表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

エンジェル リング ストーリーズ

初めて投稿します。楽しみながら、ゆっくり書いていこうと思います。

気づけば巨大な扉の前に立っていた。

「なんだここは?」

首が痛いほど見上げても、扉の上部は霞んで見えない。周囲はガスで包まれていて視界がはっきりしないが

まるで雲の中にいるようだ。振り返ると、暗い世界が広がり景色は見えない。どうも前にしか進まざるを得ない。

「誰かいますかー!」

ちなみにこれは2回目だ。

最初は、誰にも自分の声が聞こえなかったかもしれないと思ったからだ。誰も見てはいないとは思うが、声を出して、「大きい声をださなくても聞こえてるよ!」と、中から誰かが出てくるかもと先に想像したから、ちょっと声のトーンを下げていたのだ。

しかし誰も出てはこなかった。気配もない。ちょっと待ってみて、何の回答もないので、逆に慌てて大声で叫んだのだ。

「返事はなし...か」

今度は重々しい目の前の扉を、思い切り叩いてみた。ノックではない。こんなバカでかい扉なのだ。一思いにに叩くのが礼儀だろう、と誰に言うわけでもない言い訳を考えつつ、内心このまま誰にも見つからず、ここで一生を終えるのか?ぐらいに心配になったからだ。ハウトは渾身の力で扉を叩くが、扉ではなく何か見えない障壁があるように、空中に波紋が広がった。そして、次の瞬間、一瞬扉の奥が赤く光ったように見えた。


「何者か?」

ハウトは、後背から急に声をかけられた。振り返ると全身甲冑を纏った人が立っていた。うっすらと青く光る甲冑で、よく見れば女性である。そして、彼女の背中には白い大きな羽が見て取れた。

「えっと、何というか立ち往生してしまって...」

「立ち往生?どこか調子が悪いのか?」

「い、いえ。そういうわけじゃないんですが、ここがどこかわからないですし。この門から中への入り方もわからなくて。」

「何だルーキーか?それを早く言え。外敵と間違えてしまうだろ。思わず...」

安堵した表情は、先ほどの固い表情から打って変わって、透明感のあるかわいい表情になった。よく見れば、ハウトが出会った中では一番とも言える美しい女性であった。急に女性と意識してどぎまぎしていると、彼女はすでに5メートルほど先に歩き出しており、振り返って「何をしてるんだルーキー!置いていくぞ!」と叱られた。

ハウトは慌ててついていく。


羽のある女騎士は、天にも届く門の前で立ち止まった。ハウトも、そのすぐ後ろで立ち止まった。

「どうやって入るのでしょう?」

「何を言っている?門を開けるはずないだろう?ここから飛び越えるのだ」

「えっ?」

彼女はさらりと言って、美しい真っ白い両の羽をハウトに広げて見せた。

「自分には翼がありません」ハウトは実際、もしかしたら急に翼が生えてくるのかもと何度も背中を見返したが、もともと翼などない。正直に申告した。


そんな独り言を漏らしたハウトの下に、白い鳥がゆっくりと空から舞い降りてきた。心なしか、女騎士と同様に全体がキラキラしている小鳩である。すると1羽が肩に止まり、次から次へとさらに飛来してきた。そして、無数の小鳩たちが、彼の右側にのみ舞い続けている。片翼の、さながら大きな光の翼をはためかせているように見えた。


「えっ!?」

女騎士が驚いた表情に見て取れた。

「こんなことって...まさか!?」

「何か急に集まってきて。でも、きれいな小鳩たちですよね。何か歓迎されているみたいで、嬉しいな。それに全然人を怖がらないし、よくなついて触っても逃げないし。ほら。」

ハウトが照れ笑いしながら、肩に止まった小鳩を撫でて見せた。小鳩のほうも、ハウトの指に頬ずりして、完全に懐いている様子だ。

すると女騎士が、急に片膝をついてハウトに向って頭を下げた。そして彼女がハウトの方をおずおずと見上げると、無数の小鳩たちは光の泡となって、ゆっくりと消えていった。まるでハウトに吸い込まれていったように彼女には見えた。


「まさか、あなたが・・・いいえ、間違いない。」

彼女は涙ぐみ、声を詰まらせた。

「申し遅れた非礼をお詫びします。わたしの名はブリュンヒルデ。この天空城ラグナの門を預かる者です。わたしは・・・いえ、我らラグナの民はあなたがここに来てくださることを、長く永遠とも感じられる時を経て、待ち望んでいました。」

「えっ?俺のこと・・・そんな誰かと人違いをされているのでは?」

ハウトがすぐさま否定すると、ブリュンヒルデは静かに微笑みを見せ、首を大きく横に振った。

「いいえ、貴方こそが我らの待ち望んだ御方。わたしは貴方がここにやってこられることを夢に見て、ずっとそのお姿を想像していました。わたしにはわかります。わかるのです。貴方以外には考えられません!」


そういうと、ブリュンヒルデは立ち上がり、巨大な門の前に対峙した。

「さあ、この門より御入りください。」

彼女はそういうと、渾身の力を巨大な門の扉に込めた。

「はあーーーーーーーーー!!!!!」

ブリュンヒルデの足が地面へとめり込み、しばらくの後に、その巨大な門は、大きな地ひびきを立てて少しづつ動き出した。はるか100km四方の雲海すべてに轟かせるように、ゆっくりと、だが確実に開いていった。


ガゴーン!!!

最後に大きな轟音とともに、城門は完全に開かれた。

ハウトに開かれた門の先には、深緑に囲まれた美しい街並みと、その中央には、一際輝く城がそこにはあった。

全精力を傾け、そして開門したばかりのブリュンヒルデは立っているのがやっとで、肩がけにしていた大きな槍を杖代わりにしていた。憔悴しながらも、再度、彼女はハウトの前で膝まづいた。

「私をあなたの剣、あなたの騎士にしてください!」









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ