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23 手紙の束と、夜会の作戦

今日から1話更新です。

 パーシヴァル様との初デートを終え、いよいよ夜会が近いということで、苦手だとも言っていられずダンスの練習に励む日々。


 ある日の晩餐の後、伯爵に誘われて4人でサロンでお茶にする事になった。特段不思議なことではないが、最近は結婚式の準備もあって伯爵や夫人は忙しくされていたし、その分の執務はパーシヴァル様が行っていて、私といえば、私をしっかり次期伯爵夫人に相応しく仕上げるのに忙しくしていたので、なんだか久しぶりな気もする。


 お茶の準備が出来たサロンは人払いがされ、唯一残された執事長が麻紐で括った手紙の束を伯爵に差し出した。


「ふぅ……、本来、ミモザには見せるべきではないと、私たちは話し合っていたのだが……式より先に、カサブランカをどうにかしなければいけなくなったようだ」


「…………もしかして、これ、全部……、姉、いえ、カサブランカからの……?」


「そう。君への罵詈雑言、八つ当たり、嫌味にもなっていない嫌味を汚い字で綴った手紙だよ。読まなくてもいい、内容は残念ながら、君の好きな書物を1ページ読むよりくだらないことばかりだからね」


「ミモザちゃん、ごめんね。貴女宛の手紙を隠すような真似をして。でも、読んだら……落ち込むんじゃないかと思って黙っている事にしていたの」


 伯爵家の方々の気遣いに感謝することはあれど、私は謝ってもらう必要を感じていない。


 真実を知った今となっては、そして、この環境でこれだけ大事にしてもらっていれば、私は卑屈になって引きこもっていただけだと良く分かる。


 姿勢もよくなったからだろうか、前よりどもらなくなったし、緊張もそこまではしなくなった……と、思う。


「いえ、あの、お気遣いありがとうございます。カサブランカからの手紙の内容は……まぁ、大体、想像がつくので……。でも、どうして先に……?」


 私の質問に、伯爵家のお三方はそろって深いため息を吐いた。


 あ、ものすごーく面倒臭い事になっているんですね。社交性ほぼ皆無の私でもその位は分かるくらいには深いため息です。


「……先日、パーシヴァルと出掛けたろう? どうも、釣書のパーシヴァルと結びつかなかったらしくてな……」


「私のお友達にも呆れ半分で聞かれたんだけれどね……ということは、カサブランカちゃん、いえ、あの子はどうも、……そのね、パーシーではなく美形の使用人とミモザちゃんが浮気しているんじゃないか、って方々に手紙を出しているみたいなの。そんな妹で恥ずかしい、って……」


「私がもう少し貴族らしい格好をしていれば……いや、だがあの日のミモザはとても可愛かったし、私は引き立て役にちょうどよかったと……いや、そうじゃなく。ということで、彼女はどうも、自分の恥の上塗りをしているようで」


 呆れて物も言えないとはこのことだ。


 パーシヴァル様の事は何も『秘密にされている』わけでは無い。お茶会でパーシヴァル様に本気で恋をしていたロートン伯爵令嬢がいたくらいだ。誰もが『今の』パーシヴァル様を知っている。そう、身分が高い方程。


 これでは、カサブランカではなく、ノートン子爵である父の恥になってしまう。お父様は優しい人だ……、今だって、きっとヒステリックな姉と母に耐えて仕事をしているはずである。


「夜会に……姉に返事を書きます。調子がいいようでしたら、夜会にいらして、と」


 私は決意を籠めた目で伯爵家の方々を見詰めた。

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