 想い *良平*
「樫井さんは、結城さんのことをどう想っているんですか。」
俺の箸が止まり、目の前で俯いている鈴野を見る。
「色々と噂になっているじゃないですか。」
「あー。」
「でも最近は全然目も合わせない感じですよね。どうなっているんですか?」
「どうって……。」
目を落としてラーメンの麺を箸でたぐる。
「彼女には迷惑をかけたんだよ。」
「あの……、樫井さんの元カノが結城さんに怪我をさせたってやつですか。」
「……知ってたんだ。」
「あの場にうちの課の人がいたんです。」
「なるほどね。」
そうか、それに俺がサブリーダーから降りたことも噂に拍車をかけているんだろうな。
「樫井さんの元カノが結城さんに怪我をさせたっていうことは、嫉妬したってことですよね。樫井さんと結城さんは付き合っていたんですか?」
「いや、付き合ってはいないよ。」
「じゃあ正直に言ってください。どういう関係なんですか?」
「関係って……。友人? ご飯を食べに行ったりとかメッセージしたりとか。」
鈴野が驚愕の表情を浮かべて俺を真っ直ぐに見つめる。
友人なら普通のこと……だよな?
「僕は何回も食事に誘ってるのに二人では一度も行ったことがないんです。必ず保護者がついてくるんです。」
「保護者?」
「畠中さんと菊池さんと、あと最近はなんでか篠原さんもついてくるんです。」
「ほう……。」
「メッセージは交換しましたけど、ほとんどしてないし……。」
再び鈴野が項垂れた。メッセージは交換してるのか。ふうん。
「……樫井さんは結城さんのこと、どう思っているんですか?」
「それ、ラーメン屋でする話?」
「いいですから。好きなんですか?」
その言葉に結城さんの顔が思い浮かぶ。
「うん……。」
「あーっ!」
鈴野が頭を抱えだした。
「ラーメン、のびるよ。」
そう言うと、鈴野はゆっくりと頭を上げてちるちると少しずつラーメンを食べ始めた。俺も様子を伺いながら食べる。
のびた。少し冷めた。
「敵うわけないじゃないですか。」
「いやいや、スタートライン一緒だよ。」
「俺は入社式の時からなんですっ。」
「あー、そっかー。」
じゃあ俺の方がリードしてるかー。
*
遡ること二週間前、結城さんが退院して初めて出勤した月曜日の夜、お詫びのメッセージを送った。
『自分のせいで変な噂が立っていて申し訳ありません。しばらくはプライベートも含めて話さない方がいいと思います。』
断腸の思いってこういうことを言うんだな、と実感した。そしてその後届いたメッセージ。
『メッセージだったら相談とかしてもいいですか?』
繋がりを切られることがなかったと浮かれたが、それを少し時間をかけて抑える。
『もちろんです。こちらこそよろしくお願いします。』
よし、送ったぞ。
*
そんなことを考えていたら、前から地の底を這うような声が聞こえた。
「なにを笑っているんですか。」
「笑ってたか?」
「笑ってましたよ、優しい目をして。」
「ふん。」
「なんで不機嫌になるんですか。……で、告白とかは?」
「だからそれ、ラーメン屋でする話か?」
「告白するならさっさとしてください。結果次第で僕も考えます。」
「んー、合理的?」
「理系なんで。」
本気なら俺を出し抜いてでも告白すればいいのに。




