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午後の会議室の予約の確認をしている時、樫井さんがプロジェクトのサブリーダーから下ろされたことを知った。
会議室の予約表のサブリーダーの名前が樫井さんから篠原さんに代わっていたのだ。
「え、なんで?」
「ああ、それね。あの件の後、警察やらなんやらで会社を抜けることが多かったでしょ。」
「ええ。」
病院にも何度か来てくれたことを思い出す。
「結城のせいじゃないからね。悪いのはあの女だから。元はと言えばきっかけを作ったのは樫井さん本人。」
「……。」
畠中さんはまだ怒りがおさまっていないようだ。樫井さんと食事に行った話は『後でゆっくり聞かせてもらおう』といい笑顔で言われた。
*
会議室に向かう集団の中に樫井さんを見つけた。なんだか疲れた顔をしている。目も合わさず、離れた場所からフロアに入って行った。
あの件は、結局私が被害届を出さなかったこともあって社内で処理された。しかし、会社近くであったことなので知っている人は知っている。変な噂も立っていて朝からちらちらと視線を感じた。
人の噂も七十五日。知らないふりをするしかない。
七十五日か。長いな。
そして、少し寂しい。
仕事終わり、女子更衣室がある二十階からエントランスに出ると、鈴野くんが立っていた。
「結城さん!」
「あれ、鈴野くんどうしたの?」
「なんか大変だったって聞いて。大丈夫?」
「えーと、うん、大丈夫。ありがとう。」
エントランスを抜ける人たちがちらちらとこちらを見ている。
「それはよかった。気分転換に今週いつかご飯を食べに行かない?」
鈴野くん、気を遣ってくれているのかな。でも色々ありすぎて疲れた。それにこの場所ではちょっと……。
「うーん、今週は無理かな。まだちょっと落ち着いてないというか……。」
「そうか、そうだよね。」
鈴野くんがわかりやすく項垂れている。
「また機会があればね。」
そこに畠中さんが割って入ってきた。
「はいはい、こんな目立つところで凹まないの。」
そして鈴野くんに囁いている。
「今の結城はいつもより注目をされてるの。しばらくそっとしておきなさい。」
「そう、ですね。すみません。」
なんだか鈴野くんが雨に打たれた子犬に見えた。




