花の魔術師とオークの花嫁
お久しぶりです。
先の展開が思いつかず更新できてませんでしたが、なんとか更新することができました。
完結まで書き続けるつもりなので生温かく見守ってください。
一時は助かった俺だが、悪夢は終わらなかった。
「グオォオォォオォ!!」
後ろから聞こえてきた山をも震わすような声の主は、後ろに見える俺を追いかけてくる大量のオークよりも一際大きく、頭に花飾りをつけ、薄汚れたドレスを着た怪物、
『ブライドオーク』
そのものであった。ブライドオークは、現在確認されているエリアボス10体のうちの一体であり、異常な執着心を持ちプレイヤーを倒すまで追いかけてくると言う災厄そのものである。
「ローズ。あれは流石に私でも無理だと思うんだけど。」
「あぁぁぁああ。」
悪夢が始まる。始まってしまう。
「門を閉めろーーー!!襲撃に備えるのだー!」
NPCの門番がいち早く状況を理解して街の防衛に入る。街からは鐘の音がなり門の外からでも聞こえるような大きな音も聞こえてくる。
《緊急クエスト——ブライドオークを討伐又は撃退せよ。》
「ローズあんたのせいでクエストまで出てんだけど、」
「俺のせいってことは、やっぱり俺が狙われてるんだよな?」
「100%ローズのせいでしょ。取り敢えずこれ持って」
「は?この状況でか?」
そう言って手渡されたのはただの石。
形は薄くて丸い。水切りに特化した石のようで重さも軽い。
「持った?」
「持ったけどこれなんなんだよ。」
しのびんは俺の質問に答えることなく無言でこちらに近寄ってきた。
無言で近づくその風貌は昔よく夢で見た背後から迫ってくるスーツ姿のお化けのようで俺は背筋を凍らせただ固まっていることしかできなかった。
そんな俺だったがしのびんは一旦しゃがみ倒れ込んでる俺と目線を合わしたかと思うと一気に俺を持ち上げ肩に担いだ。
「…………」
(何かの気持ち。なんで俺担がれてんの?
俺一応男だよね?なんで女の子みたいに担がれてんの?こういうのって普通少女漫画でヒロインを助けにきた主人公とかがすることじゃなかったっけ?)
そんな俺の疑問は宙の彼方へ放り出され俺自身も気づけばいつの間にか、宙を待っていた。
空を飛ぶスキルが見つかってない今、俺はこの《Gift seed》で初めて空を飛んだプレイヤーになるとともに、目の前に近づくのは両手を広げハグを待つような仕草のブライドオーク。
「ねへ?やべて。やばよ?おへやばよ?ぼんぼはんねんひへ。」
風のせいでうまく喋ることはできないが、だんだんと近づいてくるブライドオークに俺はただ固まってその時を待つことしかできない。
目を閉じて思い出すのは、オークの性に酔った顔のみ。
この《Gift seed》の世界で俺以上に不運なプレイヤーはいないだろう。
さらば。しのびん。
さらば。俺を見捨てた門番。
よろしく。オーク。
末長くよろしく。ブライドオーク。
そうして俺は、ブライドオークに迎えられて見事街の危機を救ったのであった。
《緊急クエスト———ブライドオークの撃退に成功プレイヤーローズに貢献度70 プレイヤーしのびんに貢献度30を付与。》
◆
「おぇぇぇぇええ。」
アナウンスを横目に俺は今ブライドオークの住処でゲロを吐いている。
静かに揺れる木々、小鳥のさえずりそんなものはなく、この住処にあるのはオーク達の異臭と、そこらへんに放置されたままの野糞。
野糞にはエフェクトだろうがハエがたかっており、不衛生であることをここぞとばかりに示している。
それに加えて俺の現在。
俺はどうなっているのかというと、薄汚れたドレスの胸元部分に入れられ、ブライドオークの鼻息と口臭を浴びながら生きているのだ。
まさに生き地獄。
俺はこの地獄から逃げ出すことはできるのかが本当に不安になってきた。
ログアウトしようにも次回開始するときは前回ログアウト地点である。
誰かがこのブライドオークを倒さない限り俺は再び、《Gift seed》を平穏に遊べる日は来ない。
「マジで誰か助けてくれよ。うぇ。」




