表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/63

第13-2話「惚れてはダメな相手」

挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)




 誉の泉の上の開拓地に集められた獣人たちは、やはりバツが悪そうだ。

 そんな中、早苗は宣言する。


「ここに首都をつくる。名前はWalden(ウォルデン)だ」


 自然が多いことから名付けた。

 もちろん産業革命を起こせば、ある程度環境は破壊されるが。


「僕とララ、ラルクはドワーフの勧誘に行く。その間、獣人の男性諸君は――」


 早苗は木の枝を拾い、地面に大きな四角を描く。

 メタンガスを作る為のバイオトイレ。さらに貯水池と、濾過池、配水池。

 そして冬に備えるため、スイス式の穀倉を描いた。


「木材と石灰岩も、同時に集めてほしい」


 かなりのスパルタだ。

 だが男たちは「わかりました!」と、文句のひとつも言わない。


「女性のみんなには、亜麻を集めてほしい」


 産業革命の第一歩、アークライトの水力紡績機に必要だった。


「……リネンの大量生産が可能になったら、女性や子供にでもできる、アースバッグ工法で、一気に居住区を作る」


 NASAが月や火星でも検討していた、未来の建造法だ。

 指示を全体に出した後、ララとラルクの元へ向かう。


「待たせた。ドワーフたち――技術者たちの勧誘に行こう」

「うン! ドワーフたちは、帝国とも小さな取引をしていて、皇族の鎧も作ってるから」

「皇族……あの()()()の鎧か」


 ずいぶんと立派な鎧だと覚えている。

 技術としてはルネサンス期相当だろう。


「必要な人材だ。僕には知識があっても、技術がない。行こう」



 その頃、噂の皇族、()()()サイウィンは――

 王国のはるか北、帝国のライカス牙城の私室で、ワインを嗜んでいた。


【……ああ、やっぱ酒と女は、熟年物が一番だ】


 掠れた声だった。

 ゴブレットを振るい、香りを楽しむサイウィン。

 ローブ一枚の彼がテーブルの上のベルを鳴らすと、すぐに部屋がノックされる。


『サイウィン様』


 ひとりの少女が顔を出す。

 幼い。まだ12歳ぐらいだろう。


『お呼びでしょうか?』

【プチよ。女を呼びなさい】

『女ならここにいますが?』


 はぁぁぁ、とサイウィンが深いため息をついた。

 プチ(プリチア)は、サイウィンの騎士の従者(スクワイア)で、甲冑を着せたり、身の回りの世話をするのが役目だ。

 戦場で親を失った彼女を、なんとなく引き取ってはみたが……


【……プチよ。メスガキを女とは言わないぞ】

『私はもう生理が来ています。女です』

【はぁ、お前みたいなチビに、俺様のツーハンデッドソードが収まるわけがないだろ。はやく女を呼びなさい】

『サイウィン様のは、私にも十分に入りますかと』


 サイウィンは静かにクロスボウに手を伸ばすと、少女はダッシュで女を呼びに行った。


【こんなメスガキだと知ってれば、拾わなかったのに……】


 まぁ、プチの前のスクワイアは、この顔を見る度に畏縮していたし……

 一切怖がらないプチは、慣れさえすれば親しみやすい。

 と、ドアがノックされる。


『サイウィン様。準備しました。6人です』

【ちゃんとやったか?】

『はい。全員、目隠しをしています』


 プチがドアを開ける。下着姿の女性たちの手を引き、部屋の中に入った。


挿絵(By みてみん)


【ほう、絶景だ】

『――ウソ、この枯れた声、まさかサイウィン皇子!?』

『うっそぉ! 素敵な声、痺れちゃう♡』


 サイウィンは呆れ顔でプチを見た。


【今喋った2人はアウトだ。俺はベッドの外では、静かな女が好きだ】


 プチに2人が連れていかれ、残りが4人に。


【今日は金髪の気分じゃないから、一番右の子もアウト。真ん中の子も胸が小さいからアウトだ。俺は巨乳が好きなんだ】


 残った2人を楽しもう、とベッドに呼ぶ。


『選んでくれるなんて嬉しい……!』

『ねぇ、サイウィン様。お顔が見たいわ♡』

【あはは、ダメだ。目隠しを取ったら死刑な】


 笑うサイウィンに対し、女たちは一瞬、ひきつった顔を見せた。


【ああ、プチ。ドアを閉めろ。終わったらベルを鳴らす。俺は長いからな】

『……サイウィン様。もうじき、ナイフエッジの王国兵たちが、このライカス城を攻めてきます』

【だからこそ、今楽しまないとダメなんだ】

『しかし……』


 煮え切らないプチの元へ、サイウィンはゆっくりと向かった。


【……準備しても、意味ないんだよ】

『サイウィン様……』

皇帝(オヤジ)は俺の意見なんか聞きはしない】


 深刻な顔で言われる。

 プチは――下を凝視していた。


『……やっぱり、頑張れば私にも入ると思うのですが、試してはどうでしょう?』


 強くドアを閉めるサイウィン。

 さぁ、楽しもうか、という彼の声と共に、女たちの喜びの声が響いてきた。


挿絵(By みてみん)


『はぁ、嫉妬しちゃうな……』


 そう言ったプチリアは、ドアの前で悲しそうに座り込んだ。




挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ