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18 パーシヴァル様とデート?

「出かけないか、ミモザ」


「はい?」


 お茶会の後、なんとか染み抜きに成功したテーブルクロスを満足して畳んでいる所に、急にパーシヴァル様に外に行こうと誘われた。


「えぇと……構いませんが、どこへ?」


「どこでも。君の好きな場所を案内して欲しい。私は街を見回る事はあっても出掛けることはなかったから、君の好きな場所を教えて欲しいんだ」


「では……明日、行きましょうか?」


 お茶会の後は夜会よ~、と言っていた夫人だが、下手な夜会で私をデビューさせる気はないようだった。大きな夜会、なるべく人が多い場所に、パーシヴァル様と向かわせるつもりで、今はドレスを作っているらしい。


 しかし、私の街の好きな所といえば……クロッツェン通りの古書店に、セルクセス書店、ヒューズ通りのブックカフェ、ヘリトン通りのネイシート図書館……どれもお一人様御用達なお店ばかりだ。ブックカフェや図書館なんておしゃべりする所じゃ無いし……。


 これは困ったぞ。デート……だよね? そうなると、二人揃って沈黙するデートに……歩いている間喋ればいい、のかな?


 そもそもこんな素敵な方と二人で出掛ける……?! いやまぁ嫁に来たのだから今更と言えば今更だけど、あぁ、恥ずかしい思いをさせないようにお洒落しなきゃ……!!


「あ、あの」


「うん」


「……私の好きなところは、全部おしゃべりに不向きなところばかりでして」


「うん」


「…………できれば、ランチくらいはお喋りができるお店がいいなと……」


 私がそう告げると、パーシヴァル様はパッと表情を明るくした。


「そういう事なら、どこかいい店がないか聞いておくよ。大体どのあたりに行く予定かな?」


「王都の東側に……好きなお店は大体その辺りにありますので」


 因みに実家も近い。本屋はどこにでもあるが、私は本屋までの道を歩くのも好きなので、結果その辺りになってしまう。


「わかったよ。じゃあ東側までは馬車で行って、それから歩いて見てまわろう」


「は、はいっ!」


 人生初のデートの予定ができてしまった。


 しかも私の好きなところに行っていいという。久しぶりに紙とインクの匂いに圧倒されるのを思うと楽しみになってきた。


 パーシヴァル様は読書はされるのかな? ミステリ……探偵ものや、騎士団をテーマにした本なんかはお好きかな。


 とにかく色々読んできた私だから、何かおススメできるものはあるかもしれない。でも、うーん……?


 本当にこれでいいのかな……? 私の好きなところに行って、読書はあんまり好きじゃなかったらつまらないよね。


 難しい顔で考え込んだ私に「ミモザ」とパーシヴァル様が声をかけてきた。


「一つ約束して欲しい事があるんだけど……」


「なんでしょう?」


 美しい顔でにっこりと笑った彼はハッキリとこう告げた。


「明日だけ、絶対にアレックス・シェリルの本はおススメしないで」


「わ、わかりました」


 頭にハテナがたくさん浮かんだが、母親の本を勧められるのは確かに嫌かもしれない、と思って、私はこくこくと頷いた。

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