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「どうなんですか? あそこにいただけなのに、なんでこんな目に合わなきゃいけないんですか?」
菊池さんが目の周りを真っ赤にして俺を睨んでくるのを畠中さんが背中をなでながら宥めている。
「菊池、落ち着いて。」
俺はぐっと拳を握った。
「彼女、三矢とは別れ話をしていて、とばっちり……確かにとばっちりなんですが……三矢にはバレてしまったんだと思います。」
畠中さんと菊池さんがまっすぐ俺を見る。
「……俺が……、俺の気持ちが結城さんに向かっているのがバレたんだと……。」
「そんな、そんなの蓮花は知らないことじゃないですか……!」
ぽろぽろ涙を流す菊池さんを宥めながら畠中さんが怒りを抑えたような声で言った。
「……今夜は帰りましょう。明日も仕事だし。結城のご家族にも知らせた方がいいわね。明日、会社から連絡しておきます。」
*
翌日の午後、また警察から呼び出されたのもあって会社を早退した。
会社では、近くの緑地帯であったことや、注目度の高い結城さんが被害に遭ったことから噂になっていた。
警察署からの帰り、結城さんの入院する病院に寄ると、病室から結城さんと男性の声が聞こえた。
「どうして翔がここにいるのよ。」
「だって蓮花のお母さんはおばあちゃんの介護があってすぐにはこっちに来られないって言ってたし、お父さんは東北に出張中だって。すぐに動けるのが俺だけだったんだよ。俺、蓮花の実家と連絡取り合ってたんだよ。知らなかった?」
「うそ、なんで……。」
「忘れた? 昔、旅行の土産を送るのに実家の住所と電話番号聞いたじゃん。
蓮花、携帯変えたでしょ。親にもメッセージアプリの無料通話しかしてないって徹底してるよね。親にも携帯番号を教えてないって。
んで、メッセージアプリのID教えてもらいたかったんだけど、やり方がわからないって教えてもらえなかった。」
「なに言ってるのよ。」
「でもこの入院先教えてもらったからさ。やっと会えたんだよ。ずっと会いたかったんだよ?」




