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「会ったことは、ないと思います。受付ですので、お見かけしたことはあるかと思いますが……あの親睦会の時には認識していませんでした。」
「だよなあ。俺もそう。結城さんだったら記憶に残ってるはずだもんなあ。」
「はい?」
「あ、いや。」
樫井さんが慌てたようにビールを飲む。まだそんなに飲んでないのにちょっと赤い。
「あ、私は次はその鴨にします。樫井さんは?」
「牛すじかな。」
肉ばっかりだなあ。
「トマトのおでん、シェアしませんか。」
「トマトのおでん……。」
牛すじには粒マスタードソース、お皿に丸ごとどんと載った湯むきトマトのおでんにはバジルソースがかかっている。初夏に食べるおでんもオツなものだ。
……夢のことは話さなくてもいいよね。自分が殺人者(?)なんて聞いたら気分が悪くなるよね。それにしても印象深い夢だから話したくてムズムズするけど。結局誰にも話してないし、あんなに何度も見る夢は誰かと共有したくてたまらない。でもなんだかやっぱり口に出すのは恥ずかしいのよね。
その後は串揚げなどを注文したが、樫井さんはやはり肉系ばかり。細身なのにけっこう食べますね。よし、サラダを頼もう。
「結城さん、けっこう食べるね。お酒も好きそうだし。」
「へっ? 食べるのも飲むのも好きですけど。」
樫井さんに言われたくない。
「一人で静かに飲んでるよね。親睦会でもワインのボトルキープして。」
「あ、それは忘れてください。」
「途中から鈴野と楽しそうだったけど。」
「……まあ同期なので。」
「……鈴野、いい奴だしな。」
どくっ。
なぜか胸が痛くなった。
「……そうですね。」
なんか泣きそう。
「ええと、その聞きたいことだけで食事に誘ってくれたんですか?」
「えー、うん、まあ……。」
樫井さんは串揚げの最後の一口をかじるように食べた。
横顔が綺麗だな、なんて思ってしまう。
「結城さんはさあ、夢で見た内容とか覚えているタイプ?」
はっ? えっ?




