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The story is set in this country  作者: Auguste
2/6

第1幕 プロローグ〜元刑事の晩酌〜

俺は夜、新宿のバーでいつも通り呑んでいた。

酒はジャックダニエルのロック。

1番好きな酒だ。

何故ロックで飲んでるかって?

やってらんねぇからだよ。


12年前のあの事件。

東京、千葉で起こった連続猟奇的殺人事件。

通称Splatter(スプラッター) Museum(ミュージアム)

このふざけた名前は、主犯のアスモデウスっていう色欲の悪魔を名乗る犯人が付けたものだ。


俺はこの事件を担当したが、解決どころか相棒は共犯で、事態を悪化させたと言われ謹慎処分。

謹慎解かれても、まともに捜査することも許されなかった。

簡単な仕事ばかりで、他の警官から白い目で見られる日々だった。


『あの猟奇事件を担当した刑事だ』

『犠牲者ばかり出したんだって?』

『何故あの時気づけなかったんだ?』


都合のいい奴らだ。

自分が同じ立場だったら気づけたっていうのか?

俺より仕事が出来ねぇ癖に何言ってんだ。


俺はそのまま2年前に定年だ。

今は昔から通ってるバーで酒飲むか、パチスロ行ったり、野球中継を見るかだ。


もらった退職金で適当に過ごしてる。

本当にこれが生きているいうのかわからねぇがな。



今、この国では2つ消えたものがある。

1つはあるジャンルの映画やドラマなどのフィクション作品だ。

主にスプラッター、グロテスクな描写があるサスペンスやホラー等だ。

この国だけじゃなく他の国でも言えることだが、何か事件があるとあの映画のせいだ、あのミュージシャンの曲を聴いてたからだと何かと作品や人のせいにしたがる。

実際に何かに影響を受けて起きた犯罪は、確かにあるがな。

それは影響あるなしに、本人の問題だと思うが…。

まあ、あの事件は邪魔な人間を消してそれを映画にするというぶっ飛んだ事件だったからか、その類のフィクション作品は一切やらなくなった。

小説サイト、イラストサイトやSNSに投稿されてる作品も厳しく監視され、ひっかかったらアカウント停止、酷い時には住所を特定され取り締まられる。

そこまでするかと思うがな。

そういう趣味のやつもいるんだから、好きにやらせらいいのに。

奴が抜きんでて、頭が飛んでいただけだ。



もう一つは結婚式。

あの事件の1つ、ノータリンの結婚式に影響を受けたアホ共がいた。

とある結婚式が武装した数人に占拠され、花嫁と花婿があることを強制された。

それは花婿が花嫁に臓器、または体の一部等を捧げることだ。

あの事件が血を分けたように見立てられていたからだろう。

それとめちゃくちゃなのが捧げられたものだが……

それが腸だとしたら、花婿の腹から無理矢理出し、それを花嫁の腹に無理矢理入れるんだ。

もちろん2人とも死ぬ。

そしてそのリーダー格は『これで2人は永遠に結ばれる』とか言うんだ。

狂ってやがる。


それが3件も起こった。

もちろん警察はそいつらを逮捕した。

捕まえた人数は15人。

年齢は21歳から35歳と若い連中だが、かなり年齢幅広かった。


しかも、実行したやつらは神父を名乗るやつの指示に従い、犯行を行っていたと。

その神父の正体は不明。

わからずじまいだった。

銃の出どころは、闇サイトでの裏取引で仕入れたものだった。

そいつらを取り締まったが、そのチンピラ達もカタコトな日本語を話す外人から安値で買ったと。

外人が何者かは分からず、それ以上の捜査はできなかった。

毒嶋(ブスジマ)組の名前が挙がったが、やはりあいつらは尻尾を見せなかった。


毒嶋組は失敗や情報漏洩を許さない。

たとえ長年仕えた会長の側近であろうと、容赦なく消す。

もしこいつらの仕業だったら、その外国人は海の底だろう。


神父がまだ捕まっていないせいで、また信者が同じことをするんじゃないかと結婚式は海外で行う奴らが多くなった。

それか婚姻だけして式はあげないとかだ。


流石の神父は、海外で事を起こすことはしないらしい。

そのせいで日本のブライダル事業は衰退したがな。

化粧品業界や飲食業界もそうだったが、事件でここまで社会情勢が傾くとはな……。



この神父だけじゃねぇ。

他の事件に影響を受けたやつは他にもいる。

タロットカードを元にした事件が起きた。


5年前、神奈川県で21歳と18歳の学生兄弟が行方不明になった。

ガリガリでほとんど皮と骨の弟とブクブク太った兄。


1年後、相模原市の外れにある廃墟で別々の部屋で見つかった。

それは住所の書かれた節制のタロットカードが、家族のポストに入れられていたから場所がわかったんだ。


家族は警察を呼んで捜査した。

そこは取り壊し予定のアパートだった。

カードには2つの部屋番号が書いてあり、その部屋を捜査し、椅子に縛られてるところを発見した。


最初はどっちが兄か弟かわからなかったらしい。

ブクブク太って口から肉がはみ出て窒息してる死体と、体の肉を切り落とされた死体。


調べた結果、窒息してたのが弟。

肉を削ぎ落とされたのが兄だった。


弟の方には節制の逆位置。

兄の方には成位置のカードが体の真ん中に貼られていた。


兄の方は太り過ぎていたからか、肉を削ぎ落とし標準体型ぐらいにされていた。

弟は調理された兄の肉も含めて、色々食わされて太った。

口に圧迫痕があったことから、吐こうとしたところを止められていたみたいだ。

節制と不節制を見立てられたみたいだな。



もう一つは3年前に富山県の16が名前についているビルが爆破された。

爆破されたビルは2つ。

上が爆破されたのと下が爆破されたのがあった。

2つのビルに異なる位置の塔のカードが見つかっている。

まるで崩れていく成位置と下が崩壊している逆位置の塔のように……。


もちろん犯人は捕まった。

こんなド派手にやってるんだ。

あっさり見つかった。

人を手早く攫おうが爆弾を作れようが、現場に残った証拠で一発だ。


だが、最悪なことに節制と塔の事件は別々の人間。

節制の事件は24歳のサラリーマン、塔の事件は30歳の花火職人。

住んでいる県が同じ以外は、害者と一切接点がなかった。

この2人は他にもメンバーがいることを告げた。


『運命の輪は再び回りだす』だと……。


つまり、あと20人のタロットカードを元にした事件を起こすやつがいるってことだ。

リーダーは運命の輪、Fortune(フューチャー) or(オア) Fate(フェイト)と呼ばれている。

意味は幸運か不幸か……。

あの時も死体が運命の輪にされて、幸運もしくは不運を指し示すルーレットにされていたな。


捕まえられた犯人は、『運命を変えることはできない』と不気味に笑っていたらしい。


馬鹿馬鹿しい。

22人のイカれた犯罪集団がいるってことだろ?


そして最近は新潟県のある一室で、29歳の男1人と、28歳と15歳の女2人の死体が見つかったらしい。


28歳の女は男の嫁で、もう1人は援交してた奴だったみたいだな。

普通15歳の女とヤルか?

それに金目的で30近くの奴とヤル女も女だ。

未成年にも好き放題やらせねぇために、少年法なんて変えちまえばいいのに……。


最近は家出少女や少年も増加して、なんとか界隈とか呼ばれる場所での取り締まりを強化してるが、行方不明者が増えてる一方だ。


とにかく、その事件もまたイカれていたみたいだ。

男と15歳の女は素っ裸。

男は椅子に座っていて、女は膝の上に乗せられていた。

そしてまるで剣のようなもので、嫁に2人まとめて刺し殺されていた。

どこで手に入れたんだ?って話だよな。

ニュースで見たが、VTRで再現された剣は、ファンタジーの世界にありそうなものだった。


嫁は剣を持ったまま座り込んでいた。

毒を盛られて死んだようだ。


そして男には悪魔の成位置、嫁の方は逆位置のカードが首に縫われてた。


正位置の意味は浮気や不倫、不純。

逆位置は改善する、断ち切るだそうだ。


不倫をしていた旦那を、嫁が断ち切ったってわけだ。

12年前の事件もそうだが、よくこんなことを思いつくやつがいるもんだ。

今捜査中だそうだが、他の2人みたいにすぐ捕まるだろう。

まるで捕まることを恐れていないようだ。



これは全く目処が立っていないが、2年前警視庁に、小さい金庫が届けられた。

差し出し人は不明。

3つの番号で開くタイプだ。

手紙には新聞や雑誌の切り抜きを使って、『獣の数字を答えろ』とあった。

割と知っている奴は多い。

番号を666に合わせると開いたのだ。

そこにも手紙が入っていて


『今回は簡単過ぎたかな?』

『次回も楽しみにしてほしい』


これも新聞や雑誌の切り抜きが使われていた。

単なるいたずらで処理されたが、皆金庫で起こった事件をわすれてねぇか?

これが何か起こる合図だったらどうするんだ。

まあ俺は退職した身だからどうでもいいが……。


まだ犯罪性は無いが、12年前の事件が終わった後にできた新興宗教がある。

23に導きを求める会。

23という数字を神格化し、崇めている。

23つの珠数や23が着く服、年号を足したら23になる日に発売されたもの身につける。

ここまで来たら狂気の域だ。

どう見たって危ない宗教団体だ。

だが、どういうわけか警察上層部は、この宗教団体に関しては何も調べようとしない。

あくまでも噂だが、資金力があり、政治家やお偉いさんと癒着しているとか。

考えたくない話だが、そういう前例はある。

偉そうなこと言っている政治家や大臣達も所詮人間。

金に目が眩み、臭いものには蓋をしている状態だ。


最後にA(アルファー) Balloon(バルーン) Show(ショー)

5番目の事件が起きた廃墟遊園地だ。

あそこは心霊スポットとして有名になった。

また、子を思う親にご利益があるとふざけた噂もあるぐらいだ。

解体を進めようとする解体派と、それを止めようとする反対派がいる。

反対派に関してはオカルトマニアが大多数で著名人までいる。

まあ俺はどっちでもいい。


解決してもあとを引きずる事件だぜ。

まったく……。


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