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36 花園への招待状

 ミモザ・シャルティになっても、籍を入れたからと言って国の……王宮の行事をずらす訳にもいかず、私とパーシヴァル様は日常生活にすぐに戻った。


 曰く、あとひと月ほどで近衛騎士団の模擬戦があるらしい。基本、騎士団は連携を重んじるが、それはそれとして、各個人の実力を年に2回決める、模擬戦というよりも武闘会のようなものがあるという。


 おかげでパーシヴァル様は休んでいた分を取り戻すとばかりに稽古に励み、帰りは遅く、晩餐を食べたらすぐに休む生活だ。


 あまり疲れているところをお邪魔するのも嫌なので、晩餐の時間を遅らせて、私も同じ時間に晩餐を摂り、あまり無理なさらないでください、というちょっとした会話だけで済ませている。


「やっぱり男性……というか、騎士様だからかしら。こんなに頑張らなくてもいいと思うのに……」


「あら……、ミモザ様はご存知なかったですか?」


 寝支度を手伝ってくれていた侍女のルーシアがきょとんとして尋ねてきた。


 一体何のことだろう? と、皆目見当もつかない私が、何? と尋ねると、教えてしまっていいものか、と少し悩んでいるようだった。


「そこまで言ったなら教えてちょうだい?」


「私が言ったのは内緒にしてくださいね。——近衛騎士団模擬戦大会の優勝者には、王族の所有する好きな別荘を1ヶ月借りる、という副賞があるんですよ」


「えっ……まさか、そんな事のために……?」


「そんな事って……、ミモザ様? パーシヴァル様の前でそれは禁句ですよ」


 それには頷いたが、私としてはそんな事、だ。引きこもりを舐めないでほしい。いや、今はあまり引きこもりでもないのだけれど。


 王妃様からお義母様と私を揃ってお茶会に招待したいという手紙が届いたのだ。今は、王妃様への手土産に、お義母様の……アレックス・シェリルの著書『水晶靴の王妃』をモチーフにしたハンカチを刺繍している。


 はじめてのご招待だし、お義母様に相談したら快諾してくださったし、王妃様もアレックス・シェリルを愛読書になさっている方だ。


 高い物、質の良いものには慣れていらっしゃるだろう。だから、一点ものを手土産にしようと思っている。


 お茶会までは日がないし、パーシヴァル様の応援はまた別の日だ。絶対に応援に行くし、お守りも縫っている。


 しかし、副賞がそんな豪華なもので……たぶん、豪華なのよね? 旅行に行った事が無いからわからないけれど……、本当に与えられるものは何なのだろう。


 それは、また当日、パーシヴァル様が優勝なさった時に聞いてみよう。私はただ、応援していよう。


 勝っても負けてもいいなんて思っていない。こんなに一生懸命なパーシヴァル様に、負けてほしくなんてない。


 それはそれ、これはこれで、社交界にもちゃんと出た事だし、王妃様のお茶会で下手な失敗をしないように頑張らないと。


 結婚前に、パーシヴァル様は剣で、私は針で、と言ったからには、私の刺繍を受け取ってもらえるように頑張りたい。完成はもうすぐだし。


 でも、王妃様ってどんな方なのかな? よく知らないから……、やっぱり、お義母様がアレックス・シェリルで良かった。


 贈り物くらいは、気に入ってもらえるものを贈りたい。

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