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トラウマ脱却……。それを聞いてズンと心が重くなった。
久しぶりに翔の顔を見た。相変わらず、いや、大学生の頃とはちょっと顔が変わった。大人になっていた。けれど何を考えているのかわからない笑顔は変わっていなかった。
なにも知らない頃は、あの笑顔が大好きだったのに。
「それが……トラウマ再びなのよ。」
はああっとため息をこぼすと音葉が首を傾げる。
「トラウマの元が昨日病院に来たの。」
「えっ?」
「うちの実家に聞いたらしくて。まだ私の彼氏気取りだったの。」
「でも三年前に別れたんでしょ?」
「うん、しかもあっちから。もう訳わかんない。」
音葉は再びチキンをもぐもぐ食べた。
「樫井さんも厄介な元カノだったけど、蓮花も大概厄介ホイホイよね。」
「厄介ホイホイ……。あ、樫井さんと元カレが鉢合わせたのよね。もうほんと厄介だったわ。」
「あらまあ。」
一瞬、音葉がにやっと笑ったような気がしたが、すぐに真面目な顔になった。
「樫井さん、蓮花が怪我したことで引け目を感じたりしてないでしょうね。せっかく蓮花がトラウマから脱却できるチャンスなのに。」
音葉はぐっと拳を握って顔を寄せてきた。
「樫井さん、いいと思う。すぐに食事に誘うところなんか、積極的でとてもいいと思う。そんで蓮花が一歩踏み出したのもいい傾向だと思う。元カノだってもうなにもできないだろうし。」
あれ、今日はお酒なしだったよね?
音葉、酔ってる?
「今は仕事が大変そうだけど、まあそれは私らでなんとかなる問題じゃないし。樫井さんも元カノがトラウマになってるかもしれないけど……。ていうか立派に両思いじゃん? 自覚ない? 教えた方がいい?」
なんだかぶつぶつ言ってる。
その後、ダラダラと夜中まで喋って音葉は二晩泊まった。




