37
俺はたまらずノックをして病室に入った。
「……樫井さん。」
「ごめん、来客中だとは思ったんだけどお詫びに……。」
「あー、もしかしてこいつが怪我の元凶?」
ベッドサイドには、冷たさも感じる中性的な整った顔をした男が立っていた。眉間を寄せて鋭い視線で睨んでくる。
「翔、やめてよ。」
結城さんに名前を呼び捨てにされる男になんとも言えない気持ちが込み上げてくる。それを無視して結城さんの近くに寄り、頭を下げる。
「いや、本当に俺の不手際で怪我をさせてしまい、申し訳ありませんでした。」
「本当だよ、こんな怪我させて。許さないよ。」
「……翔には関係ないでしょ。」
「蓮花のお母さんに頼まれて様子を見に来たんだ。関係なくはないよ。それにご両親だって可愛い娘が怪我させられたって許すはずないでしょ。」
「ほかの人がどう思っていようと翔と私はもう関係ないから!」
「でもまだ翔って呼んでくれるじゃん。」
男は美しいとでも表現できる顔を綻ばせて結城さんに笑顔を向けた。女性ならば赤面してしまいそうな顔を向けられても、結城さんは顔を青くして掛け布団を震えた手で握っている。
「あの、結城さん。」
「は、はい。」
「怪我の具合は?」
「あ、もうすっかり大丈夫です。本当はもう退院しても問題ないんですけど、頭を打っているからと念の為にもう一日様子を見て、退院は予定通り明日です。」
「わかりました。明日の退院時に迎えにきます。」
「いや、大丈夫ですよ。」
「うん、俺が来るよ、蓮花。」
「柴崎さんさんは帰ってください。で、もう来ないでください。」
「ええ、冷たいなあ。」
「……結城さん、この病院の清算は俺にさせてください。後で看護師さんに退院時間を聞いておきます。」
「いえ、保険も使えますし樫井さんも仕事が大変な時なので無理をなさらないでください。」
「責任は俺にあるのでとりあえず払わせてください。あ、もうすぐ畠中さんたちも来ると思います。」
柴崎という男をちらっと見て頭を下げた。
「じゃあ俺はこれで失礼します。」




