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パーフェクト・デイ  作者: ミソラ


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 翌日の金曜日、退院時間は昼前だと聞いたので時間休を取り病院に向かった。

 昨日の男がいるかと心配したが、病室には既に着替えた結城さんが一人でいた。


「樫井さん、わざわざすみません。」

「いえ、そのカードを貸してもらえますか?」

「いやいや、いいです。」

「そういう訳にもいかないので。」

 しばらく悩んでいた結城さんは、観念したように俺に診察カードを渡した。


「菊池さんが、入院手続きをしたのは自分だから同行するって言ってたんですけど、今日は清算だけでいいそうなので俺一人で来ました。」

「そうなんですね。」

「じゃあちょっと待っていてください。」


 自動精算機で精算を済ませる。領収書などと共に処方箋も出てきた。

 そのまま調剤の窓口へ向かい、呼ばれるまで椅子に座って待つ。

「痛み止めとか出てました。人が多いので時間がかかりそうですね。」

「すみません、なにからなにまで。」

「謝るのは俺の方ですよ。」

 結城さんは困ったように笑ってぺこりと頭を下げた。

 もう頭のガーゼも首の包帯もなくなっているが、首にはうっすらと珠希の手の跡が残っている。

 

「あの……、昨日の男性は……。」

「あ、ああ。彼はこっちのクライアントから呼び出されたらしくて……。」

「……そうなんですね。結城さん、この後、昼ご飯どうですか。話したいことがあります。」

「はい。お腹がすきました。」


 病院内のレストランではなく、近くの和食屋さんに行き、壁に囲まれたボックス席に座った。


「あの……、彼女のことなんですけど。」

「……はい。」

「まだ勾留されています。被害届はどうされますか。」

「あー……、昨日、警察の方にも言われました。……樫井さんと親しい方なんですよね?」

 俺は黙って目を伏せた。

「それに、同じ会社の方ですし、大事にはしない方がいいのかな、と。」


 *


 今朝、斉藤さんから『三矢が今日無断欠勤している』と電話があった。

『あれからどうなったんだよ? また付き合うことになったとか?』

 と呑気に聞く斉藤さんにイラつきながら、彼女の現行犯逮捕は会社にも連絡がいっているのに公表されていなかったことを思い出した。

『三矢、会社辞めて樫井の所に転がり込むって言ってたから、そっちにいるの?』

「……知りません。今から会議なのでまた。」


 そしてその後、三矢の父親が会社に現れた。俺に会う前に結城さんの所にも行ったらしいが、柴崎に「謝罪を受けて示談にでもされたら困る」と追い返されたらしい。

 

 ビルの一階にあるカフェで向き合った三矢の父親は、俺の前で厳しい顔をして押し黙っている。その表情は俺が三矢を弄んで捨てたから娘があのような事件を起こしたのだと言外にほのめかしている。


 最後に一言「もう娘をあなたに近づけることはさせませんから……。」と絞り出すように言って去って行った。


 *


「……被害届はいつでも出せるみたいだから、法務に相談してからでもいいかもしれない。弁護士もいるし。」

 結城さんは小さく頷いた。

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