55 大迫力の試合が続き、そして
「ミモザちゃん、ちゃんとお茶を飲んでる? なんだかずっと試合を見ているみたいだけど」
「あ、はい……飲みます。倒れたくはないので。あの、なんだか……皆さんの戦い方が凄くて」
同じ近衛騎士のはずなのに、全員構えや戦い方が違う。パーシヴァル様は一瞬で試合を終わらせたが、実力が拮抗した人同士の試合はたっぷり5分の時間剣を斬り結んで、ハラハラして見守ってしまう。
刃は潰してあるとはいえ、自分の首元や眼前に拳や剣が来ると思うと背筋を寒気が這うのに、出場者はそんな恐怖などねじ伏せているかのように目の前の対戦相手しか見えていない。
大会で試合だからか、勝負がつけば互いに尊敬を持って接しているのも見えて、ずっと固唾を飲んで見守ってしまった。
お義母様に勧められて、すっかり氷の解けた冷たいアイスティーを飲み、ビスケットを齧る。
そうしている間に、次が一回戦最後の試合……フレイ殿下の番が回って来た。
「あ、……殿下」
「えぇ、今までの試合内容ならば、パーシーは二回戦免除でしょうね。勝負の決め方が一瞬だったことと、一切の攻撃を受けなかったから。ほら、一回戦が15試合でしょう? 二回戦免除の基準が、一回戦の試合内容なのだけれど……もちろん、免除された方が体力も気力も温存できるから有利だけれど。殿下はどう勝負を決めるでしょうね」
「……はい」
全力でパーシヴァル様に当たると言っていた。お義母様のお話を聞く限り、パーシヴァル様もそれを分かってて一気に勝負を決めにいったのだろう。
殿下もきっとそうする。少しでも有利に試合を進めたいはずだから。大会の最初から、最後の全力に響くのだと、今更知ることとなる。
「きっと殿下も素晴らしい試合をされると思うわ。でも、ミモザちゃんは」
「パーシヴァル様を、見ています」
「ふふ、そうよね。そう……、私たち、見ていることしかできないけれど、見ていることが、きっと大事なのよね」
「お義母様……?」
少し遠く見たお義母様が独り言のように呟く。今日のお義母様は少し様子がおかしい。
「さぁ、最後の一回戦よ。見守りましょうか」
「はい」
そうして、右手側からフレイ殿下が、左側から対戦相手の騎士が、お互いに同じ鎧を身に付け中央まで歩いてくる。
陽が中天に昇っている。午前中は一回戦で終わるようだ。
フレイ殿下は両手で剣を構えたが、刃を自分の前に斜めに構えている。
対する対戦相手は両手で剣を正面に構え、身体を開くように足を前後させて立っている。
審判の声と共に、一気に距離を詰めるかと思いきや、フレイ殿下は剣の角度を変えて中天に昇った陽の光を相手の目に向って反射させた。
不意打ちを喰らった相手の足が止まった隙に一気に距離を詰め、通り過ぎ際に何をしたのか、体勢を崩した相手の剣を弾き飛ばし胴を打って倒れ込ませ、そのまま相手の後ろへと通りすぎると剣を鞘に収めた。
パーシヴァル様よりも早い。あっという間の決着に、審判の声が遅れる。
「勝者! フレイ殿下!」
割れんばかりの歓声が沸き起こる。素人目にもわかる、これで二回戦を免れるのはフレイ殿下だ。
私は兜を取った燃えるような銀髪を、不安に駆られながら見ていることしかできないでいる。




