2、住民の怒り
アンモラ王国と、カメリオ皇国の真ん中にある、ミートの家の前までミートが行くと、アンモラ王国の住民たちが集まっていた。
「ミートさん、心配してたんですよ。何回呼んでも出てこないから。どこに行ってたんですか?」
「すまぬ、ちょいとカメリオ城の方へ用事があったのだ。」
村の人は驚いたのか、何か言っている。ミートに聞こえないような小さな声でだ。
(私に聞こえなくてもどうでもよい。どうせ、カメリオ皇国にいったことだろうね)
ミートは人をかき分け、家の中に入って鍵を閉めた。ごちゃごちゃ言われるのが嫌いなミートは、窓の鍵まで閉め、勉強を始めた。ここの住人に勉強を教えれるように、ミートもミートで努力をしているのだ。
「ミートさんっ!出てきて下さいよ。何で、カメリオ城に行ったのか説明してくださいよ。」
ミートの努力も知らずに、住民たちは言う。イライラして、ミートは勉強が頭に入らなかった。住民たちには、何も迷惑をかけていないのだが、とミートは思いながら、また、勉強に励んだ。それでも、集中がすぐきれる。外は、大騒ぎになっていた。住民たちが文句を言っているのである。
ミートは決心をし、住民に話す事にした。家からでて、住民たちに言った。
「すみません、カメリオ皇国の女王様が親友で、清掃を頼まれたのである。だから、ちょっと行って来ただけだ。別に、清掃を手伝った訳ではない。女王様は、いい人ですよ、思った以上に。君たちは、女王様のことを知らないのだよ。カメリオ皇国の女王様は、この、アンモラ王国と仲良くしたいのです。どうか、協力していただけませんか。私も、カメリオ皇国と仲良くしたいのです。お願いします。」
ミートは初めて住民たちに、頭を下げた。深く、深く、頭を下げ、お願いをした。
村の住民は、その日からミートに手伝いの申し込みをしにこなかった。それに、ミートに対する接し方が変わった。ミートが少しでも外に出れば、「邪魔なんですよ、もう少し、家の中にいて下さい」など言ってくる。ミートは気にしてはいなかった。自分は邪魔者か…と思うだけ。言われたままに、家の中に入り、いつものように勉強を始める。
みんなの態度が変わってから1ヶ月たった頃、また、カメリオ皇国から手紙がきた。
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ミート殿
ごめんなさい、ミート。私、ミートにどんな事を言われても
女王はやめれないわ。この国とミートの国が仲良くなるまで、
女王の座は誰にも譲れない。だから、手伝ってくれる、ミート?
ミートが帰った後、よく考えたのよ。考えた上で、私はやっぱり、
女王が似合ってるんだと思ったわ。もう、ミートと親友じゃなく
てもいい。でも、ミートは普通の人よ。女王でもない。普通の
人。だから、ミートは私の事を親友と思っといて欲しいの。
わがままだと思うけど、お願いします。
私の国、カメリオ皇国にたまにでいいから、遊びに来てください。
カメリオ皇国 アオイ女王
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ミートはこの一通の手紙に勇気をもらった。
(私はアオイの事を親友と思う…)
この文がミートにとってどんなに嬉しかったか。今まで、ミートはアオイを親友と思ってはいけないと思っていた。でも、アオイが、親友と思っていて欲しい、と手紙に書いてあり、心も楽になった。
次の日、もう行かないと心の中で誓ったのに、ミートはカメリア皇国に行く事にした。アンモラ王国の住民のこと、アオイに伝えたい事を、すべて、隠さずに言うと決心したのだ。今は、心の中でこの事をしまっておくだけでなく、ちゃんと聞いて欲しい、と思ったのだろう。──アオイは親友だから──
「ミート?」
住民と一緒に国の清掃をしていた。あの時とちっとも変わっていない、無残な姿だ。普通の住民のように、住民と一緒に仕事をするなんて、いかにもアオイらしい、ミートは密かに思っていた。アオイは、いつもの着物ではなく、動きやすそうなジーパンに、Tシャツだ。長い髪は上でくくり、ポニーテールにしている。
「女王様、お手紙、ありがとうございました。私に何かできる事はないでしょうか。」
「ミート、来てくれて、ありがとう。一回、城の方へ行こうか。」
ミートは言われるまま、城に上がった。そして、また、あの部屋…アオイの部屋の座布団に座った。アオイは土で汚くなった服を脱ぎ、着物に着替えた。アオイの城の中での服は着物。これまでに見た事もない、綺麗な色の着物だ。ミートは着物を来た事がない。昔から、やんちゃで、子供の頃、男の子と間違えられたことがある。それに対して、アオイは女の子らしくて、よく、祭りとかに着物を着てきていた。
「今日はどうしたの、ミート?」
「女王様、聞いて欲しい事があるんです。一応…女王様は、親友ですから。」
あの時のように、アオイの目からは涙が出なかったけれど、満面の笑みでミートを見た。何も言わずに「ありがとう」と告げているようにも見える。
「私でいいなら、何でも聞くわ。」
少し間を置いてから、ミートは話し出した。
「アンモラ王国は、変わりました。別に、女王様のせいとは言いません。このカメリオ城に入った事を言ったら、私への態度が一変と変わったのです。どうすれば、よいのでしょうか。
住民の人は、私が1歩家から出れば、邪魔者扱いをし、家へまた引き返させるのです。勉強は、はかどるのですが、この頃思うのです。勉強したって意味がない、と。女王様はそんな時どうしてますか。」
ミートが黙ると、考えるように、アオイも黙った。少し時間がたち、やっと、アオイが口を開いた。
「私は、分からない。そんな事、なった事ないもの。…そうだわ。今日、私はミートの家へ行くわ。それから、カメリオ城に帰ってきたら、同じことになるのじゃないかしら。」
「女王様がそんなことしてよいのでしょうか。」
少し顔をゆがませながら、ミートは言った。
「よいのです。ミートの家は、この国に半分入ってるのだもの。この国にも、半分あるのだから、大丈夫よ。」
アオイは得意げに言う。
「意味ない、と思います。」
「あ、そうだったわ。それなら、私が、アンモラ王国の人に言うわ。仲良くしてくださいってね。いいでしょ、ミート?」
「女王様がいいなら、私は別にいいです。」
アオイはそうと決まれば、用意をしなければ、と言いながら、着替え始めた。タンスから色々な色の着物を取り出し、ミートに聞いた。
「この着物なんてどうかしら。」
満面の笑みで、青色の着物を差し出した。
「着物で行くのですか。」
「うん、だめ?」
「汚れますよ。」
ミートがそう言うと、切なそうに、着物を片付けて、可愛い黒のTシャツと、赤いミニスカートを取り出した。ミートが来た事もない服だ。
「女王様何歳ですか。」
「24よ。まだまだ若いでしょ、ミートと違って。」
「私は、女王様と同じです。知っているでしょう。そんなに老けて見えますか。」
「うん、その格好からして。」
満面の笑みで、アオイは言う。確かに、ミートは老けて見えるような格好をしている。ボロボロになった、茶色い服に、ジーパン。いかにもおばさんっぽい、服だ。ミートが自分の服装を見ていると、さっき取り出した、Tシャツとミニスカートをはいた、アオイがミートに言った。
「ミートも着替える?」
「いいです。この、古い服でも、私は気にいってますから。」
「そう、じゃぁ、行きましょ。早く言ったほうがいいわ。」
アオイの後に、またミート。黙ったままミートはついていった。
(大丈夫なのかね)




