バブルブ博士の秘密
なんの説明もなく始めます。
「いつもチコクしてると、留年するかもねえ。」
「リュウネン?」
ここは、エビちゃんが通っている小学校。
エビちゃんは友達とおしゃべりしている。
「そ。もういっかい4年生をやり直すの。来年はひとりだけ5年生になれないの。」
エビちゃんはタコル星人退治のため、遅刻をしたり、途中で退室したりすることが多いのだ。
街の平和のためなので、仕方ないのである。
エビちゃんは、ひとりだけ来年も4年生のままの自分を想像した。
まわりの子はみんな1才年下で、担任は今のままである。
ぞぞぞ。
いやだ。いやすぎる。
「ねえ、ほんとに。ほんとにそんなことあるの。」
「あるかもねえ。あるんじゃないかなあ。」
担任の先生に聞いてみる。
「はっはっは。留年か。クニサキならあるかもしれんな。はっはっは。」
「なにがおかしいんですか。」
「いや、すまんすまん。小学生が留年なんて、聞いたこともなかったからな。だが、お前なら
あるかも知れんぞ。はっはっは。」
なんだこいつ。
エビちゃんは腹が立った。
もう相談するもんか。
「ほっほっほ。安心しなさい。博士も中学校には通っておらん。小学校の時に追い出されてそれっきりじゃ。」
放課後。
学校での話を、博士にも聞いてみた。
ダメだこりゃ。
博士と同じ道をたどるなんてまっぴらごめんだ。
「そんな顔するでない。わかった。博士が学校の人に話をつけといてやろう。こう見えて、顔が利くので大丈夫じゃ。」
ほんとかなあ。
エビちゃんは、博士の発明品以外のところは全然信用していない。
「よし、できたぞ。」
エビちゃんの不安をよそに、博士は嬉しそうな声を上げる。
「お手伝いロボット、ミチコさんVer.12の完成じゃ。」
博士は、理想のメイドロボを完成させることが夢である。
しかしこれまで何度も失敗している。
「今度は成功したぞい。心臓部のDHバッテリーのデキも最高じゃ。」
DHバッテリー。
カクユウゴウギジュツ(核融合技術)を軸にしたニジュウラセンガタジュンカンキカン(二重螺旋形循環機関)。
この部品の発明も、メイドロボットの研究も、博士は他人には秘密にしている。
「よっし、いくぞおおお。ポチっとな。」
ポチ。
ロボットの腹部にある起動スイッチを押す。
見た目は10代の女の子だ。
すでにメイド服姿のそのロボットに、命を吹き込む。
顔だけ見るとほとんど人間と変わらない。
耳にだけ、機械的な部品が装着されている。
スイッチを押して数十秒、ロボットの顔に赤みが差してきた。
「きたきたきたきた。こい、ミチコ!立て!立つんだ!!」
博士の興奮をよそに、エビちゃんは冷静に状況を見つめる。
ビー!ビー!ビー!ビー!
やはり。
鳴り響く警告音。
「どうした、頑張れミチコ。ミチコ頑張れ。」
エビちゃんは、そっと博士の研究室を後にした。
いつものことである。
ドカーーーーーーーン!!!!!!
「ミチコぉぉぉぉぉおお!!!」
研究室は頑丈だ。
大丈夫。
今日も一日、平和な街を守ったエビちゃんであった。
次回「エビちゃん、おつかいに行く」
DHバッテリーをちょっと解説。
空想の近未来エネルギー源、みたいなところ。
実用化されていない核融合炉、そのD-3He反応(重水素とヘリウムの反応)から連想して
大渦ディーネー(Dine)と太陽ヘリオス(Helios)が
二重螺旋(Doublie Helix)となり、小さな杖(Bacterion、Batteryに似てる)の形をしているイメージ。
うーん。
現状、ギリシャ語や核融合の知識が足りないので、参考程度に。