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翔の表情が少しぎゅっと苦しそうになったような気がしたが、すぐに弾かれたように噴き出した。
「ふっ、ははっ。確かに。俺はしつこいんだよね。うん、わかってた。」
なにを言い出すのかと唖然としていると、翔が言葉を続けた。
「そうだよね……三年も。しつこいよね。いや、昔からしつこいか。」
翔はふうっと息を吐きながら俯き、しばらく黙って地面を見つめた。そしてゆっくり顔を上げて優しい笑顔で私を見た。なんとなく……いつものじゃない笑顔で。
「蓮花、もしかして昨日の男のことが好き?」
「うぇ。いや、まだわからない。」
「まだ……ね。もし、さ。あの男とうまくいかなかったら連絡してよ。話ぐらいなら聞くよ。」
翔は少し天を仰いでからゆっくりと視線を下ろし、目を閉じた。
「うん、なんだかスッキリした。
……蓮花のお友達さん、これからも仲良くしてあげてね。」
翔は二つに折った紙を、音葉が持っているエコバッグにするっと入れた。
「じゃあね。」
にこっと笑って羽織ったリネンのシャツを軽やかに翻して手を振りながら去って行った。
「……かっこいい……。」
「は? はあ?」
「めちゃかっこいいね! 見た目もだけど中身も!」
「音葉?」
「あ、なに入れたんだろ。」
エコバッグから紙を出して見ると、携帯番号が書いてあった。
「蓮花! 携帯番号から検索したらメッセージアプリもわかるよね! 登録しよ?」
「いやだし。それより音葉、彼氏いるでしょ。」
「だからもう枯れているんだって。柴崎さん、めっちゃかっこいい〜っ。」
「そ、それより買ってきたもの大丈夫かな。」
「保冷バッグに保冷剤入れてるし大丈夫よぉ。それよりさー。」
急に舞い上がった蓮花に戸惑いながら、わいのわいのと話しながらマンションに戻った。




