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「それで、めっちゃかっこいいんですよー!」
翌日、月曜日のお昼。これは私の快気祝い(ランチ)ではなかったのか。音葉が目をキラキラさせながら畠中さんに熱く語っている。
「柴崎さんの笑顔がきらきらしてて。うちわ作って振るファンの気持ちがわかる!」
「どうしたの? コレ。」
畠中さんが横目で両手を組んでうっとりとした目をしている音葉を見ている。
「昨日からずっとこうです。」
翔はすっかり音葉の『推し』になったらしい。ずっと「ID検索しようよぅ」とうるさい。翔の私に対するあれやこれやも『一途』の一言に変換した。
「へえ。そんなにかっこいいの? 結城、写真持ってる?」
「あっ、そうよ写真!」
「もう消した……、ああ、集合写真ならあるわ。」
スマホをスクロールして同級生たち七人と撮った写真を出す。この写真を見るのも久しぶりだな。
「見せて!」
音葉が怖い。ほれ、と見せる。
「学生の時か。柴崎さんかわいーい。ちょっと髪長いぃ。」
「うんまあ綺麗な顔だけど、好みじゃない。」
「この顔にマッチョは似合わないですよぅ、畠中さん。蓮花、この写真送って。」
「だめだよ、サークルのみんなが写っているから。」
「柴崎さんのとこだけカットしてちょうだい。周りはぼかすよ。」
畠中さんと私はちょっと引く。
「ほかの男の人の写真なんて彼氏が嫌がるでしょ。」
「そんなのどうだっていいですよ、畠中さん。それに……久しぶりのトキメキなんですよねぇ。」
音葉がほおっと息を吐きながら私のスマホをうっとり見ている。なんだか複雑な気分だけど、笑ってしまう。
「結城の元カレっていうのは気にならないの?」
「気にならないと言えば嘘になりますけど、元カノが蓮花っていうのは見る目あるなって。変な女じゃなくてよかったなって思います。」
「くはっ、それは樫井さんのことを言ってるの?」
「ぷはっ。」
「なんで結城が吹き出すの……っ。」
畠中さんも笑いが抑えきれていないじゃないですかっ。
では気を取り直して。
「束縛激しいけどいいの?」
「ウェルカム。束縛されてみたいし。でももう柴崎さんはそんなことしないと思う。」
「地元大好きで離れないと思うけど。」
「地元どこだっけ?」
「長野。」
「ヒューッ。いいじゃない! 仕事はなに?」
「広告会社だったかな。地元企業のアプリ制作とかもしてる。プランナーしたいって言ってた。今回もこっちにクライアントがいてついでにちょこちょこ仕事してたみたい。」
「あっ、わかる! センスよさそう! 服のセンスもよかった!」
裏アカと浮気していたことは言わないでおこう。
「菊池の脳みそが茹で上がっているわ。さてと、そろそろ戻ろう。」
じりじりと強い日差しの中、日傘をさしてすぐ近くのビルへと戻る。
「結城、樫井さんから連絡は?」
「また改めてお詫びをしたいと連絡がありました。もういいんですけどね。」
「樫井さんの気がすまないんでしょ。また二人で食事に行けばいいじゃない?」
横からひょこっと顔を出した音葉がにやにやしながらプチ爆弾を投下して、胸の奥がドクンと波打った。




