訓練開始
「凄い・・・地下にこんな広い運動場があるなんて。」
「だろう?ここは土魔法の達人に特別に作ってもらった訓練場だよ。あんたみたいな新人を鍛えたり、冒険者以外でも戦闘訓練をしたい人には開放しているんだ。」
「でも、誰もいないですね。」
「ああ、残念ながらギルドの思惑をよそに冒険者になろうって奴はとにかく鉄砲玉みたいに魔獣を狩りに行っちまう。あんたみたいに長い目で考えて初期投資を出来る奴は本当に最近いないんだよ。」
「だから説明もしなかったと?」
「そうだな。でも、あたいも反省したよ。あんたみたいのが来るかも知れないから今度からはちゃんと全員に説明するさ。さて、おしゃべりはここまで。早速始めようか。」
「はい。えっと貴女が先生ってことになるんですか?」
「不服か?」
「いえ、とんでもありません。まさか貴方みたいな美人に教えてもらえるとは思わなかっただけですよ。」
「はっ!こんなアバズレ持ち上げたって何にも出ねえよ。さて、訓練は大きく分けて3つ。スキルの訓練と魔法の訓練・実戦訓練だ。もっとも、実際にやるのは2つだがな。」
「ああ、それだったら俺はスキルと魔法の両方の適性があるはずなので3つともお願いしたいです。」
「ん?おいおい、そんなことあるわきゃねえだろ。普通はスキルか魔法かどっちかって相場が決まってるんだ。」
「そんなこと言われても、適性があるって言われたんですけど・・・・調べてもらえません?」
「ふん、まあいいだろう。どっちみち訓練前に適性検査はする予定だったからな。どれ、じゃあまずはスキルから見るか。」
「はい、お願いします。それで、そろそろお名前を教えて頂いても宜しいでしょうか?先生とお呼びしても良いのでしょうが、それでは少し寂しい気が・・・」
「ああ、まだ名乗ってなかったか。そりゃ悪かったな。あたいの名はリズ。これでも元は冒険者だ。結婚して子供ができて引退したんだけどな。」
「リズ先生ですね。俺はヤスです。改めてよろしくお願いします。」
「よし、それじゃあ改めて適性を見るぞ。」
リズ先生が取り出した手の平サイズの水晶玉のようなものを手に取ると緑色の光一色に染まった。
「ふむ、速度か。悪くないな、じゃあ次だ。本当に両方の適性があるか見せてもらおう。」
そう言って訝しそうな顔をしながらリズ先生は俺に別の玉を渡して来た。
スキルに関しては女神にお願いした通り速度のスキル適正は確認できたんだ、きっと魔法の方も大丈夫なはずだ。
恐る恐る玉を手に取ると、淡い水色に色が変わった。
「ほう・・・嘘ではなかったのか。水魔法の適性があるか・・・分かった。」
「信じてもらえたようで何よりです。」
「ああ、確かにな。だが、何故世間知らずのあんたがそれを知っていた?」
気が付くとリズ先生の手には剣が握られ、その切っ先は喉元に当てられていた。
(いつの間に?しまったな、話が不自然だったか?)
「答えろ。」
さっきまでの明るい女番長のような雰囲気から打って変わって人殺しのような目で俺を睨んだまま静かに問い詰める。
「う・・・・占いです。ここへ来る途中の村であった占いのお婆さんに適性が2つあるって教えてもらいました。」
「ふむ、占いか・・・・まあいいだろう。」
剣が引かれ、鞘に納められた後でポシェットのようなものに吸い込まれて消えた。
「次元鞄?」
「ほう?冒険者の仕事も知らぬのに次元鞄を知っているとは益々怪しいな。」
「え?だって俺も持ってますし。」
「本当に怪しいところだらけだな。だがまあいいだろう。冒険者の過去は詮索しないのがルールだ。先ほどは悪かったな。」
「いえ、謝罪して頂いたなら受け入れます。」
「感謝する。さて、本日の稽古だが運が良いことに私も速度に適性を持つスキルホルダーだ。そちらから教えていくとしよう。」
「はい!お願いします。」
「うむ。では、今からあたいがこの訓練場を何周か回ってみる。あたいが止まったら何周したか言い当ててみな。」
そう言うが速いか目の前から突如としてリズ先生が消えた。
そして次の瞬間には再びリズ先生が目の前に現れた。
「さあ、何周した?」
「えっと・・・済みません。分かりませんでした。消えたと思ったらまた現れてって感じで・・・」
「ふっまあそうだろう。今あたいは訓練場を10周回って来た。このように速度への適性を鍛え抜くと目に見えない速度で動くことができるようになる。あたいが女だてらに冒険者をやってここまで生き延びられてきたのもこのスキルのお陰さ。」
凄い、鳥肌が立った。
やっぱり妄想していた通り実戦でスピードで勝ることはかなり有利だ。
攻めるにしても守るにしても逃げるにしても全てに活用できる。
「凄い・・・・リズ先生!教えて下さい。どうしたら良いですか?」
「簡単なことだ。走れ。」
「え?」
「これからあたいがお前を追いかける。限界まで速く走り続けろ!行くぞ!」
いつの間にかリズ先生は竹槍を手に襲い掛かってきた。