19 ソワソワデート
街中に出掛けるし、歩く事も多いので、今日はドレスではなくワンピースにジャケット、斜めがけのポーチとTストラップの靴という出立ちだ。
ワンピースは今は胸元と裾のフリルが流行りらしく、私はとても淡いピンクの膝丈のフリルワンピースに、ココアピンクのジャケット、白いレースの靴下に、靴とポーチは締め色? の濃い茶色? と言われたが、締め色とはなんだろう、と思いつつ身支度され、街中に相応しいお化粧を施された。
パーシヴァル様はどうやっても目立つらしく、今日は本当にラフに濃いグレーのシャツに白いパンツ、白と黒の革靴(サドルシューズというらしい)という姿で、ポーチの前で待ち合わせた。
「ミモザ! ……、…………、………………」
「いきなり脳停止しないでください、パーシヴァル様」
先に待っていたパーシヴァル様が私が階段を降りてくる音に振り向いて、そのまま目元を覆って天を仰いでしまった。
脳停止にも慣れたと思っていたけれど、出掛ける前からコレでは困ってしまう。同時に、少し可愛いと思ってしまう私がいた。
私はやっぱり、凡庸な顔をしていると思うし、スタイルも特別いいという訳ではない。ただ、服装やお化粧、髪型、それに今はスキンケアにも気をつけているし、侍女たちも気を遣ってくれている。
おかげで、パーシヴァル様が可愛いと思ってくれている、のを素直に受け止められる。演技で脳停止されていたらそれはそれで困るけれど……、そうでは無いと、信じている。
近づいて顔を覆っているのと逆の手を両手で握ってこちらを向くよう軽くひっぱると、困ったような目が手の下から私を見たので、思い切って笑いかけた。
「さぁ、行きましょう。楽しみましょうね」
「……うん、楽しもう。すまない、街中では気をつける」
「……可愛いから、時々ならいいですよ」
小さな声で告げると、私が手を取ってまた脳停止しそうなパーシヴァル様を馬車に乗せた。御者は絶対気まずかったことだろう。
王都の中心街は4つの大きな区画に分かれていて、北は城と辺境伯家や公爵家などの高位貴族の屋敷と高級店、西は伯爵家や高位の官僚の屋敷とそこそこの高級店で、東は城では余り高位ではない子爵男爵の屋敷ともう少しランクが下がるお店、南は市民がちょっと頑張ったら入れるようなホテルやレストラン、お店が並んでいる。大きな商家などもそこに屋敷を構えている事が多い。
さらに南から中心街を囲むように町が広がっていて、そこは市民の生活の場だ。
基本的に、平民も貴族も生まれた区画から大きく外に出る事はない。私も結婚が無ければ反対側の西区に住む事にはならなかっただろうし、例外といえば仕事か、夜会やお茶会といった社交の場だろう。
近衛騎士団は基本は王家の守りだが、訓練として貴族街の哨戒警備をするそうだ。
と、話している間に東区に着いた。ここは私の庭(本関連限定)なので、パーシヴァル様の手を取った。
「いきましょう、パーシヴァル様」