1、女王の悲しみ
ミートに助けを求める人は多い。ミートはこの国で有名な人だ。国って言っても村みたいな国である。この世界はこの地球上にはない不思議な世界。まだ、誰にも知られていない。アンモラ王国。ミートはこの国──いや、この村と言おう。
最初は、勉強など教えるだけのミートだったが、女と言うのにあらゆることを頼まれてきたのには理由があった。
アンモラ王国最大の川、アンモラ川。川の流れが早く、その中に入ると死んでしまうと言う危険川だ。その川の岸はとても広く、子供たちが遊べるぐらいの広さである。普通の道路から、下へ行く階段があり、そこからおりて子供たちを遊べさせたいと言う。そのためには、草を抜かねばならない。ミートの背ぐらいまで生えきった草を抜き、遊べるたいせいを作らなければならない。
(危ないのだから、辞めといたほうがいいんじゃないのか)
ミートは思って居たけれども村の人たちに紛れ込んで草抜きをせっせとした。
ちょうど、半分くらい草がなくなって来たころ、雨が降ってきた。
「みんな、上へ上がれ。」
一人の男の声を聞いてみんなが上に上がりだす。雨がふるとますます危険になるらしい。今日はひとまず中止になった。
次の日、また作業を始めた。子供たちは、草がない川沿いのところで走り回っている。ミートや大人たちは子供の安全をよくみず、作業に集中していたところ、1人が川へ落ちてしまった。子供たちは大きな声で大人を求める。だが、大人たちは子供がさわぐのはいつもの事だ。と言い張り、様子を見に行きやしなかったのである。ミートは一旦仕事をやめ、子供たちのいる、川沿いの方に行った。そこには、子供1人が川の石に引っかかって気を失っていた。とても幅が広い、川で石に引っかかってくれたのはミートにとって安心したところもあっただろう。それでも、慎重に子供を引き上げようとした。昨日の雨で川の流れはますます速くなっている。
(どうか、そのままでいてくれ)
ミートの願ったこととは違い、川の方へ子供が流れて行ってしまった。ミートは、すごく流れの速い川に入って行った。それを見ていた大人が
「何してるんですか!?ミートさん。」
ミートはそんな事は気にせず、流れに沿って泳ぎだした。
(あの子の所までもう少しなんだ)
川の色は茶色く、子供が浮いている事が助かりだった。子供の姿が見えなければ助ける事も簡単ではない。
ミートの手が、子供の手に触れ、手をぎゅっと握り、ミートの方に引き寄せた。
(どうやって帰ろうか)
こんな、流れの速い川で冷静に人を助けられるのはミートぐらいだろう。
流れながら、岸の方へ寄っていった。これぐらいしか方法がないのだと言う。岸につくと、まず子供を岸に置き、そのあとミートが岸に上がった。
「ミートさん、怪我はありませんか?」
みんなは心配してくれたけど、ミートは気を失っている、子供の方が大丈夫なのかが気になっていた。
「私は大丈夫です。それより、この子を家につれて帰って下さい。」
ミートは、その子を抱え、親らしき人に子供を渡した。
子供を助けたこの日から、人を助けるなど、たくさん頼まれていた。
ミートはお金ももらわず、せっせと働く。勉強を教えるなど、単純な手伝いから人の命を救うまで人の助けをしている。ミートは難しい手伝いにも命をかけて手伝っていた。
ミートの家は、アンモラ王国とカメリオ皇国の境にある。そのため、ミートをどっちの国へ入れるか昔、争うがあった。実際にミートはカメリオ皇国に行きたかったが、争いでアンモラ王国が勝って、ミートはアンモラ王国の住民になったのである。この世界は、人口が多い国ほど強いと示されている。だから、ミートの取り合いになった。たとえ、横の国であろうが、敵なのは敵。ほかの住民と仲良くしてはならなかった。
親友の「アオイ」は、カメリオ皇国に住んでいる。ミートがアンモラ王国の住民になってから、今まで、アオイとは一言も喋っていない。そんなこの世界がミートは嫌だった。差別のない、どの国も仲がいい世界にしたいとミートは思ってるのである。けれども、その願いは叶わず、今もまだ国と国の、喧嘩ばかりしている。
(こんなの、私には止めれまい)
その争いの中でミートは人の手伝いをしているのだ。
ある日、ほかの国の人から、依頼が来た。
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ミート殿
私たちの国は、アンモラ王国との争いに負け、無残な姿になって
おります。どうか、ミート殿に手伝って欲しい。
嫌だったらよいのです。
ほかの国へ行くのは許されてはいないが、
あなたは、昔の争いで私たちの国が勝っていれば、私たちの国の
住民になれた者である。私たちの国は人口がえらく少なく、
私たちの力だけじゃ、この国は元に戻りません。
少しだけでいいのでお力になってもらえないでしょうか。
5月10日、朝9時から清掃がありますので
よろしくお願いします。
カメリオ皇国 アオイ女王
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先日行われた選挙でアオイが女王になった。この手紙を見て、ミートはすごくビックリしているだろう。親友が女王になってしまったのだから。この依頼、行かないわけにはいかぬ。
(せっかく、依頼してくれたから、アンモラ王国の住人には言わずに、行こうか)
清掃は明日である。アンモラ王国の人には何も依頼されてまい。ミートは明日、カメリオ皇国にいくことにした。
次の日、いつもよりミートは早起きをし、カメリオ皇国の中へ一歩ずつ足を踏み入れていく。今は朝の6時。まだ、みんな寝ている頃。きっとアオイも寝ている頃だろう。アンモラ王国の人に見つからないようにするにはこうするしかないのである。9時ぐらいには毎日のようにミートの家にき、依頼を申し込む。8時に家を出ては、早めにきたアンモラ住民に見られてしまうので、この時間に。6時ならば、心配などない。
カメリオ皇国には城がある。立派な城があるが、村は焼け野原。人びとは城で寝ているらしい。村には誰もおらぬ。
「ミートッ!」
霧の中から人の声がした。
(アオイかね)
ミートが思った通り、アオイだった。アオイはミートに抱きついてきた。
「来てくれてありがとう。ミートに会えて嬉しいわ。」
「そんなのことありません、女王陛下。」
ミートはアオイを離し、地面で土下座をした。たとえ、アオイが親友だったとしても女王なのは違いない。ミートだけが、特別ってことはあり得ないのだ。ミートだけ、女王に敬語を使わないなど、住民にとってはうらやましい話だ。
「ミート、まずは城の中に入って話をしましょ。」
アオイの後ろを、ミートはついて行った。
城の中の、アオイの部屋らしきところにミートは入って行った。
「さぁ、ここに座って。なんだか、昔を思い出すわ。」
「女王様、今日、私は何をすればよいのでしょうか。」
ミートは正座をして座布団のうえに座った。
「敬語は使わなくていいわ。私たちは親友でしょ?」
「女王様、私はほかの国の者です。女王様に敬語を使わぬ事は決してありません。ましても、親友とは昔の事です。今は普通の違う国の住民と女王様との関係なのです。」
アオイの目から涙が出ているのがミートは分かった。ミートは、アオイの涙を見ても、親友だとは認めない。
(女王様は親友でない)
自分に何回も言い聞かせていた。
「私が女王様になったのには理由かある。ミートが住んでいるアンモラ王国と仲良くするためなの。私たちは親友よ。ね、ミート。私たちの友情はいつまでも続くんだわ。」
「いえ、女王様になられたのだから、私みたいな微妙な住民としては、下の下です。女王様とこのような関係をもてている、私は光栄ですが、しょうがないのです。私だって女王様とは親友でいたいと思っていますが、このような関係になったので親友のままでいるのは難しい。」
アオイの目の色が変わった。
「ミートが言いたいのは、私が女王になったのが悪いと言う事?私はミートのために、女王になったのよ。そんなの、ミートが言える立場じゃないわ!」
アオイは大きな声で鋭い言葉をミートに突き刺した。
(昔のことを思い出す)
アオイは昔、ミートに対して怒鳴ってるばかりだった。それでも、楽しいときは一緒に楽しんで、悲しいときは一緒にないて…とても仲のよい、親友だった。
アオイの言った事は、反対にアオイを傷つける言葉に変え、ミートは言った。
「私は、女王様の言うとおり、そのような事を言える立場じゃございません。私のために女王様にならなくてもよかったのです。女王様が女王様になったところで、国と国との争いはとまっていません。だから、カメリオ皇国はこのような無残な姿になったしまったのでしょう。」
一度は止まったアオイの涙がまた溢れ出した。相当悔しいのか、寂しいのか、ミートに恨みを持ったのかは誰にも分からない。分かるのはただ一人、アオイだけだ。
「私がどれだけ、努力をしたか、ミートは知らないんだわ。いつかは、この争いをとめ、戦のない世界にしたいのっ。口出ししないで。この住民でもないのに!」
また、怒鳴って言った。ドアの外に立って待っていた、女王様の付き添いの人が中に入ってき、アオイを止めた。それでもアオイは興奮をしている。
「ええ。私はここの住民ではないのです。それでは、なぜ、女王様は私などを呼んだのです?親友だからですか?それは間違っているような気がしますけれど。違う国の者はこの国へ入っては行けないと言う、法則があるはずです。なぜ、自ら私をとんだんですか。」
「呼んだのは、この国を綺麗にしてくれると思ったから。別に親友だからとかじゃないわ。」
付き添いは、そっとアオイから離れ、部屋から出て行った。大丈夫だと思ったのだろう。
(うそだね。私と親友だから、呼んだのだろう)
アオイはくるくる髪をまわして言っていた。昔から、アオイがうそをつくときは、髪をくるくる回す。これを、ミートは覚えていたのである。
「私には、この国を綺麗にするような魔法のような事を、私は出来ません。親友ならば分かる事でしょう?」
「分かってるわ、そんな事。でも、アンモラ川で、子供を助けたんでしょ?それなら、出来るよね。」
ミートはアオイを睨みつけた。アオイはビクッと体が動き、少し引く。
「その事をなぜ、知っている。この、カメリオ皇国からは見えないところにある、川なのに、なぜ分かるのだ。」
ミートの言葉から敬語が消え、普通の人に対する説教みたいな言葉に変わっていた。
アンモラ川は家などで、カメリオ皇国から見えないのは確かである。
「え…。」
アオイは言葉を詰まらせた。
「アンモラ王国の情報を得ていたのか?それって、女王がやっていい事なのかっ!そんなの、女王失格だ。」
「ミート、私はミートの事が知りたかったの!全然会えなくって、寂しかったの。」
アオイはミートが見た事のない、大粒の涙をポツポツと流す。アオイのことを一番心配していたのは、ミートである。ミートは昔から人の前で何かをするなど、得意な人ではなかった。むしろ、みんなの前に出てしまったら上がってしまう。そんな、アオイが女王と、手紙で見たとき、大丈夫なんだろうかと思っていたのである。来て見たらこれだ。ミートのため、とか、親友だから頼んだとか。
(アオイは私を何と思ってるんだろうね)
ミートはアオイをほって、アンモラ王国に帰ろうと、立って、部屋から出て行こうとした。
「まってっ!ミート。私は、どうすれば、ミートとまた親友になれるの?」
「それは、分からないです、女王様。では、失礼します。」
ミートは丁寧に礼をしてから城を後にした。
(もう、二度とくるまい)
自分で誓った。また来てしまうと、アオイを傷つけてしまう、そう思ったのだろう。




