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エンジェルリングストーリーズ(2)

「あなたの騎士に・・・?って俺のこと?」

「はい、紛れもなく!」

「いやいやそんな、ちょっと冷静に考えてください。」

「やはり、わたしのような未熟者では不足でしょうか?」

ブリュンヒルデは、泣き出しそうな本当に悲しそうな表情を見せた。その表情は、先ほどの真剣な顔立ちから打って可愛い美少女で、ハウトは思わず照れてしまい、顔を背けた。顔を背けらたブリュンヒルデは、ハウトに慌ててさらに詰め寄った。

「わたしに足りないところがあればおっしゃってください。今は無理でも、あなたと並び立つだけの、いいえ、あなたに少しでも近づくことのできる騎士になって見せます!どうか、どうかお側に仕えることを御許しください!」

ブリュンヒルデは、完全にハウトの両手を握っていた。先ほどの力を出した手とも思えないほど、華奢で柔らかく、温かい手だった。ハウトは顔を背けたまま、ブリュンヒルデに頷いてみせた。

「えっ?では・・・良いのですね!?本当に良いのですね?」

ハウトは照れながらも

「よく分からないのですが、あなたがそう望むなら。あなたにはそういう悲しそうな顔は似合わないと思って。」と言って再び頷いて見せた。

「ありがとうごさいます、わたしはブリュンヒルデ。いいえ、今日からわたしのことは、どうかヒルダとお呼びくださいませ。」


その時だった。

ハウト達のもとに、大きな翼を広げた白馬が舞い降りてきた。全部で5頭。その白馬には白銀の甲冑に身を包んだ騎士たちが騎乗している。そして、明らかに敵意を露わにしているようで、物々しさを感じさせていた。


ヒルダは驚きながらも平静に戻り、天馬が地に足を着けると、すぐに下馬してハウトたちに歩み寄ってくる騎士に敬礼した。

「これはアポロニアン様!何故このような場に。それにその方々はもしや?」

アポロニアンとヒルダに呼ばれた精悍な顔立ちの騎士の後方で、他の騎士たちは下馬はせず、何か周囲四方にに警戒するように鋭く注意を払っていた。大きな影が行き交い、ハウトとヒルダが上空を見ると、およそ100騎はいようかという天馬が無数に旋回をしていた。その動きは、一糸も乱れず完全に統率をされている軍団だった。


「ヒルダ久しいな!」

「はっ!」

「下界に降り立ち、我が太陽宮のエリアに跋扈しておった魔物どもを、我が精鋭の親衛隊ペガサスライダーを率い、ともに征討して参ったところだ。」

「それは御大義のこと。このブリュンヒルデ、ラグナを代表し、謹んで閣下の戦勝のお慶びを申し上げます。」

「いや挨拶などよい。それより、ヒルダよ!何故、ラグナの門を開けたのか?我らは上空から、開門の異変に気づき、よもや何かあったのではと降り立ったのだ。これは月の宮の許可を得てのことか?」

ヒルダは少し考えてから、丁寧に首を横に振った。

「いえ、違います。わたしの独断でのこと。」

それには躊躇なく、ハウトから見れば一切の迷いの表情は見えなかった。


「何!貴様、血迷うたか?ヒルダ・・・いや、ラグナを守る空中騎士団ヴァルキリーの長ブリュンヒルデよ!門を開けるという、この事の重大さ、よもや貴様がわからぬでもあるまい!」

ヒルダは、うつむき、そして申し訳無さの眼差しでハウトの方を見た。


「この男は何だ?」

アポロニアンが、ヒルダの傍らのハウトの存在に気づいた。

「なっ!?この男、翼なき者ではないか!地上人か?それとも魔物の類か!?」

アポロニアンの声に合わせて、ペガサスライダー達が一斉に剣を抜かれ、切っ先はすべてハウトに向けられた。ハウトは一瞬のことで逃げ出すこともできず、その場に身動きできなくなった。


「アポロニアン様、お待ちを!お待ちくださいませ!そのお方は違うのです。」

「何が違うというのだ!ブリュンヒルデよ、まさかこの者をラグナに引き入れるため、この数十年一度たりとも開門したことのない天空の門を開けた、とでもいうのか?」

「そうです!このお方を一刻の猶予もなく、我が主月の殿下に謁見していただくため、禁を破り、開門いたしました。」

「馬鹿な!この者ただ1人を入場させるためだと?貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?堕天の烙印を押され、かの者の後を追うつもりか!?」

一瞬でヒルダの顔から血の気が引き、蒼白となった。


「滅相もありません。わたしの命は月の殿下のもの。そして、ラグナはわたしの故郷。そのような大逆を犯すことは、我が槍に誓ってありません。」

「ならば、ラグナの民を、我が妹を危険にさらしめ、何と申しひらきをするつもりなのだ!神に与えられし、この門の開閉の力を有するのは、このエデン広しといえどもお前1人しかおらぬ。そのお前が常軌を逸して何とする!ラグナの風の匂いに気づき、直にかの魔物どもの軍勢が大挙してやってこよう!だが魔物どもなら良いが、もしその中に将軍クラスの魔物が一頭でも混じっていたら、もしもの事態もあるのだぞ!」

「そのときはわたしの命にかけて刺し違えても、お城は守り参らせる所存です。」

「愚かにも程がある。度し難い!何の意味が?この男のせいだとも?」

「それは・・・それは、この御方が、預言にある啓示の君やもしれぬからです。」

「何と!」

「それは誠か?」

「そうであれば・・・」

ペガサスライダー達がにわかにざわついた。彼らの切っ先がわずかに下を向く。ハウトは少し胸をなでおろした。


「この者が預言に出てくる救世主だと?この者が?」

「はい、間違いありません。このお方こそ、我ら天空の天使たちとエデンを救う英雄、啓示の君なのです!」




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